プロローグ
目の前の〝災厄を招く者〟
〝荒神〟ルーノ=グラムナハトが叫ぶ。
「貴様が誰の差し金かは知らぬが、神としてこの勝負を投げる訳にはいかぬ。例え負けて、消滅するとしても、土地神として民を見放すわけにはいかんのでな」
「貴様も覚悟をするのじゃ! 殺すのか殺されるのか。神に勝負を仕掛けて来た以上もうお互いに後には引けんぞ!!」
会話がうまい具合に咬み合わなくて
よくわからないまま、戦う事になってしまった。
安直だったね。
平和ボケ万歳。
これ生死を賭けた戦いだって。
メイドインジャパンの俺にはピンと来ないよ!!
自称神のこの子、見た目はほとんど人間だし
殺す殺さないって言ってるけど、この世界では当たり前なの?
殺すって? 泡みたいに消滅とかするのか?
ティウンティウンなのか?
特に遺恨もなくて私怨もなくて、なんなら憎悪もないのに
今日あった人? と殺し合い?
勘弁してくれよ。
日本人の倫理観とずれまくりなんですけど……
大体なんなんだこの世界は
俺達の戦いの余波で周辺が荒野と化してるぞ。
いつ俺は人間やめたんだよ。
といっても俺はほとんど何もしてないんだけどさ。
武器 :輝神ノ剣
クラス:レガリア
これのせいなんだろうな。
俺の愛用してたルミエール社製のシザーが剣になった。
これと後はこれだな。
スキル:『神スキル』
『神スキル』の中の一つ
神斬り:神を斬る事ができる
「はぁ……」
頭痛い。
色々ツッコミ所があって
やばさをひしひしと感じる。
このぶっとび具合は夢じゃないのかな?
あー夢であってくれー。
死んでなくて、昏睡状態か?
夢でも脳死だとまずいな……確か保険証に……そんな事はいい。
「殺すのも殺されるのも嫌なんだけど、引き分けとかはないのか?」
あ、言ってすぐ気づいた。失言だったわ。
「貴様は何を言っているんじゃ!? 神に勝負を挑むという事、つまりは領地を奪おうとする、侵略なんじゃ。自分から仕掛けてきておいてなかった事になんて都合のいい話がある訳がないっ!」
「お前が負けたら?」
「わらわが負けたら、死んだら他の神が土地神になる。この場合はお前の後ろに誰かがいるなら、そいつがなるの。民は奴隷のような扱いをされるかもしれん。まさかこんな偏狭の地を狙ってくる奴がいるとはな……」
「俺が負けたら?」
「お前の負けはお前の死。背後に神がいるならそいつに報復も考えなきゃならん」
ここでは戦争は大規模ではなく、小規模
そして土地土地に神がいて治めている。
その陣取り合戦をしているって認識でいいのかな。
んで巻き込まれたっぽい。誤解なんだけど。
話聞いてくれないし、決着をつけるには生きるか死ぬか、殺すか殺されるの二択らしい。
「さすがに死ぬのは嫌だし、殺せないし、どうすればいいんだよ……」
というかそもそもどうしてこんな事になってるんだ?
思い出せ
確か……
「特技は髪を切る事ですね。仕事だったんで」
ターニングポイント!!
でも違うもっと前!
「何か食べ物を……なんでもいいんです……食べかけが、食べかけでもいいです」
ち、ちち、違う!!
これじゃない!
……
「アンタが本当に嫌な奴だったらこんなに苦しくなかったのよおおおお!!!!」
Oh……
これだ。