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I Know
四槻想介です。
微ホラーとなっていますので苦手な方はご注意ください。
場所や状況を想像しながら、ご覧いただくとうれしいです。
彼女が流したのは、冷たい涙だった。
隣で戸惑う僕に、彼女は言った。
「あなたの知らない、私がいるの。」
頬を伝う涙とは裏腹に、落ち着いた声。
深深とみぞおちのあたりが冷たくなっていく。
…知らないことなんかないさ。
「あなたと会えて幸せだった。
あなたとは話せないけれど、いっぱいの暖かさをもらえた。
…でも、もう…終わりなの。」
最後は涙声になりながら言葉を切り、空を仰ぐ彼女。
…僕も、楽しかったよ。
こちらを向いた彼女の顔はもう泣いてはいない。「もう…止まらないの。」
…いろいろあったよね。一緒に喫茶店行ったり、本を読んだり。…幸せだったぁ。
…もう少し、一緒にいたいな。
胸に刺すかすかな痛み。
それと同時に容赦のないまどろみがじわじわと昇ってくる。
「…知ってるよ。」
まどろみの中でそう、つぶやいた気がした。