6 軍争
1.「うちょくの計」をわきまえる
有利なら、先を急ぐ。
不利なら、いったん遠回りしながら、様子を見る。
遠回りするときは、えさを与えて敵を遠くによびよせ、そのすきに先を急ぐ。
これを「うちょくの計」と言うんだ。
2.スピードとバックアップのバランスをとる
勝つためには、スピードがいる。
戦うためには、バックアップがいる。バックアップには、時間がかかる。
バックアップにあわせて、スピードをさげると、チャンスをとりにがす。
スピードをあげると、バックアップがまにあわない。
3.スムーズに動けるようにする
そのためには、
①まわりの人たちの思わくを知り、味方につける。
②全体のありようを知り、迷わないようにする。
③そこのことに詳しい人に教えてもらい、ベストポジションを選ぶ。
たとえば、道中に味方がいて、地図がわかっていて、ベストな道を選んで進めば、スムーズに目的地にたどりつけるよね。
4.かけひきに勝ちやすくする方法
戦いでは、敵をあざむき、それで有利になったら動き、うまくたちまわる。
5.うまくたちまわるコツ
・すばやくするなら、風のように。
・ゆっくりするなら、林のように。
・攻めるなら、火のように。
・待つなら、山のように。
・かくれるなら、かげのように。
・動くなら、かみなりのように。
・ものを集めるなら、兵士をわけて。
・テリトリーを広げるなら、ポイントをわけて。
・戦いをしかけるなら、力をはかって。
・戦いをはじめるなら、「うちょくの計」をわきまえて。
6.かけひきに勝つには、あいずも大切
①あいずを使って、心をかよいあわせる。
みんなに見える旗や、みんなに聞こえるタイコを使えば、みんにあいずを出せるので、連係プレイがうまくいく。
②あいずを使って、敵を弱らせる。
たくさんの旗たてたり、たくさんのタイコを鳴らしたりすれば、まるで大軍がいるかのように見せかけられるので、敵をあざむくことができる。
大軍がいると思わせれば、敵はビビッてひるむ。
7.かけひき上手の4つのコツ
①敵よりもやる気を高める。
②おちついてチャンスをまつ。
③コンディションをよくする。
④敵が強そうなら無理をしない。
8.負ける戦いをしないコツ
①高いところにいる敵とは戦わない。
②坂の上にいる敵とは戦わない。
③わざと逃げる敵は追いかけない。
④囲んだら逃げ道をあけてやる。
⑤敵が逃げたいなら逃がしてやる。
『孫子』軍争(全文訳)
孫子が言いました。
およそ用兵の原則として、軍争(優位に立つための争い)ほど難しいことはありません。軍争が難しいのは、有益なら直行し、心配なら迂回する点です。ですから、(なにか心配があるなら)その道を迂回して、利益で敵を誘導し、敵より遅れて出発し、敵より先に到着するなら、「迂直の計」を知っています。
軍争は利益となるものでもあり、軍争は危険となるものでもあります。全軍をあげて優位に立とうとして争えば、(軍隊の規模が大きくなった分だけ動きが遅くなるので)遅れて間に合いません。全軍のことを考えないで優位に立とうとして争えば、(一部の部隊しかそれについて来られないので)補給部隊が置き去りになります。
そういうわけで、①重たい装備をしまいこんで、昼も夜も休まず、ふだんの数倍のスピードで先を急ぎ、100里も離れたところで優位に立とうとして争うときには、(敗北して)全軍の将軍を捕虜にされてしまいます。強い者は先に進み、疲れた者は後に遅れ、そのときには全軍の十分の一が到達できます。②同じようにして50里ほど離れたところで優位に立とうとして争うときには、主将をつまずかせます。そのやり方では、全軍の半分が到達します。③同じようにして30里ほど離れたところで優位に立とうとして争うときには、全軍の3分の2が到着します。
そういうわけで、①軍隊に補給がないときには壊滅します。②軍隊に食料がないときには壊滅します。③軍隊に物資がないときには壊滅します。
そういうわけで、①諸国の腹の内を知らない人は、事前に諸国と外交をとりむすべません。②山林、難所、湿地、沼沢といった地形を知らない人は、軍を進められません。③現地の地理に詳しいガイドを使わない人は、地の利を得られません。
ですから、戦争は、①うまく相手をだますことによって成り立つものです。②こちらが有利だと判断することによって行動するものです。③分散したり、集合したりすることによって戦い方に変化を出すものです。
ですから、①すばやくするときは、風のようにします。②ひっそりするきには、林のようにします。③侵攻するときには、火のようにします。④動かないときには、山のようにします。⑤こちらのことを知られないようにするときには、暗雲が太陽を隠すようにします。⑥動くときには、雷のようにします。⑦食料を徴発するときには、兵隊を分けて行かせます。⑧土地を占領したときには、要所に分かれて守ります。はかりではかるようにきちんと敵の実力をはかって行動し、迂直の道(近道を遠回りに変え、遠回りを近道に変える道)を先に知っている人が勝ちます。以上が軍争の方法です。
そういうわけで、『軍政』に、こうあります。「戦場では言っても互いに聞こえない。だから、よく聞こえる鐘や太鼓をつくる。見せても互いに見えない。だから、よく見える旗や手旗をつくる」。
そういうわけで、昼に戦うときには旗や手旗を多くし、夜に戦うときには太鼓や鐘を多くします。太鼓・鐘・旗・手旗は、全員の耳目を一つにする方法です。全員の耳目が一つになれば、勇敢な者が勝手に戦いをしかけるということもなくなりますし、臆病な者が勝手に逃げ帰るということもなくなります。以上が「大軍を使う方法」です。ですから、夜に戦うときには太鼓や鐘を多くし、昼に戦うときには旗や手旗を多くするのは、敵の耳目を惑わす方法です。ですから、敵軍は気を奪えますし、敵将は心を奪えます。
そういうわけで、①最初の気力は盛んで、中間の気力は弱く、最後の気力はつきています。ですから、用兵のうまい人は、敵の気力が盛んなときは攻撃を避け、敵の気力が弱まったときに攻撃します。これが「気を治める」ということです。②治まった状態にして敵が乱れるのを待ちうけ、おちついた状態にして敵がさわがしくなるのを待ちうけます。これが「心を治める」ということです。③戦場の近くにいて敵が遠くからやってくるのを待ちうけ、元気たっぷりな状態にして敵が疲れるのを待ちうけ、満足な量の食事をとって敵が飢えるのを待ちうけます。これが「力を治める」ということです。④隊列に秩序のある軍隊を迎え撃ってはいけませんし、布陣が堂々とした軍隊に攻めかかってはいけません。これが「変を治める(臨機応変に対処する)」ということです。
そもそも用兵のうまい人は、優位にいる敵とは戦いません。優勢な敵とは争いません。わざと逃げる敵は追いかけません。包囲したら逃げ道をあけます。退却している敵には近づきません。これが「兵隊を使う方法」です。




