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10 地形

挿絵(By みてみん)


1.ベストポジションに立つ


 戦いに出たときは、戦う場所に応じて、やり方を変える。


 たとえば、「行きやすいけど戻りにくいなら、行かない」とか、「せまい谷なら、敵より先に全部をとってしまう」とか、そんな感じだ。


 こんなふうに場所のよしあしを見きわめて動いてこそ、ベストポジションに立てる。ベストポジションは軍隊を助けてくれる。


 このことは、すぐれたリーダーにとって大事なことだ。


挿絵(By みてみん)


2.チームが弱るようなことをしない


 ①強敵とむやみに戦うなら、チームが敗走する。


 ②管理がゆるいと、チームがたるんでしまう。


 ③管理が厳しいと、チームがへこんでしまう。


 ④サブリーダーが短気で勝手に戦うなら、チームが崩壊する。


 ⑤リーダーが弱くて指導がダメだと、チームが混乱する。


 ⑥リーダーが無謀でメンバーが弱いと、チームが負ける。


 この6つは、すぐれたリーダーにとっては大事なことだ。


挿絵(By みてみん)


3.すぐれたリーダーの任務


①ベストポジションに立てたら勝てるし、敵に立たれたら負ける。


 勝てるのなら、現場を知らないトップから「戦うな」と命令されても、現場の判断で戦う。負けるのなら、トップに「戦え」と命令されても、戦わない。


 そのせいで処罰されることになっても恐れない。自分のことよりも、主君に利益をもたらし、国民を守ることを優先する。


②チームをうまく率いるコツは、メンバーをかわいがること。ただし、それは甘やかすことじゃない。しかるべきは、しかる。


 子供がかわいいからこそ、よい大人に育ってほしいので、子供が悪さしたら、しかるよね。それと同じ。


挿絵(By みてみん)


4.勝てるかどうかを知るために必要な4つのこと


 ①自分を知る。自分に敵と戦える実力があるのか?


 ②相手を知る。自分が勝てる相手なのか?


 ③天を知る。グッドタイミングをつかむことができているのか?


 ④地を知る。ベストポジションに立つことができているのか?


挿絵(By みてみん)


『孫子』地形(全文訳)


 孫子が言いました。


 地形には、①通があり、②掛があり、③支があり、④隘があり、⑤険があり、⑥遠があります。


①こちらも行くことができ、相手も来ることができるものは、通と言います。通の地形では、先にその土地に陣取り、高くて明るいところにいて、糧道を確保し、そうして戦えば、有利です。


②行くことはできても、戻りにくいものは、掛と言います。掛の地形というのは、敵が無防備なら、出撃して勝ちます。敵に備えがあるなら、出撃しても勝たず、戻りにくく、不利です。


③こちらが出撃しても不利となり、敵が出撃しても不利となるものは、支と言います。支の地形というのは、敵がこちらにとって有利になっても、こちらは出撃してはいけません。軍隊を引いて去り、敵を半分ほど出撃させて攻撃するなら、有利です。


④山間の谷間の入り口で守りにつくことになり、どちらを向いても絶壁によってさえぎられているものは、隘と言います。隘の地形というものは、こちらが先に陣取っているなら、必ず全体を占拠して敵を待ち受けます。もし敵が先に陣取り、全体を占拠しているなら、相手にしてはいけません。全体を占拠していないなら、相手にします。


⑤高いところにいて低いところにいる敵を待ち構え、安全なところにいて危険なところにいる敵を待ち構えられるものは、険と言います。険の地形というものは、こちらが先にいるなら、必ず高くて明るいところにいて、そうして敵を待ち構えます。もし敵が先にいるなら、軍隊を引いて去り、相手にしてはいけません。


⑥敵と互いに離れ、遠ざかったところに布陣しているものは、遠と言います。そもそも遠の地形は、勢いが等しいなら、戦いを挑みにくく、戦っても不利になります。


 およそ以上の6つは、地形に応じた方法です。将軍のもっとも重要な任務であり、明らかにしないわけにはいきません。


 ですから、兵士には、①潰走があり、②弛緩があり、③陥落があり、④崩壊があり、⑤混乱があり、⑥敗北があります。およそ以上の6つは、天によってもたらされる災いではなく、将軍の過ちです。


①そもそも勢いが等しいとき、敵の10分の1の兵力で、こちらの10倍の敵と戦うものは、潰走と言います。


②兵士が強く、役人が弱いものは、弛緩と言います。


③役人が強く、兵士が弱いものは、陥落と言います。


④上級の役人(将校)が怒って命令に従わず、敵に遭遇すると憎んで自滅し、将軍がその能力を知らないものは、崩壊と言います。


⑤将軍が弱くて厳しくなく、教練の仕方が明確でなく、役人と兵卒が秩序を保たず、兵隊の布陣が気ままなものは、混乱と言います。


⑥将軍が敵の実力をはかり知ることができず、小さい兵力で大きな兵力の敵と合戦し、弱い兵力で強い兵力の敵を攻撃し、兵士に精鋭がいないものは、敗北と言います。


 およそ以上の6つは、敗北する方法です。将軍のもっとも重要な任務であり、明らかにしないわけにはいきません。


 そもそも地形は、(うまく使えばこちらを有利にできるので)兵士の助けとなるものです。そもそも敵情を調査し、勝利を確実なものとし、土地が険しいかなだらかか、有利か不利か、遠いか近いかをとことん計ることが、上将(主将)のやり方です。


 これを知って戦うなら、必ず勝利します。これを知らないで戦うなら、必ず敗北します。戦いの道理からして必ず勝てるのであれば、君主が「戦うな」と言ったとしても、(現場にいる将軍の判断で)必ず戦います。戦いの道理からして勝てないのであれば、君主が「戦え」と言ったとしても、(現場にいる将軍の判断で)戦いません。


 ですから、進軍すべきときに進軍して、有名になることを考えません。退却すべきときに退却して、処罰されることを恐れません。とにかく人民は保護して、君主については利益がもたらされるようにします。まさに「国の宝」です。


 兵卒をいたいけな赤ちゃんのようにみるので、兵卒と一緒に深い谷に向かうことができます。兵卒を愛する我が子のようにみるので、兵卒と一緒に死ぬことができます。大切にしても職務に努めず、大事にしても命令に従わず、軍隊を乱してどうしようもないなら、わがままな子どもと同じで、役立ちません。


 こちらの兵士が攻撃に役立つことを知っていても、敵がこちらの勝ちやすい状態にないことを知らないなら、勝算は半分です。


 敵がこちらの勝ちやすい状態にあることを知っていても、こちらの兵士が攻撃に役立たないことを知らないなら、勝算は半分です。


 敵がこちらの勝ちやすい状態にあることを知り、こちらの兵士が攻撃に役立つことを知っていても、地形が戦うのに役立つことを知らないなら、勝算は半分です。


 ですから、こう言われるのです。軍事を知っている人は、(敵を知り、こちらを知り、地形を知っているので)行動するときには迷わず、挙兵するときには止まりません。


 ですから、こう言われるのです。相手を知り、自分を知っていれば、勝利はまちがいありません。天の時を知り、地の利を知っていれば、勝利はすんなりと得られます。


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