7 虚実
1.敵をコントロールして楽勝する
先手必勝だ。そのためには、敵をあやつるんだ。
たとえば、敵に来てほしいなら「来ると得をする」ように見せかける。逆に来てほしくないなら「来ると損をする」ように見せかける。
こうやって敵をコントロールすれば、敵はどこを攻め、どこを守ればよいのか、わからなくなる。
そうすると、敵の生死を思いのままにできる。
2.敵をばらして弱める
いつ、どこで、戦うのか、わからない。
敵がそうなれば、いつ、どこから攻められてもいいように、あちこちに兵力を分散するしかない。
どんな強敵だって、バラバラになったら、弱くなる。
たとえば、こちらの兵力が5で、敵が100でも、敵が100か所に分散したら、それぞれ1の兵力になる。5で1を攻めたら、楽勝だ。
3.敵を知るための4つの方法
敵をコントロールするためには、まず敵のことを知る必要がある。
敵を知るための方法は4つある。
①敵のことを調べて、行動パターンを知る。
②敵にフェイントをかけ、ポジションをよしあしを知る。
③敵のことを試して、力のあるなしを知る。
④敵になったつもりで考え、敵のつごうを知る。
4.すぐれた軍隊は水だ
すぐれた軍隊は、水が低いところを目ざすように、敵の力の低いところをねらう。
水が土地のありようにあわせて形を変えるように、敵のありようにあわせて形を変える。
こちらがコロコロと形を変えるから、敵は予測不能で、手の打ちようがなくなる。
ワンパターンにならず、水のように変わるからこそ、最強なんだ。
先に戦場に着いて敵を待ちうけるほうは、楽です。しかし、後から戦場に着いて急いで戦うほうは、疲れます。ですから、戦いのうまい人は、相手をコントロールしても、相手にコントロールされません。敵のほうからやってくるようにさせられるのは、敵を利でつるからです。敵がやってこられないようにさせられるのは、敵に害を与えるからです。ですから、敵が楽な状態にあるときには敵を疲れさせることができ、敵が食料に困っていないときには敵を飢えさせることができるのは、敵が(仲間を助けるために)必ず急いで向かってくるところに出るからです。
一日に千里を行くほどのスピードで急いでもこわくないのは、だれもいないところを進むからです。攻めて必ず勝てるのは、敵が守っていないところを攻めるからです。守って必ず負けないのは、敵が攻めてこないところを守るからです。ですから、攻めるのがうまい人は、敵がどこを守ればいいのかわからなくさせます。守るのがうまい人は、敵がどこを攻めればいいのかわからなくさせます。あまりにも微妙で、こちらの動向は敵に見えません。あまりにも神妙で、こちらの情報は敵に聞こえません。ですから、敵の命運を左右することができます。
こちらが進軍したとき、それを敵が迎撃できないのは、こちらが敵の弱いところをつくからです。こちらが退却したとき、それを敵が阻止できないのは、こちらが遠くて追いつけないからです。ですから、こちらが戦いたいと思えば、敵が塁を高くし、堀を深くして(守りを固めて)も、こちらと戦わざるをえなくなるのは、こちらが敵の必ず救うところを攻めるからです。こちらが戦いたくないと思えば、地面に線を引いた程度で守って(大した守りをしていなくて)も、敵をこちらと戦えなくさせられるのは、(偽装や陽動などによって)敵を思いどおりの方向に動けなくさせるからです。
ですから、うまい将軍は、相手を陽動して、こちらの実情を知られないようにしますが、そのときには、こちらは集まって一つになりますが、敵は分かれて十になります。これは、こちらは十倍の兵力を使って敵と戦うということです。こちらは少なくて敵は多くても、少数によって多数を撃破できるのは、すなわち、こちらの敵対する相手が小さくされているからです。こちらがどこで戦うつもりなのかについて知ることができなければ、敵は備えないといけないところが多くなります。敵の備えないといけないところが多くなれば、こちらが一度に戦う敵は少数になります。ですから、その前方を防備するなら、後方が少数となります。その左を防備するなら、右が少数となります。防備しないところがないようにするなら、どこもかしこも少数となります。少数になるのは、相手に備えるからです。多数になるのは、相手を自分に備えさせるからです。
いつ戦うのかをわかり、どこで戦うのかをわかれば、(それにむけて兵力を集中できるので)遠いところでも敵と戦うことができます。いつ戦うことになるのかをわからず、どこで戦うのかをわからなければ、(いきなり敵と遭遇することになって)前方の部隊は後方の部隊を救えませんし、後方の部隊は前方の部隊を救えませんし、左の部隊は右の部隊を救えませんし、右の部隊は左の部隊を救えません。ましてや遠く離れた部隊やちょっと離れた部隊を救えるはずがありません。私の立場から見当をつけますに、我が宿敵である越国の兵士は、多いと言っても、どうして勝負に役立つでしょうか。ですから、「勝利は思いのままにできる。敵が多数であっても、敵を戦闘させないようにできる」と言われるのです。
ですから(そのためにも、まず敵の実情を知る必要があるわけですが)、調査して、どのように行動し、どのように静止するのか、そのパターンを知ります。陽動して、どこが危険であり、どこが安全であるのか、その地の利を知ります。計算して、なにが得策であり、なにが失策であるのか、その内容を知ります。接触して、どこに余裕があり、どこに不足があるのか、その状況を知ります。
軍隊のありようとして最高なのは、(臨機応変にして柔軟にかたちを変えることによって)一定のかたちをとらないようにすることです。一定のかたちをとらなければ、いかにスパイでも、こちらのことをうかがい知ることができません。いくら知恵のある人でも、こちらのことをはかり知ることはできません。臨機応変にありようを決めて味方に勝利をもたらすわけですが、味方はそれを知ることができません。人びとは「どういったかたちで勝ったのか」について知ることはできますが、「どのようにしてありようを制御したのか」について知ることはできません。ですから、このときの戦い方と勝ち方は二度と使えなくて、戦い方と勝ち方はありように応じて無数に変化します。
そもそも軍隊のありようは、水のようなものです。水の動きとしては、高いところへは向かわず、低いところへと向かいます。兵隊の勝ち方としては、敵の力の充実したところへは向かわず、敵の力の虚弱なところへと向かいます。水は地形に応じて(ありようを変えることで)スムーズに動きます。兵隊は敵状に応じて(ありようを変えることで)スムーズに勝ちます。兵隊は、一定の勢いもなければ、一定のかたちもなく、しっかりと敵情に応じて変化していくわけですが、これを「神妙」と言います。五行もつねに勝つということがありません(木は土に勝ち、火は金に勝ち、土は水に勝ち、金は木に勝ち、水は火に勝ちます)。四季もつねに変わらないということがありません(春から夏になり、夏から秋になり、秋から冬になり、冬から春になります)。太陽の出ている時間にも長短があります(夏至には太陽の出ている時間は長くなり、冬至には太陽の出ている時間は短くなります)。月の大きさにも満ち欠けがあります(新月に近づけば月は小さくなり、満月に近づけば月は大きくなります)。(このように、軍隊のかたちも一定しません)。・真髄であり、要点です。




