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離れることは許さない  作者: 池野三毛猫
共同生活のはじまり
15/45

十五日目

アッシュとアリスを助けよう

何か良い方法ない?

そういや、BIO兵器実験区域でフェイ博士の部下がなんか作ってたぜ?

クイーンが言うには、ドクターたちはアッシュたちの運用実験をしたいらしいわ

そっそうしたら、その作ってるヤツ使ってみたら?

いいねー!!!




 区域に到着すると、既にアッシュの姿があった。私は彼の姿を見て安堵する。先刻見た彼の状態よりもずっと白光に包まれている。拘束を解かれている彼と私は白い線で繋がり、接続される。

(アッシュ!良かった無事で!何処にいたの?大丈夫だった?酷いことされてない?)

「アリス。あぁ落ち着いて、俺は大丈夫だから。」

 私は小走りに彼に近づき寄り添った。彼は私の左手をとり繋ぐ。彼と一緒になってから、いつの間にか約束事のようになっている。私たちはこれでようやく安心できた。

「もしもーし、俺ら居ること忘れんなよー。」

 周囲の心の代弁者のごとく、マーレイが話しかける。私は気づいて見回すと、不意に顔を背ける者もいた。ほんのり赤いような気がする。

 止めて、私も恥ずかしくなってきたじゃないか。

(ごごごごめんなさい、マーレイ博士)

「謝る必要ないよアリス、博士邪魔しないでください。」

「いやいや、これからお前ら運用実験だからな?アリスの初めての実戦テストだからな?今からブリーフィングやるんだから邪魔も何もないからな?俺、お前らの管理者の一人。わかってる?て言うかアッシュ、アリスの通訳してもらわなきゃ俺ら分かんないんだからちゃんとやれよ。」

 申し訳なく思う私をよそに、アッシュは邪魔をされたことに機嫌を悪くしたようだ。

 区域内入り口近くのミーティングルームに居る私たち──一個分隊と二人のドクター、数人のスタッフはテーブルを囲む。 咳払いをひとつして、スタッフがきりだした。

「それではブリーフィングを始めます。現在試作体L1を第5ブロック屋内中規模実験室へ閉じ込める事に成功しました。20分前に室内に神経毒ガスを散布、L1の活動が低下しています。効果時間はあと30分程度と思われます。」

「実験室周辺の状況と被害状況はどんなだ?」

「区域担当の部隊員殉職三名、重症二名、軽症五名です。レスター博士とスタッフ二名は無事の確認がとれています。現在、第5ブロック隔壁閉鎖をした状態で全員第4ブロックに避難が完了しています。しかしながら第5ブロックはL1の体液汚染と建造物損傷が激しく、部隊では近づけません。またL1の活動が再開されれば第4ブロックに侵入されるでしょう。兵の弾薬も少ないとの情報が入っていますので、かなり危険かと。」

「討伐はアッシュたちの任務ですが、ドクター(わたし)の権限で第5ブロックの状況を、モニターと実験データを記録出来るよう手配しましょう。……L1の情報が少ない状態ですね。第4ブロックのレスター博士に連絡を取れますか?」

「いや、連絡しな──」

「今繋げます!」

 マーレイの制止の声に被せるように、スタッフが返事をする。彼の横顔は青ざめているように見えた。スタッフが端末を操作すると、壁面に嵌め込まれた大型モニターに砂嵐がうつる。あれ?おかしいな──と、一人言をぶつぶつ言いながら更に操作を進める。

 すると、男性の顔が画面一杯にうつしだされた。

「メーデーメーデー!!誰か、誰か応答してよ!おねがーい!」

 あまりにも近すぎて全体像の掴めなかった男が、大声で助けを求めつつ画面から少し離れる。華奢という言葉が似合う細身で赤毛の男が現れた。

「少し落ち着いたらどうですか?レスター博士……。」

呆れたようにシンシアが話しかけると、向こうに通じたのか、喜びに溢れたレスターが黄色い声をあげる。

「きゃぁー!!やったわよ、貴方たち!通信が繋がったわ。これは……第1ブロックのミーティングルーム?………まぁ、マーレイ博士じゃない!やっぱり私の事心配して助けに来てくれたのね!」

「だーかーらー、私もいますって!落ち着いて少し声のボリューム下げてください、レスター博士。マイクの音が割れてます。」

「私に命令するんじゃないわよ、シンシア!ねー、マーレイ聞いてよ。兵士は怪我人ばっかりだし、区域が何処もかしこも閉鎖されちゃって出られないのよー!」

「あ、うん。落ち着けよレスター博士……。今からお前らの救出に行くんだから。……俺は行かねーけど。」

 レスターは、しきりにマーレイと話をしようとしている。しかしマーレイは死んだ魚の目をして何かを呟き続けている。小さすぎる声で何を言っているか分からないが、その横顔は先程よりも顔色が悪くなっていた。

 その状況を見かねて、シンシアが私たちの運用実験を兼ねた試作体の討伐許可がフェイ博士とヨアキム博士から出ている旨を説明した。

 レスターは先程までの表情とは違い、眉間にシワを寄せ厳しい表情となる。

「L1を破棄するのは賛成ね、造っておいてなんだけど、あんな言うこと聞かないポンコツは要らないわ。フェイ先生がヨアキム博士の提案受け入れるのは意外ね。ただ、アッシュを投入するのは良いけど、戦う能力無さそうなその女の子は正直足手まといだと思うわよ。」

「上の決定だから仕方がないだろ。性能的に、L1とうちのアッシュは戦えそうか?」

「戦えると思うわよ。ただ、L1の自己回復力が強くてね。Z-155を投与したガン細胞使ってるせいか、何にもしなくても、体細胞が今も増殖し続けているの。完全処分するなら燃やすか何かしないと……。体液は強アルカリ性で、水酸化ナトリウムに匹敵するくらい。素体を二人分使って脳の一部を機械化、こっちで制御出来るようにしたんだけど……。」

 ドクターやスタッフたちの顔がひきつっている。アッシュも何故か少しの間顔がひきつっていた。

アリスたんたちの実戦テスト「L1の討伐」前編がスタートしました。エコーたちがやらかした事が大事になってます。何て事してくれたんだ。

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