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2.転生組の茶会


 ラルバスさんやルルベルさんに案内してもらい、麗奈は王様と面会する事となった。麗奈が召喚されたナントカという神殿と城は隣接しているとの事で、その日のうちの移動だ。隣と言っても敷地面積がでかいので、馬車で移動している。


(精神的ダメージ凄いわこれ)


 聖母さまを護る為にと、麗奈の馬車の周りはイケメン騎士団が囲っている。更に四人乗りの馬車の同乗者は、騎士団長のラルバスさんと、副団長のメガネスさん、麗奈お付きになったというルルベルさんだ。彼らのキラキラしたオーラが、オバちゃんの精神をゴリゴリ削る。

 麗奈にとってイケメンというのは、あくまでも別世界の生き物だ。例え同じ空間にいたとしても触れ合う事はなく、会話もない。決して直に対応してはならぬものである。

 間違っても、麗奈を護るために周囲を囲んではならないのだ。


(イケメンはイケメン同士でキャッキャしてれば良いんだよ……)


 そこに一般的オバちゃん外見の自分は入ってはならない。邪魔だ。強いて入れるのならば、二人の仲を取り持つ近所のオバちゃんか、背景の壁。いっそ空気で良い。

 麗奈は同乗者であるラルバスさんとメガネスさんを見た。

 ラルバスさんはかなり正統派のイケメンである。金髪碧眼で王子様風。正装に包まれた体は騎士団長を名乗るに相応しく、きちんと鍛えられていると分かる。身長は180くらいだろうか。

 一方、メガネスさんは(冗談みたいだが)眼鏡をしている。インテリタイプの美形で、髪と瞳はチョコレート色。酷薄そうな薄い唇が、一部の人には堪らない魅力となりそうだ。体型はラルバスさんよりも細身なものの、身長は少し高い。


(ラルバス×メガネス……いや、メガネス×ラルバスの方が良いか……?)


 麗奈は目の前に男二人いれば、いくらでも妄想が可能だ。基本的には二次元限定なのだが、今回のようにストレスが激しい状態になると、すぐ目の前にいるもので済ます。人がいなけりゃ物を擬人化して妄想する。それすら無ければ痛みや痒みなどの感覚も擬人化だ。


(騎士団長と副団長なら、二人きりになる機会も多かろう)


 二人の日常を脳内で捏造し始めると、ストレスがみるみる軽減されていく。それどころか、通常では見られないようなイケメンが間近に資料として存在するおかげで、非常にノッてきた。


(うむ……イケメン騎士団美味しゅうございます)


 自分が介入しさえしなければ、イケメンがたくさんいるのは妄想に優しい。これはこれで極楽のような気さえしてくる。新しい発見だ。


「……あ、あの……」


 呼びかけられて、麗奈の妄想は中断された。ハッとして顔を上げると、周囲が何だかざわざわしている。

 何事かと思い、麗奈は車内のメンバーの顔を見た。ラルバスさんは嬉しそうな、メガネスさんは驚いたような顔をしている。そして声をかけてきたルルベルさんは、困惑したような表情だった。三人三様すぎて、何が起こったのか分からない。

 取り敢えずルルベルさんに状況を聞こうとして、麗奈は思い出した。


(妄想か!)


 ルルベルさんは麗奈の妄想力が、空気中の魔力へ変わると言っていた。

 ならば、今した妄想も例外ではあるまい。

 麗奈はカッと目を見開いた。


「……ご安心ください。聖母さまの慈愛の心は、我々凡庸の輩に理解出来るものではございません」


 ルルベルさんのフォローが、麗奈にはこう聞こえた。


『落ち着け。アンタが妄想したって雰囲気で分かったところで、内容まで分かるわけじゃない』


 麗奈は目で問うた。ルルベルさんは頷いた。

 視線の会話を終了させ、麗奈は落ち着いた。


(まあ、確かに内容まで分かった上でラルバスさんがあんな表情だったら…………それはそれで有りだな)


 うっかりまた妄想が捗りそうになった。だが、今回のそれを止めたのは、当事者のラルバスさんだった。


「素晴らしい……聖母さまの奇跡を目の当たりにするなんて……」


 美しい顔を紅潮させ、ラルバスさんは大変に感動されているようだ。麗奈を見る目がキラキラしている。奇跡の詳細をお聞かせ出来ないのが残念でならない。

 それにしても謎なのは、こんなにすぐに分かるものなのかという事だ。


「この世界の住人であれば、魔力の流れを感じ取ることが出来ます」


 ルルベルさんがまた、実に良いタイミングで答えてくれる。そういえば、彼女のステータスの技能欄に「予測」とあった。ステータスにわざわざ載るくらいなのだから、特筆すべきものなのだろう。実際に、麗奈は非常に助かっている。この人が秘書だったら、さぞかし仕事もしやすかろう。


「まさか……このように容易に……」


 メガネスさんは中指で眼鏡をクイッと上げて、ぶつぶつ呟いている。何やら分析しているようだ。

 麗奈はメガネスさんのステータスを覗いてみた。


名前:メガネス ナカムラ

性別:男

年齢:30

職業:カウィテ国所属 副騎士団長

体力:1960

魔力:790

力:87

知力:68

精神力:48

技能:剣技 馬術 分析

性質:猜疑心

その他:バツイチ


 「バツイチ」で「猜疑心」とか、凄く興味深いところだ。妄想のネタが満載である。だが、今回は技能欄に「分析」があった事に注目したい。

 この人もまた、ルルベルさんの「予測」のような便利技能持ちという事だ。判断に迷う事柄に出会った際、メガネスさんに相談するのも良いかも知れない。

 いつ帰ることが出来るのか、分からないのだから。


(異世界か……)


 麗奈は外を眺めてみた。

 隣接した神殿から城への移動なので、まだ本格的な街並みなどは見られない。それでもその景色は、平成の日本ではあり得ないものだ。


(ビルがない……建物が灰色じゃない……)


 ぱっと見た感じ、高い建物は城と神殿しかない。その二つは白壁で、太陽の下で見ると眩しい。遠方には、綺麗に山の形が見える。空の色も、かなり深くて濃い。

 東京の空も、麗奈が子供の頃よりは随分綺麗な色が戻ってきていたけれど、全然違う。

 しかもこれから会うのは、王様なのだという。

 日本には王様なんて居ない。いるのは天皇陛下だ。陛下は目があえば微笑んで手を振ってくれそうだが、異世界の王様とか怖い。


(……逃げたいわぁ)


 イケメンに囲まれているから無理だし、仮に逃げられたとしても、どこに逃げれば良いのかも分からない。結局こうしてされるがまま、王様に会うしかないのだけれども。


 麗奈がひとつため息をついた頃、馬車はお城に到着した。


(……本当に逃げたい……)


 日本の下町で育った麗奈は、権力者と会う事など無いままにオバちゃんになっている。当然、そのような人と会った場合の礼儀も知らない。ステータスに不老不死とはあるものの、そこに痛みが伴わないとは無かった。無礼だとか言われて斬られでもしたらたまらない。

 だから、何か痛い目に遭うのは嫌なのだ。権力に近付くと色々危険な事が増えそうで、出来れば避けたい。

 そうこうしているうちに、色々な手続きが終了していく。

 王様の前に行くのにさすがに騎士団全員というわけにはいかず、残ったのは馬車に同乗したメンツだけだった。極端に人数が減って不安が増すけれど、時間は止まってくれない。麗奈の心の準備など出来ぬまま、容赦なく王様への扉は開かれる。


(おお……イメージ裏切らないなぁ)


 扉の向こうは「謁見の間」のイメージ通り、中央から玉座に向けて赤い絨毯が敷かれていた。両脇の壁沿いに衛兵さんが並び、「緊急時以外は空気です」と言わんばかりにビシッとした姿勢で固まっている。

 玉座までは結構な距離があり、麗奈の視力では王様の姿がきちんと確認出来なかった。案内されるままに部屋の真ん中くらいまで歩いて、ようやく分かってくる。


(……ここは美形しか存在が許されない世界なのかな?)


 王様もイケメンだった。しかもまだ若かった。見た感じ30代前半と思われる。髪は濃い目の金髪で、瞳も金色だった。全体的に雄々しく力溢れる雰囲気の外見なのだが、ちょっとだけ目尻にシワがあり、それが悪戯っ子のような印象を与えて可愛い。


「よく来てくださった、聖母殿」


 大変に魅力的な笑顔で、王様が迎えてくれた。声も無駄に良い声だった。

 麗奈の両脇で、ラルバスさんとメガネスさんが膝をつく。ルルベルさんは華麗にお辞儀をした。

 麗奈はどうしたらいいのか分からず、キョドキョドするばかり。


「民を救う為とはいえ、こちらの都合で呼び出してしまった事、申し訳なく思う」


 挙動不審の麗奈に、王様は気にする風も無く謝ってくれた。周囲の衛兵さんたちも、無礼だと言って斬りかかってくる様子は無い。空気ですの姿勢のままだ。

 どうも思ったよりも相手の腰が低い……というか、大変に常識的だ。

 麗奈は少しだけ警戒を解いた。そして王様のステータスを覗いてみた。


名前:オウゼス タカハシ(カウィテ8世)

性別:男

年齢:34

職業:カウィテ国王

体力:3630

魔力:2110

力:312

知力:285

精神力:365

技能:先導 カリスマ 治世

性質:天才肌

その他:異世界よりの転生者 独身


「うわ」


 今まで見た中では圧倒的なステータスに、麗奈は思わず驚きの声をあげてしまった。しかも、王様も転生者だ。

 麗奈の反応から察したように、王様が笑う。

 その手が軽く上げられると、玉座の右後ろのドアが開かれた。


「もうお分かりの事と思うが、詳細はこちらで話そう」


 王様が開かれたドアの前で手招きする。

 行って良いのか分からず、麗奈はルルベルさんを見た。ルルベルさんは視線で行くように促して、自らも王様の方へ歩いて行く。

 だが、ラルバスさんとメガネスさんは謁見の礼のままだ。移動する気配が無い。

 麗奈はやっぱり悩んでしまい、もう一度ルルベルさんを見た。ルルベルさんは王様と麗奈の中間で足を止め、来ないの?みたいな顔で首を傾げている。


(……ううう、ルルベルさんは私のお付きだっていうし……)


 迷った末、麗奈はルルベルさんの方へ向かった。ドアをくぐる辺りで麗奈を先に行かせて、ルルベルさんが後ろ手にドアを閉める。

 そこは小さな部屋だった。

 中央に四人がけのテーブルセットが置かれている。壁際には本棚がひとつ設置され、居心地の良さそうな空間だ。換気は悪くないが窓は無く、出入り口は今通ったドアしか無い。

 そのドアに、ルルベルさんが鍵をかける。


「よし、オケオケー」


 部屋の中には王様と麗奈とルルベルさんしか居ない。

 今の「オケオケー」は、王様の無駄に良い声だった。ぽかんとする麗奈を尻目に、王様はテーブルセットの方へと移動する。


「聖母さんこっちこっちー。お菓子でも食べながら話そー?」


 テーブルの上には、既にお菓子とお茶が用意されていた。非常に美味しそうなお菓子だった。お茶も良い香りが麗奈のいる場所まで漂ってくる。

 麗奈はルルベルさんを見た。ルルベルさんは慣れたように王様のいるテーブルセットへ行き、礼儀もへったくれもない仕草で椅子に座る。


「聖母さん、中野さんっていうらしい」

「中野さんかー、よろしくねー」


 ルルベルさんの情報提供により、王様の麗奈の呼び方が変わった。だけど麗奈としては、呼び方よりも喋り方の変化の方が気になる。

 そしてそれは、やっぱりルルベルさんが聞く前に答えてくれた。


「元は同じ世界の住人ですからね。この世界にストレスが溜まったら、こうして愚痴り合うわけですよ」


 ルルベルさんの説明に、王様がうんうんと頷く。


「俺も王様なんてしちゃってるけど、日本に居た時は一般人だったしー。こうしている方が断然ラクなんだよねー」


 そりゃそうだろうなと、麗奈は思った。お菓子食べながらトークするのと治世では、前者がラクに決まっている。比べるまでもない。


 二人が急にくだけた感じになったせいか、お菓子やお茶の香りのせいか。

 はたまた、もう疲れで体力が限界だったのか。


 なんとなく、警戒するのが馬鹿馬鹿しい気持ちになった。日本にいる時のように力が抜けていく。

 麗奈は、どうぞと引かれた椅子に腰掛けた。異様に座り心地の良い椅子だった。さすがお城の椅子である。


「改めまして、オウゼスですー。よろしくねー」

「中野です。よろしくお願いいたします」


 ぺこりと頭を下げつつ挨拶を返すと、王様は「かたいかたいー」と笑いながら手を振った。


「この国ではファーストネームで名乗るのが普通だよー。貴族じゃ無いと苗字無いからねー」

「その貴族は『発展に貢献した転生者の子孫』ってだけですけどね」

「しかも転生者って日本人ばっかりだから、苗字日本のだしねー」


 こんなところで、今までどこでツッコんで良いのか分からなかった苗字の謎が明かされた。かなりどうでもいい理由だった。


(下の名前か……)


 麗奈は自分の名前が、外見に似合わないものだという自覚がある。だから、名乗るのはあまり好きではない。

 だが、二人が既に名乗ってくれているので名乗るべきだろう。 


「中野……麗奈、です」


 思い切ってフルネームで名乗ってみる。


「中野麗奈」


 ルルベルさんは名前を反芻し、持っていたお菓子をポロリと落とした。そして、麗奈の顔をまじまじと見つめた。

 中々に失礼な態度だ。似たような態度を取られた事は何度かあるが、ちょっとムカつく。

 一方、王様は「麗奈ちゃんかー」と呟いているけれど、特に気にしている様子はない。最近は派手な名前の子供が増えた為、王様のように気にしない人の方が多かった。ルルベルさんのような失礼な態度は久し振りである。

 麗奈がじっとりした目で顔を見返すと、ルルベルさんはハッとした表情になった。そして慌てて落とした菓子を拾い、頭を下げてくる。ちょっとムカつきはしたが、麗奈も慣れているので「気にしていない」という風に手を振った。

 その手元……いや、指の辺りを眺めながら、王様が問うてくる。


「麗奈ちゃん……呼び出しといて何だけど、ご家族とか大丈夫ー?」


 聞かれて、指輪の確認をしていたのだと気付いた。

 年齢的に当然の質問だ。家族がいたら、誰かが酷く心配する事になる。だが幸いというのかどうか、麗奈に家族はいない。


「両親はもう亡くなったし、ひとりっ子だし、未婚で子供も居ないよ」


 王様にあわせて、麗奈も普通の口調で話す事にした。指輪の無い事を確認出来るよう、左手を前に出してヒラヒラと動かしてみせる。


「恋人もナシ。……好きな人も死んじゃったからね」


 麗奈は胸元に右手を当てて、思い出すように目を細めた。


 19歳の頃。

 当時は対戦格闘ゲームが流行っていて、麗奈も友達と毎日のようにゲーセンに通っていた。

 麗奈の好きだった人は、そこの常連さん……麗奈よりふたつ年上の、冴えない大学生だった。まだ若いのにくたびれたような外見で、ついたあだ名が「おじさん」。麗奈もそのまま、「おじさん」と呼んでいた。


 彼は格好良くは無かったけれど、対戦して言い合ったり趣味の話をしたり。

 思い出せるのはくだらない話をした事ばかり。

 それでも、すごく楽しかったのだ。ただ一緒にいるだけで良かった。


 だけど、告白しようか悩んでいるうち、彼は麗奈の誕生日を境に来なくなってしまった。


 ゲーセンに向かう途中で、交通事故に遭って。


 まだ彼の本名すら知らなかった麗奈は、お葬式にも行けなかった。呆然とするばかりで、涙すら出なかった。

 数日後に彼の友人から、遺品として小さな箱と手紙を貰うまで。


 箱の中身は、麗奈の誕生石のピアス。

 手紙には一言、『好きです』の言葉。


 両想いだったのだ。

 麗奈がうだうだ悩まずにすぐに告白していれば、想いは通じていたのだ。場合によっては誕生日を一緒に過ごして、彼は事故に遭わなかったかも知れない。

 生きていたかも知れない。

 後から知った彼の名前を、呼べたかも知れない。


 麗奈は悔やんで悔やんで、毎日泣いて過ごした。彼の死を受け止めて普通に暮らしていけるまで、数年を要した。


 だから麗奈は二次元しか愛さない。彼らはもし死んだとしても、それすらIFだから。


 胸元に当てた手の下に、小さなお守り袋がある。彼のピアスはこの中だ。着けて落としたら嫌なので、お手製の丈夫なお守り袋にいれて、首から下げている。肌身離さず持っていたおかげで、異世界まで一緒に来れた。


「そっかー……それで召喚できちゃったかなー?」


 王様が言うには、基本的に聖母の召喚は失敗するらしい。呼び出される側の因果が関係するとかで、聖母の素質があったところで、因果に負けて召喚できないのが普通なのだそうだ。


「召喚失敗すれば、諦めてくれると思ってさー」


 異世界に転生者した身としては、いきなり呼び出されたら迷惑だというのは、非常によく分かっている。だけどこの世界の住人には、それは伝わらない。異世界の住人の都合よりも、今目の前で病気でバタバタ倒れていく人たちの方が問題になる。

 何度も何度も召喚を打診され、王様もついに折れてしまったのだ。どうせ失敗するのだから、一回くらい良いか……と。


 ところが、麗奈は召喚されてしまった。


「本当にごめんねー……」


 王様はしょんぼり項垂れた。

 これは、王様を責めるのはお門違いというものだ。過去に召喚に成功した例は一件しか無く、それ以外は全て失敗だったらしい。麗奈が来てしまったのは運が無かったというしかない。

 麗奈は王様の肩をポンポンと叩き、優しく微笑んだ。


「来ちゃったもんはしょうがないし、どうせだからこの世界を楽しんでみるわ」


 少なくとも、王様が知り合いならそうそう切羽詰まる事もあるまい。最低限、衣食住には困らないはずだ。

 更に、あのイケメン騎士団は妄想の余地がある。あれを楽しまない手はない。あれだけイケメンがいれば組合せは自由自在だ。


 その後、転生組と直近の日本のサブカルチャーについて盛り上がり、お茶会は御開きとなった。本当はもう少しこの世界の事について聞いておきたかったのだが、それはルルベルさんに任せると王様は言った。

 そのルルベルさんによれば、麗奈には専用の邸宅が用意されているという。邸宅の準備が整うまでは、取り敢えずこの城に用意された部屋で過ごすそうだ。実際に部屋に通されたが、感想は「お城凄い」で終わる。麗奈の語彙力の限界を突破していたし、そもそも疲れて凄さを純粋に楽しめる状態ではない。


 麗奈は着替えもしないまま、天蓋付きのふっかふかのベッドに飛び込み、泥のような眠りについた。


 ……夢ですら疲れる事になるとは、思いもせずに。

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