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12 用間

挿絵(By みてみん)


1.情報を制する者は世界を制する


 戦わずして勝つコツは、情報戦だ。その基本は「先知」にある。


①先に知る。情報を収集して、先手をとるんだ。


 情報を集めるときは、人の目で見て、耳で聞いてこそ、まちがいのない情報を集められる。


 占いとか、似ているからとか、法則とか、そういうのはダメだ。


②先に知らせる。情報を操作して、優位に立つんだ。


 まさに「市に虎あり」だ。ありもしない虎の話でも、3人が「虎が出た」と言えば、みんな信じてしまう。


 たとえウソでも、みんなが信じたら、人を動かす真実になる。


挿絵(By みてみん)


2.スパイは5種類ある。


 ①郷間=敵のまわりにいる人をスパイのために利用する。


 ②内間=敵のなかにいる人をスパイのために利用する。


 ③反間=敵のスパイをこちらのスパイとして利用する。


 ④死間=犠牲とひきかえにして、スパイを成功させる。


 ⑤生間=敵のところに行き、スパイして、ぶじに帰ってくる。


挿絵(By みてみん)


3.スパイとつきあうときに大切な3つのこと


 ①仲良くする。スパイから嫌われると、うらぎられる。


 ②大切にする。ほうびをけちっていると、スパイもがんばらない。


 ③秘密にする。スパイのことがばれたら、敵に警戒され、失敗する。


挿絵(By みてみん)


4.スパイを使うときに大切なこと。


 ①賢さをもつ。スパイは難しいから、頭がよくないと、使いこなせない。


 ②思いやりをもつ。ひどい人には、スパイもついてこない。


 ③気をつける。用心しないと、どうでもよい情報に対して、多額のお金を支払うことになる。


 ④気をくばる。注意しないと、スパイにだまされ、まちがう。


挿絵(By みてみん)


5.スパイのやり方


 ①情報をもらしたら、許さない。情報がもれたら、大変なことになる。


 ②まわりから調べる。よくわからないことでも、関係者の話を聞いてまわれば、真相が見えてくるものだ。


 ③敵のスパイを利用することから始める。敵のところからやってきた人をうまくまるめこんで、こちらの味方にしてしまえば、敵のことがよくわかるようになる。


挿絵(By みてみん)


6.スパイこそ成功のヒケツ


 すぐれたトップも、賢いリーダーも、スパイを使って成功をつかむ。


 だから、成功したいなら、頭のよい人を選んで、スパイにするんだ。


挿絵(By みてみん)


 孫子が言いました。


 およそ開戦して10万人の兵隊を動員し、軍隊を千里の先まで行かせる場合、人民の出費、政府関係者の負担は、1日につき千金となります。内も外も騒然となり、仕事に専念できない家が合計で七十万世帯になります。敵と対峙することが数年におよんで、そうしてたった一度の決戦のチャンスを待つことになります。それなのに、(情報活動の対価とする)恩賞や百金をおしんで、敵情を知らないままにするのは、とてもひどいことです(モラルセンスがダメ)。人民の将軍としてふさわしくありません(リーダーシップがダメ)。君主の補佐役としてふさわしくありません(フォロワーシップがダメ)。勝利を思いのままにできる人ではありません。


 ですから、賢明な君主や優秀な将軍が、行動を起こしたときには必ず敵に勝ち、人なみすぐれた成功をおさめられる理由は、先知(先に知ること・先に知らせること)にあります。先知にあたっては、神様のお告げに頼ることはできません。似たものから類推することはできません。法則に照らし合わせて推測することはできません。必ず人から得て、敵情を知るようにするものです。


 ですから、スパイを使うにあたっては、5種類があります。因間(郷間)があります。内間があります。反間があります。死間があります。生間があります。5種類のスパイがそろって活動し、その方法を知られません。これが「神紀=運用の秘訣」というものです。君主にとっての宝です。生間とは、情報を持ち帰ってくるスパイ活動です。因間(郷間)とは、敵国の住民を利用して、スパイ活動に行うことです。内間とは、敵国の役人を利用して、スパイ活動を行うことです。反間とは、敵国のスパイを利用して、スパイ活動を行うことです。死間とは、外部に対してウソを本当のように見せかけることを行い、こちらのスパイにウソを知らせ、敵にウソの情報をつかませるスパイ活動です。


 ですから、全軍における親密さとしてはスパイよりも親密にすべきものはなく、恩賞としてはスパイよりも手厚くすべきものはなく、仕事としてはスパイよりも秘密にすべきものはありません。聖(賢さ)がなければ、スパイをよく用いることができません。仁(良心)がなければ、スパイをよく使うことができません。綿密でなければ、スパイの賞与を正しく行使できません。なんとも綿密であってこそ、スパイの用い方がゆきとどきます。繊細でなければ、スパイの実情を正しく把握できません。なんとも繊細であってこそ、スパイの使い方がゆきとどきます。スパイした事柄について公表していないのに、そのことが聞こえてきたら、そのことをスパイした人とそのことを他人に話した人を殺します。


 およそ撃破したい軍隊、攻略したい城、殺したい人などがある場合は、必ずそれを守る将軍、側近、案内係、門番、雑用係など(ターゲットに関係する人びと)の姓名を先に知り、それらの人物についてスパイに調べさせて知らせさせます。こちらに潜入している敵のスパイを必ず捜索して見つけ出し、この機に乗じてスパイを利してまるめこみ、たくみに誘導してスパイを引きとめてたぶらかします。そこで、反間が獲得できて使えるようになります。それを利用して情報を知ることができます。そこで、郷間や内間が獲得できて使えるようになります。それを利用して情報を知ることができます。そこで、死間がウソを本当だと見せかけ、敵にウソをつかませることができます。それを利用して情報を知ることができます。そこで、生間が計画どおりに活動できるようにさせることができます。5種類のスパイ活動のことについては、必ず知っておかないといけません。知るにあたっては反間が基本となります。ですから、反間は大事にしないわけにはいきません。


 昔、殷国が勃興するにあたって、伊尹が夏の地においてスパイとして活動しました。周国の勃興するにあたって、呂尚が殷の地においてスパイとして活動しました。□国が勃興するにあたって、師比が陘の地においてスパイとして活動しました。燕国が勃興するにあたって、蘇秦が斉の地においてスパイとして活動しました。ただ聡明な君主や賢明な将軍で、すぐれた賢者をスパイとして使うことのできる人だけが、必ず大成功をおさめられます。以上は、戦争のかなめであり、全軍が動くにあたって頼りとするものです。


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