嘘
地上のほとんどが砂漠に覆われた世界の物語。
盗賊に襲われた村で出逢ったトワとフォレス。二人は共に故郷を目指し旅に出る。ある時、二人は不思議な老女と出逢う。
~登場人物~
トワ…砂漠の世界を旅する男。常に黒装束でサングラスを掛けている。
フォレス…盗賊に襲われた村でトワが出逢った少年。
「昔から興味のあった日本の跡地に行ってみようと思っているのですが、この砂漠ではなかなか…」
「そりゃそうだろうねぇ。これだけすっぽり砂に覆われてりゃあ、難しいよ」
「バーバラ様は占いをされる。その占いで日本のおおよその位置が分かりませんか?」
トワが尋ねると、バーバラは困り顔になった。
「それができりゃあ、今頃街で優雅に余生を送っているだろうよ。私の占いじゃ探し物は見つけられない。
私には、自分以外の人間の大雑把な未来しか分かりゃしないよ」
「では、私達の未来を占うことはできるんですね?」
「ああ」
「ひとつ、占ってみてもらえませんか。私達が日本に無事に着くことができるかどうかを」
そう言うと、トワは懐からずっしりと重そうな袋を取り出した。フォレスはギョッとした。
袋は机の上に置かれると、中で金属のぶつかり合う音を立てた。大量の金貨だ。
「トワ、占いでそんなに払うの?」
「野盗から命を救われたことを思えば少ないくらいだ」
「フェッフェッフェッ、それで充分さ。手持ちがなくなりゃ困るだろう」
バーバラはトワから金貨の袋を受け取ると、高らかに笑いながらガラス棚から水晶玉を取り出し、机の上に置いて手を翳しながら何やら呪文を唱え出した。そして、トワに聞いた。
「アンタにいくつか聞きたいことがある。名前はトワだったねぇ?」
「はい」
「歳は?」
「28です」
トワは真顔で物凄いサバを読んだ。フォレスは笑いそうになるのを必死に堪える。バーバラはやや眉をひそめたが、水晶玉を覗きながら続けた。
「若いってのはいいねぇ。私もあと50年若かったらアンタを恋人にできたろうに。アンタ、男前だからさ」
「いえいえ、バーバラ様もまだまだお若いですよ」
トワがそうにこやかに言うと、フォレスは堪りかねて噴き出してしまった。しかし、確かに言う通りである。
「笑ってるアンタはまだ子供だね」
バーバラが睨んできたので、フォレスは姿勢を正した。
「はい、10歳です」
「生まれはどこだい?」
「クル村です。トワとそこから来ました」
言っていることは間違っていない。トワが日本出身であることを言っていないだけである。
そうとも知らず、バーバラは水晶玉の上で手を泳がせる。ふいに前のめりになる。水晶玉の中に何かを見たようだ。トワとフォレスには反転した老人の顔しか見えないが。
お読み頂きありがとうございます。