~第四回~
はい、零堵です
続きの話です。
俺、市倉優希は、姉の代役をやる事になったぜ!
こうなったら、や~ってやるぜええ!!
はは・・・何言ってんだろうな・・・俺・・・
てか、そう思わないと、やってらんないしな・・・はあ・・・
とまあ、そんな訳で、姉の代わりにメイド喫茶
マイ・ドリームで働く事になった訳だ。
姉貴が家からいなくなって、次の日
朝早くに起きた俺は、まず、顔を洗い、学校があるので
制服に着替える。
バイトに向かうのは、学校が終わってからでいいだろう・・・と思っていたので
制服に着替え終わり、朝食を取って、外に出る事にした。
外の天気は、雨が降りそうな感じは全くなく、快晴で
ちょっと暑いぐらいだった。
通学路をひたすら歩き、通っている学校
南高校に辿り着く。
自分のクラスの中に入り、早速、親友の真吾に話しかけた。
「おはよう」
「よう、あ、優希、何で、昨日、勝手に帰ったんだ?」
「姉貴に言われて、仕方なくだよ、察してくれよ」
「いや、そう言われてもな・・・はあ・・・」
「どうしたんだよ?」
「いや、昨日のお店の中に、俺が気になってた子、呼ぼうとしたんだけど・・・やって来たのは、金髪縦ロールの子だったんだよな・・・、結局、最後まで、声をかけられなかったよ・・・」
「そ、そうか・・・」
おい、真吾・・・
一体声をかけて、何を言おうとしてたんだ?
「次にあったら、絶対に声をかけて・・・それで・・・ふふふ・・・」
うわ、キモ・・・
なんか、真吾が、変な含み笑いをしてる。
声をかけられなかったって、それって、もしかして・・・俺の女装した姿だろうな?
うん、絶対にこいつにだけは、バレナイヨウにしとこう・・・
ああ、絶対にな!
俺は、そう決心して、真吾と別れて、自分の席に着く。
席について、チャイムが鳴ったので、まじめに授業を受ける事にした。
授業内容は、まあ、言っちゃあ何だけど、結構俺は、優等生だったので
すらすらと解く事が出来て、全く問題はなかった。
あっと言う間に授業が終わり、放課後
姉貴に言われてるから、やっぱり行かなくちゃ駄目だよな・・・
もしさぼったら、後で何をされるか、いや、考えるのはよそう
とりあえず俺は、憂鬱な気分で、学校を出る。
そのまま向かうのって、制服姿だから不味いかな?と思ったので
一旦家に戻り、私服に着替えて、家の中でウィッグを付けて、家族に見られるのは嫌だったので、外に出た後、ウィッグを装着、そしてメイド喫茶、マイ・ドリームへと、向かったのであった。
俺は、そこで姉のやっていた、メイドを姉の変わりにやる事になったからである。
うん・・・ほんと・・・俺、何してんだろうなあ・・・
そう思いながら、お店、マイ・ドリームに辿り着く。
店の中に入ると、いらっしゃいませ~と言って来たのは
金髪縦ロールのメイドだった。
「あら・・・もしかして・・・由紀?」
そう言って、金髪縦ロールが聞いてきたので、俺は、姉の声で
「ええ、こんにちは」
え~っと・・・こいつの名前なんだっけ?
そういや、まだ名前、知らないんだよな・・・確か
「どうかしたのかしら?由紀?」
「何でもないわ、じゃあ、着替えてくる」
そう言って、そそくさと俺は、金髪縦ロールから、離れていく事に決めて、移動する。
控え室の中に入り、着てる服を脱いで、ロッカーの「市倉由紀」と書かれたのをあけた。
中に入っていたのは、メイド服で、俺は、それに着替える。
うん・・・この格好が慣れたら、怖ええな・・・とか思いながら
着替え終わると、控え室に、誰か入ってきた。
「こんにちは~、っと、由紀ちゃんだっけ?」
そう言ったのは、あきらかにお子ちゃまサイズの人物
ここの店長らしい、麻衣と呼ばれてる人物だった。
「えっと、店長でいいんだっけ?」
「そうだよぅ~、私、店長の麻衣だよ?え~っと・・・君が、由紀ちゃんの代役の優希君だっけ?」
「ああ・・・そうだけど?」
「その声で、男言葉使っちゃ駄目だよ~、由紀りんの代わりなんだから、由紀ちゃんっぽく振舞ってくれなきゃ困るよ~」
そう言われたので、俺は仕方がなく
てか、由紀りんって何なんだ?
「はあ・・・こんな感じでいいかな?」
「うん、だいぶマシになったかな?それにしても・・・」
「な、なんですか?」
「本当に由紀ちゃんそっくりだね・・・、別人って感じが全くしないんだけど?本当に凄いよ?」
そう言われても、あまりうれしくないのだが・・・
俺は、愛想笑いをする事にした。
「じゃあ、着替え終わってるみたいだし、ホールに出て、接客をお願いね?由紀ちゃん」
「はあ・・・店長は、どうしてるんですか?」
「私は休憩~、この仕事してると、結構肩が凝るのよね~」
そう言われても、幼時体型なので、全く懲りそうに見えないんだが?
そう考えていても、意味がないので、俺は、ホールに出て、接客をする事にしたのであった。
ホールに行くと、早速声がかかってしまった。
一つ言える事は、客が物凄くうざったい・・・
なんせ、男性客しかいないし、しかも俺を呼ぶ時の声が
「ユキちゅわーん!」とか、神経を逆なでる感じの声で、呼びやがるからだ。
俺は、こいつらうぜえ・・・と思いながら、呼ばれたので、男性客の所に行く。
俺を呼んだ客は、何故かスーツ姿だった。
いや、こんな店にこんな恰好は似合ってない・・・あきらかに浮いてる存在だった。
剃り残したのか、無精ひげがちらちらと見えて、結構おっさんじゃないか?こいつ・・・と顔を見てみると、なかなか渋い感じの顔だった。
とりあえずお客は、お客なので、俺は、こう言う。
「いらっしゃいませ、ご注文は?」
そう聞くと、男はメニューを見た後
「この、魅惑のフルーツパーティと、小悪魔のスパゲッティを頼む」
「かしこまりました、魅惑のフルーツパーティと、小悪魔のスパゲッティですね?」
しかし、メニューの名前が、凄いな?
思いっきり、まともじゃないんだが・・・
「ああ」
「では、お持ちしてまいりますので、少々お待ち下さい」
そう言って、俺は、注文を受け取ったので、厨房に向かった。
うん・・・明らかに普通な感じのメニューじゃないよな・・・?と思う。
数分後、注文された料理が出来たので、俺は、お盆に載せて、さっきの客の所に向かった。
「お待たせしました、魅惑のフルーツパーティと、小悪魔のスパゲッティになります」
そう言って、テーブルに品物を置くと、男がこう言ってきた。
「この後、暇?」
「はい?」
「このバイトが終わったら、暇か?」
何だ?もしかして・・・これって、誘ってるのか?俺のことを?
俺は、とりあえず嫌だったので
「いえ、暇ではないです、やる事があるので・・・申し訳ありませんが」
「そうか・・・なら、これを渡しとく」
そう言って、なんか名刺見たいのを、お盆の上に置いてきた。
「もしよかったら、連絡してくれ、俺は、いつまでも待ってるから」
「は、はあ・・・」
そう言っていると、「ユキちゃ~ん」と他の客が呼んだので、俺はそっちに向かう事にした。
貰った名刺は、とりあえずポケットの中に入れとく事にした。
そんな感じに時間が進んでいき、店長の麻衣さんが
「あがっていいよう~」と言ったので、あがらせて貰う事にした。
控え室に入り、ロッカーを開けて、私服を取り出して、それに着替える。
メイド服をロッカーに入れて、仕舞い込んでから、帰る事にした。
控え室から出ると、黒髪の萌が話しかけてきた。
「お姉さま、あがりですか?」
「う、うん」
「そうですか・・・一緒に帰りたかったのですけど・・・まだ、時間あるので・・・それにしてもお姉さま?」
「な、何かな?」
「さっき、男の人に名刺見たいな物貰ってましたよね?」
「そうだけど・・・」
「絶対に断って下さい!お姉さまにあんな人、似合いません!お姉さまの隣にいるのは、私って思ってるんですから!」
おいおい・・・それって、決まってるのかよ?と思ったが
今は姉の代わりなので、何とも言えなかった。
この子、普通にしてたら、結構いい線行くと思うんだけどな・・・
この場に長くいると、また何か言われそうなので
「じゃあ、帰るね?さようなら」
「あ、お姉さま・・・」
そう言って、俺は、家へと帰る事にした。
うん、初日でこんなに疲れるなんて、あと六日・・・
俺、大丈夫か・・・?って、なるんだが・・・
ま、なんとかなるだろう・・・と、思う事に決めたのであった。