対話その二 木慈
木慈は、冷静沈着、感情の一切をそぎ落としたような少年で、痛みの果ての果てに生まれてきたような存在だった。
どんなことをされても、何も感じないのであれば、それは無敵なのだ。わたしにとっては、だから、木慈は癒しを求めに会いにいくような存在だ。
大丈夫、何も、痛くない、なにも怖くない。
だいじょうぶだから、
だいじょうぶ
その言葉が、聞きたくて、わたしは、いつも木慈と会話する。
木慈との会話に、それ以外の話題が上ったことは、ない。
そんな木慈に、なぜか、わたしは久留麻先生のことを、話していた。
木慈は、久留麻先生のことを、どう思っているのだろうと、多少なりと、気になったからだ。
木慈は、しばらく黙っていた。その陶磁のような綺麗な肌には、暴力の影すら見当たらない。神に守られた少年。わたしは、木慈のことを、そんな風に思っていた。
・・・・・・いたい
え?
目の前から、木慈が、消えていた。
痛い?
わたしには、木慈の言った言葉の意味が、分からなかった。
久留麻先生は、わたしの分裂人格の、何人かと対話している。果たして、木慈と会話しているのかどうか、わたしには分からなかったが、木慈が久留麻先生から、ひどい扱いを受けたなどということがあるだろうか。暴力を振るわれた、だとか。
いや、そんなこと、ありえない。久留麻先生ほど、暴力に疎遠な人はいないのだから。いつだって、人に親切で、優しい先生なのだ。
だけど、木慈は、どうやら久留麻先生のことを、あまり好きではないようだった・・・・・・。




