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11 九地

挿絵(By みてみん)


1.その土地に行ったら、その土地にあうように行動する


 攻めこむときは、攻めこんだ先の状況にあわせ、最適なことをすることが大切だ。


 たとえば、「自分のところなら、兵士が逃げやすいので、戦わないようにする」とか、「ぐずぐずしていると負けてしまうところなら、じっとしているだけでピンチにおちいるので、必死になって戦う」とか、そんな感じだ。


 孫子の兵法では、それを「九地」として紹介している。


挿絵(By みてみん)


2.敵を急襲して混乱させる


 どんなに強い相手でも、連携プレイをとれなくさせれば、弱くなる。


 そのためには、相手が攻められると困るところを攻めれば、こちらの思いどおりにできる。「痛いところをつく」というやつだ。


 このときには、たくらみを使う。①敵のすきをねらい、②こっそり近づき、③いきなり襲いかかるんだ。いきなりだとあわてて失敗しやすくなるからね。


挿絵(By みてみん)


3.ピンチに追いこんで強くさせる


 人は、たとえ弱くても、ピンチに追いこまれると強くなる。


 追いつめられたネズミが、ネコにかみつくようにね。


 その理由だけど、人は、ピンチにおちいると、生き残るため、必死になってがんばるようになるし、たがいに助けあうようになるからだ。


 いわゆる「背水の陣」と「呉越同舟」というやつだ。


 こうして、みんなが一所懸命になって、一致団結して、取り組むなら、かなりパワーアップする。


挿絵(By みてみん)


4.クールとフェアでみんなを動かす。


 戦いにでたとき、リーダのとるべき態度は2つある。


①クールかつミステリアスをよそおう。


②フェアかつシビアにふるまう。


 こうすることで、リーダーは、メンバーをうまくあやつり、気づかれないうちにピンチにおいこむことができる。


 そうなると、メンバーは必死になるから、パワーアップして、勝ちやすくなるというわけだ。


挿絵(By みてみん)


5.適切な状況判断で最適な戦い方をする


 状況が変われば、人の気もちも変わる。たとえば、アウェイなら緊張しやすいけど、ホームならリラックスしやすいよね。


 だから、メンバーをひきいて戦うときのやり方も、状況に応じて変えないといけない。アウェイなら応援団を増やすみたいにね。


 もちろん、これは敵も同じで、状況に応じて、出方を変えてくる。こちらが優勢なら敵は守るだろうし、こちらが劣勢なら敵は攻めてくるだろう。


 だから、戦うときには、まずは戦うところの状況を知っておくことが大切だ。そのためには、軍争篇の3のやり方が参考になる。詳しい人に聞くとか、あったよね。


挿絵(By みてみん)


6.敵を油断させ、味方を必死にさせる


 すぐれたリーダーは、戦うときには、敵を有利にしてあげ、味方を不利においこむことによって、勝つ。


①相手を有利にしてあげる。


 すると、相手は自分の思いどおりになるので、「これは楽勝できるぞ」と喜び、油断する。


②味方を不利においこむ。


 すると、だれもが「このままでは、やられてしまう」と思い、生き残るために必死になる。


 必死になっている味方が、油断している敵と戦えば、もちろん必死になっている味方が勝つ。


 まず、おしとやかな女子のようにして敵を油断させる。それから、敵が油断したら、逃げるウサギのようにすばやくアクションを起こすんだ。


挿絵(By みてみん)


 孫子が言いました。


 地形は、兵士の助けとなるものです。ですから、用兵にあたっては、地勢の類型として、①散地があり、②軽地があり、③争地があり、④交地があり、⑤衢地があり、⑥重地があり、⑦泛地があり、⑧囲地があり、⑨死地があります。


①諸侯がみずから領土内で戦う場合、その戦場は「散地」となります。


②よその土地に入ってすぐのところは「軽地」となります。


③こちらが得たときには[得ても]有利となり、敵が得ても有利となるところは「争地」となります。


④こちらも行きやすいし、敵も来やすいところは「交地」となります。


⑤諸侯の領土が三方に接していて、先に到着すると各地の援軍を得られるところは「衢地」となります。


⑥よその土地に深く入りこみ、多くの城や街を通過したところは「重地」となります。


⑦山林、湖沼を行くなど、およそ通行しにくいところは「泛地」となります。


⑧入っていくには狭いところを通らなければならず、退いていくには遠回りをしなければならなくて、敵が少ない兵力でこちらの大軍を撃破できるところは、「囲地」となります。


⑨すばやくすれば生き残れるが、すばやくしなければ全滅することになるところは「死地」となります。


 そういうわけで、①「散地」では、戦ってはいけません。②「軽地」では、止まってはいけません。③「争地」では、攻めてはいけません。④「交地」では、道をふさがれてはいけません。⑤「衢地」では、諸国と親交を結びます。⑥「重地」では、物資を取り立てます。⑦「泛地」では、移動します。⑧「囲地」では、謀略をめぐらします。⑨「死地」では、戦います。


 いわゆる昔の戦いのうまかった人は、敵の前軍と後軍が互いに連携できないようにさせ、敵の貴族と庶民が互いに救援できないようにさせることができました。(その結果)敵の兵卒は分散したときには集まれず、敵の兵士は集合したときには整いませんでした。


 ここで質問します。敵が多くて整然としており、迫って来ようとしているとき、どのようにしてこれに対処すればよいのでしょうか。


 回答します。先んじて敵の大事なものを奪えば、敵をこちらの思いのままに操ることができます。軍事の実情としては、すみやかであることがメインとなります。敵が想定していない点につけいります。敵が思いもよらない道を通ります。敵が警戒していないところを攻めます。


 およそ敵地に攻め手のあり方としては、敵地に深く入りこんだときには結束し、守り手は勝ちません。敵国にある実り豊かな田畑の作物を刈り取り、全軍が食料を十分に持てるようにします。兵士を慎重に養って疲れさせないようにさせ、やる気をみなぎらせ、体力を充実させます。兵隊を動かして計略をめぐらし、敵の思いもよらないことをします。


 兵士を逃げ場のないところに行かせることで、兵士は死んでも逃げなくなります。兵士を必死にさせられないことはなく、兵士は死力を尽くします。兵士は、ひどくゆきづまれば怖いもの知らずとなり、逃げ場がなくなれば団結します。敵地に深く入りこめば結束し、どうしようもなくなれば必死に戦います。


 そういうわけで、その兵士は、きちんとさせなくても、おのずと気がひきしまります。求めなくても、みずから奮闘します。まとめなくても、おのずと仲良くします。命令しなくても、おのずと決まりを守ります。占いを禁じ、余計な疑念を生じさせないようにすれば、兵士たちは死ぬことになろうとも逃げないで戦います。


 わが兵士が物資を軽く見るのは、価値あるものを嫌っているからではありません。死を軽く見るのは、長生きを嫌っているからではありません。決戦の命令が出された日、兵士のうち、座っている者は涙で襟をぬらし、臥している者は涙で顔をぐしょぐしょにします。しかし、兵士を逃げ場のないところ(必死に戦わなければ死ぬしかないところ)に行かせるなら、だれもが専諸や曹劌のように勇敢になります。


 ですから、用兵のうまい人は、たとえば衛然のようにします。衛然とは、恒山にいる蛇のことです。頭(前軍)をたたけば、尻尾(後軍)が向かってきます。尻尾(後軍)をたたけば、頭(前軍)が向かってきます。腹(中軍)をたたけば、頭(前軍)と尻尾(後軍)が一緒に向かってきます。


 ここで質問します。兵士は衛然のようにさせられるのでしょうか。


 回答します。できます。越人と呉人は互いに憎みあっていますが、同じ船に乗って川を渡るにあたっては、まるで左右の手のように互いに助け合います。そういうわけで、馬をつなぎ、車輪を埋めて守りを固めたとしても、まだ頼りになりません。そろって勇ましくなり、みんなが一体となるのは、政道ガバナンスによるものです。強い者も弱い者も全員が奮闘するのは、地理ポジションによるものです。ですから、用兵のうまい人が、兵士を連携させて一人を使うようにさせられるのは、兵士をそうするしかない状況に追い込むからです。


 将軍のすべきことは、物静かにして本心を隠し、公正にして全軍を整えます。うまく軍人の耳目をあざむき、耳目がないのと同じようにさせます(軍人が将軍にとって好都合なことだけを信じるように仕向けます)。こちらの行動を変えたり、こちらの計画を改めたりして、人に知られないようにします。陣地を変えたり、道路を遠回りにしたりして、人にさとられないようにします。軍隊をひきつれ、兵士と決戦を約束したら、高いところに登らせてハシゴをはずすようにします。軍隊をひきつれ、兵士と一緒に諸侯の領地に侵入し、攻撃を開始したら、羊の群れをあやつるようにします。あやつるままに行かせ、あやつるままに来させ、その目的を知らせないようにします。全軍の兵士を集め、ピンチに立たせます。以上が将軍のすべきことです。


 九地の変(戦場は状況に応じで9つのタイプに分けられ、それぞれに最適な対処の仕方があること)、屈伸の利(状況に応じて動くべきときには動き、止まるべきときには止まること)、人情の理(人間はピンチに追いこまれると必死になり、かなりの力を出せるようになること)については、明らかにしないといけません。


 およそ敵地に攻めこむ方法としては、敵地に深く入りこんでいれば(兵士は逃げ場がないので)結束しやすくなりますが、敵地に浅くしか入りこんでいなければ(兵士は逃げ帰りやすいので)離散しやすくなります。自国を離れ、国境をこえて、軍事活動を行うところは「絶地」です。四方が諸国につながっているところは「衢地」です。敵国に深く入ったところは「重地」です。敵国にちょっとしか入ってないところは「軽地」です。後方が険しく、前方が狭いところは「死地」です。逃げ場のないところは「窮地」です。そういうわけで、「散地」では、兵士の意志を一つにします。「軽地」では、兵士をつなぎとめます。「争地」では、とどこおらせないようにします。「交地」では、同盟を固めます。「衢地」では、頼りになる相手を慎重に選びます。「重地」では、後続部隊を目的地に急がせるようにします。「泛地」では、さっさと通過するようにします。「囲地」では、(兵士を必死に戦わせるために)逃げ道をふさぐようにします。「死地」では、絶体絶命のピンチにあることを理解させます。ですから、諸侯の実情として、群[むら]がってきたとき(自国の城が他国の軍隊に包囲されたとき)には防衛します。やむをえないとき(反撃するしか生き残る方法がないとき)には戦闘します。通り過ぎていったとき(自国の城の前を他国の軍隊が通過していったとき)には追尾します。


 そういうわけで、①諸国の腹の内を知らない人は、事前に諸国と外交をとりむすべません。②山林、難所、湿地、沼沢といった地形を知らない人は、軍を進められません。③現地の地理にくわしい人間をガイドにしない人は、地の利を得られません。


 四つ五つのことについて少しも知らなければ、「王覇の兵(王者や覇者の軍隊)」ではありません。あの「王覇の兵」は、大国を征伐したときには、そこの兵隊は集まらなくなります。敵を威嚇したときには、そこの外交は味方を失います。


 そういうわけで、天下の外交をリードしようとせずとも、天下の覇権を握ろうとせずとも、自分の思いのままにできて、敵を威圧することができます。ですから、国は撃破させられますし、城は陥落させられます。


 法外な恩賞、規制のわくにとらわれない命令で、全軍の兵士を従わせ、まるで一人を動かすかのようにすんなりと全員を動かします。「これがすべきことだから、これをしろ」と命じて従わせ、その裏に隠された意図については教えてはいけません。「これをしないと損害をこうむるから、これをしろ」と命じて従わせ、その裏に隠された利益については教えてはいけません。兵士を滅びるほかないような状態に追いこんでこそ、兵士は生き残ることができます。兵士を死ぬほかないような状態に陥らせてこそ、兵士は生きのびることができます。そもそも兵隊は、窮地においこまれて、はじめてこちらに勝利をもたらし、敵を敗北させることができます。


 ですから、兵隊を動かすにあたって大切なことは、敵の考えを探り、敵の思いどおりにさせることにあります。(そうして敵が油断したところで)敵に対して力を合わせ、一丸となって向かっていき、千里もの距離を進んで敵将を殺します。これを「物事をうまくやる」と言います。


 そういうわけで、軍事に関する政務が開始された日には、国境を封鎖し、入国許可証を取り消し、使者の往来を禁止します。廊上(政府内)において気持ちを奮い立たせ、軍事についてマネジメントします。敵がスキを見せたら、必ずすみやかにつけ入ります。敵の大事なところを優先し、ひそかにそこにねらいを定めます。軍事の常識に従い、敵情に応じて動き、そうして戦争を決します。そういうわけで、始めは少女のようにふるまい、敵を油断させます。敵が油断して門戸を開いたら、逃げるウサギのようにすばやく動き、敵に対応する余裕を与えないようにします。


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