砂漠の食事の確保について
地上のほとんどが砂漠に覆われた世界の物語。
盗賊に襲われた村で出逢ったトワとフォレス。襲い来る盗賊達を倒した二人は共に故郷を目指し旅に出る。
~登場人物~
トワ…砂漠の世界を旅する男。常に黒装束でサングラスを掛けている。
フォレス…盗賊に襲われた村でトワが出逢った少年。
砂漠では、当然のことながら食料と水の確保は必至である。そうしなければ、すぐに餓死するか脱水して死ぬからである。
幼い頃から村で暮らしていたフォレスにとっては、そうした食料と水の確保は、村の大人達が全て取り仕切って行っていたことであった為、未知のものだった。
よって彼は、夜の移動の合間にも、微かな獣の気配を察知しようとするトワを見て狩りを学んだ。
トワは星明かりしかない闇の砂漠でもしきりに辺りを見回し、耳を澄ませた。
近距離であればスナネズミの声や、砂の斜面を身をよじらせながら進むヘビの出す音も聞き取れるらしい。
トワは獲物の位置を把握すると、罠を張ったり、目視できればすかさず弓矢で射たりして狩りをした。
「なんだか可哀想になってきたよ」
焚き火を囲みながら、罠にかかったスナネズミのくりくりとした目を見て、フォレスは悲しげに言った。トワは頷きながら、
「分かる。俺も最初はそうだった」
せっせと短刀でスナネズミにとどめを刺す。
「特にこいつは狡いくらいに可愛いからな。心が痛むのは仕方がない。せめてありがたく命を頂くんだ。こっちも生きる為だしな。まぁ、すぐ慣れるさ」
トワは器用にスナネズミの皮を剥いでいく。フォレスは時折吐きそうになりながら、その様子を観察した。
別の日には、二人がラクダに乗り話をしながら夜を移動することがあった。突然、トワがラクダから、豪快に砂の中にダイヴした。
「トワ…… !?」
フォレスはトワが長旅の疲れで狂ってしまったのかと思ったが、そうではなかった。
砂から生えたトワの両足がしばらくバタバタともがいた後、砂の中からトワが後退りするように出てきた。いつも黒い全身が砂だらけである。
「トワ、急にどうしたの?」
フォレスが聞くと、トワは両手でしっかりと捕まえているものを見せた。
「こいつは食えそうだ」
サソリだった。毒がなければ食べられるらしい。
「それ……食べるの!?」
フォレスは信じられないという顔だ。トワはニヤニヤしながら、
「そうだ。旨いぞ。食ってみないか?」
と、サソリのしっぽをつまんで揺らしながら誘う。フォレスは顔を引きつらせはしたが、興味がなくもないらしい。空腹も手伝って、半分食べることにした。
トワの手で真っ二つに捩り切られたサソリは見るも無惨だった。フォレスは、そのサソリの頭の方を恐る恐る口へと運び、一気に口腔内へ放り込んで噛み砕いた。
「うっ」
「どうだ?旨いだろ?」
トワもサソリを食べながら聞く。フォレスはやっとの思いで呑み込むと、
「不味……くはない、よ。美味しくも…ないけど……硬い」
文字通りの苦虫を噛み潰したような顔をした。
トワは堪え切れず、押し殺すようにクックッと笑った。
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