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0. 過去

0です。物語が始まる前です。

黒世 律(くろせ りつ)

そういう名前で親につくられた俺は、高校3年生をむかえる直前で、学校を辞めた。これまで適当ながらも普通の高校生でいられたと思っている。ちょくちょく学校を休んでしまうこともあったが、その期間に心身を休めることで普通のやつを外で演じてこれた。だけど、もう限界だった。



ーこのまま向き合わずに前に進むことは。




 きっかけを言うなら、生まれたこと自体がきっかけになってしまうだろう。

 俺は無駄なことだと分かっているのに、過去を取り戻したくて、変えたくて、人生の時間を止めている。もちろん本当に時間が止まっているんじゃなくて、俺がそう思い込んで何もしないでいるだけなんだが。


ここから話すことは全部()()()()()()なんだから仕方ないと言われてしまうようなことなのかも知れない。




ーーーーーー




 俺は、中学にいくまでの記憶はあまりない。けど多分、突出してる部分は何もないような普通の子供だっただろう。そして、それを何とも思わない純粋なやつだったんだろう。

 中学校に入る頃、俺はあることに気づく。それは、家庭環境の劣悪さだ。こんなもんは、生まれた時には決まってて理不尽なものだ。

小学生の時は家庭環境のことなんて深く考えなかったんだろうが、中学生にもなれば周りとの環境の差を嘆いたり、それを変えたいと思うのは当然だと思う。でも母親からは、母子家庭の家で俺と妹の2人を頑張って育ててきたのに何で文句があるんだと言われた。まだ、中学生だった俺は自分を責めた。頑張って育ててきてくれた親に文句なんて言えないんだと。

でも、その後も人生の理不尽さを感じることはだんだん多くなっていった。


 俺には何があるんだろう。身長は平均以下で発育が良いとは言えない。勉強はちょうど平均くらい。運動神経はどっちかと言えば悪い。その上、家庭環境もない。俺だって子供ながらに、将来はお金持ちとか社長とかになりたいって思っていたのに。


 低所得層の家庭であることは小さい頃から知っていたから、成り上がりで大金持ちになるとかのドラマは好きだった。だからわかる。そこから成り上がるには、何かの才能や、助けてくれる人、少なくとも普通の親、とか何かしらのバフがあって初めて権利が生まれる。



それが、俺にはなかった。



俺はいつしか、上の要素の全ては繋がっていて、親次第で子供の思考や将来は大きく変わると思うようになった。他責思考と思われるかもしれないけど、俺はこうしか思えなかった、あるいはこう思うことでしか自分を支えられなかったのかも知れない。


まず、親からの遺伝だけでも将来が決まるかも知れない。何か優れた場所があれば、例えばスポーツ選手や俳優にだってなれたのかも知れない。それがあってもなくても、親がきっかけや刺激を与えてくれなければ何かに興味を持つことはなく、才能も死んでいく。

もし、何かに興味が持てても親が最悪ならそれを続けることは困難になる。


高校でこの思考に辿り着いてから、俺の人生への希望がだんだん失われていった。高校を辞めるまでやっていたサッカーも、俺のスペックと家庭環境を見れば続けることは困難だっただろう。


俺は全てを親のせいにすることはしたくなかった。多分それは、親だから。でも、それでは収まりがつかないほど俺の感情は大きくなっていた。

最後の希望として、親にこの感情をぶつけた。俺は別に、裕福な家庭が良かったと思ってない。ただ、普通の親でいてくれたらそれだけでも今の俺はもっと強かったのかも、かっこよかったのかも知れない。でも、それは終わったことでどうしようもない。だけど、俺はここからどうすれば良いのかわからない。だから、その答えが欲しい。そんな思いを伝えた。


かえってきたのは言い訳だけだった。

自分はこう言うことがあって過去に辛かった。私は、やってあげてるつもりだった。

俺はがっかりした。今は、人としての言葉より親としての言葉が欲しかったんだけどな…




「気持ち悪い」





 その過去があったとしてもそれが暴力や家事怠慢の理由にはならないだろう。そもそも、今まで引きずるくらいのことがあったなら子供なんて作るなよ。自分が前向けてないのに、2人も子供作って育ててそのくせこのざまなら、何のために生まれたのか分かんない。


俺は、感情のままに母を殴った。普通の子供ならありえない。普通の親じゃなければ、俺も普通の子供ではなかったんだと、もうもどれないんだと言う悲しみでいっぱいになり、俺は家を飛び出した。



 そんな俺をばあちゃんが家に置いてくれた。おばあちゃんは母と違ってしっかり者で、料理も毎日作ってくれて、家も綺麗な状態で維持してくれた。

 でも、そんなばあちゃんでも俺の悩みはもう終わったことだから仕方ないと言って切り捨ててきた。この人は心がとても強い。だから、弱い俺には言葉が強すぎた。

 


 ばあちゃんでもわかってくれないなら、俺の気持ちは一生俺だけしかわからないんだろうか。誰かに感じて欲しい、そしてどうするべきかを一緒に考えて欲しい。理解しないままで何かを言って欲しいわけじゃない。俺はまだあの家庭を、過去を引きずっている。


「助けてくれたっていいじゃん、神様。いままでこんなひどい仕打ちだったんだから。」


もはや俺は、神頼みくらいしかできなかった。


















よろしくお願いします

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