~第八回~
はい、零堵です
続きの話です。
ここ、メイド喫茶「マイ・ドリーム」で働く事になって、思う事は
断然、やってくる客に不満を持ってしまっていた。
何故なら、「ユキちゅわ~ん」とか、猫なで声で俺
市倉由紀=ユキを呼ぶからである。
まあ、俺は姉貴、市倉由紀のフリをしている偽者なので
俺の事言っている訳でもないのだが、結局は今の所、俺がユキなので
ユキとして、お客の注文を、聞いていく事にしたのであった。
「ユキちゃん、今日、暇?」
そんな事を言っているのは、お店に入ってきて
いかにも女にもてそうなルックスと、顔もイケメンなので
絶対に彼女、二人以上いるだろ?って感じのチャラ男だった。
暇と言われてもな「暇です」と言って、お前と二人っきりになりたくないんだが?
だからこそ俺は、こう言う事にした。
「すいませんが、全く暇ではありませんので、そのお誘いはお断りとさせて頂きます」
「ええ?じゃ、じゃあ携帯の番号を・・・」
「教える義理はないので、お客様、ご注文は?」
俺がそういうと、チャラ男は、諦めたのか
「じゃあ、魅惑のフルーツパフェを一つ・・・」
「かしこまりました、少々お待ち下さい」
そう言って、客から離れて、厨房に向かう事にした。
厨房に向かう途中、金髪縦ロールのカレンが話しかけてきた。
「由紀、大丈夫でした?」
「大丈夫って?」
「何か、あの客にしつこく誘われていたようでしたので・・・」
なんだ?心配してくれたのか?
とりあえず、俺は笑顔で
「大丈夫ですよ、デートに誘われましたが、軽く断わったので」
「デ、デート・・・そ、それはよかった・・・って、別に私は、貴方の事なんて心配してないですわよ!」
何で、ここでツンデレになるのか意味不明だが
「ありがとう、カレン」
そう言ってやると
「ゆ、由紀・・・」
カレンが顔を赤くしてしまった。
う、見た目がすげ~美少女なので、これは滅茶苦茶可愛いな・・・
って、俺は何を考えてるんだ・・・
とりあえず、注文を受け取ったので、仕事に戻る事にした。
結局、今日は、たくさんの野郎に声をかけられた。
まあ、一番声をかけていたのは、金髪縦ロールのカレンだったが
この店で、めっちゃ人気あるんだな?金髪縦ロール・・・
マネージャーの志保さんが「もう、あがっていいですよ」と言ったので
俺は、誰も入ってこないうちに、更衣室に入り、しっかりと施錠して
着ているメイド服を脱ぐ。
鏡を見てみると、そこに移っているのは、見た目が姉貴なので
ちょっとかっこいい感じの美少女だった。
「・・・ここまで姉貴に似てるって、ある意味すげ~よな・・・」
そう呟いてから、ロッカーを開いて、私服に着替え終わった後
店長の麻衣に「お疲れ様でした」と一言、挨拶してから
金髪縦ロールのカレンとガチ百合少女の萌に声をかけられると、かなり面倒な展開になるので
家に戻る事にした。
こうして、姉貴の代役としての一日が、終わりを告げたのであった。