4 軍形(形)
1.戦うときのかまえ方
まずは負けないように守りを固め、勝てるチャンスをまつ。それから、チャンスがめぐってきたら、戦いをしかける。
たとえて言うなら、たっぷりと水をためてから、それを一気に流すみたいなもの。これが軍隊の望ましいありようだ。
2.勝ちやすい敵と戦う
戦うときは、勝てるチャンスをねらって戦えば、楽勝だ。敵の弱みを見つけ、その弱みをつくんだ。
でも、こうやって勝ってあたりまえの戦い方をするなら、まわりの人からは評価されない。
だからと言って、まちがったことをしているわけじゃない。大切なのは、ホメられることじゃない。ロスを少なくして勝つことだ。
3.すじみちを立てて考える
場所から大きさを割り出し、大きさから多さを割り出し、多さから数字を割り出し、数字から優劣を割り出し、優劣から勝ち負けを割り出す。
こんな感じで、土台となるところから、すじみちを立てて考えていくなら、まるで天びんではかるように、勝ち負けが見える。
今風に言うなら、エビデンスにもとづいて、ロジカルに考え、判断するということだ。
孫子が言いました。
昔のうまい人は、まずこちらに敵の勝てない態勢を築き、そうして敵がこちらの勝てる状態になるのを待ちました。こちらに敵の勝てない態勢を築けるかどうかは、こちらの努力にかかっています。敵がこちらの勝てる状態になるかどうかは、敵の出方にかかっています。
ですから、うまい人も、こちらに敵の勝てない状態を築くことはできますが、敵をこちらの勝てる状態にさせることはできません。ですから、「勝利は、知ることができても、作ることができない」と言われるのです。
勝てないときは、守ります。勝てるときは、攻めます。守るときには、力に余裕が出ます。攻めるときには、力に不足が出ます。守るのがうまい人は、まるで地の下に深くもぐっているかのようにし、まるで天の上から勢いよくふってくるかのようにします。
ですから、自分を保全でき、確実に勝利できるのです。
勝てると見こんでも、だれもが「勝てる」と分かるものにすぎないものは、良いものではありません。戦い勝って、みんながこちらの戦い方を「うまい」と言ってほめるものは、良いものではありません。
だれでも持てる軽いものを持ちあげても、力が強いとは言えません。だれの目にも見える月や太陽を見ることができても、よく見分ける能力をもっているとは言えません。だれの耳にも聞こえる雷鳴を聞くことができても、よく聞き分ける能力をもっているとは言えません。
うまい人は、勝てる敵に勝ちます。ですから、うまい人が戦ったときには、奇抜な勝利はなく、知者という評判もなく、勇ましい功績もありません。ですから、その人が戦って勝つのは、まちがいないのです。まちがいないのは、その人が勝てるようにするにあたり、すでに負けている敵に勝つからです。
ですから、うまい人は、こちらを負けない状態にして、敵が負ける状態になったところをのがしません。そういうわけで、勝てる兵隊は、まず勝てる状態にしてから戦います。負ける兵隊は、まず戦ってから勝とうとします。
ですから、うまい人は、道理を身につけて、原則を守ります。ですから、「勝利をおさめ、敵を敗北させる政策」を実施できるのです。
原則として、「第一に程度をはかる。第二に物量をはかる。第三に規模をはかる。第四に優劣をはかる。第五に勝算をはかる。地形から程度が割り出される。程度から物量が割り出される。物量から規模が割り出される。規模から優劣が割り出される。優劣から勝算が割り出される」とあります。
勝てる兵隊は、重いおもりを軽いおもりと比べるように優勢となります。負ける兵隊は、軽いおもりを重いおもりと比べるように劣勢となります。
勝てる人が人民を戦わせる方法はと言うと、たっぷりとためた水を、一気に深い谷の底へと流すような感じになるわけですが、これが形というものです。




