異世界ヒーロー3
目の前で剣が浮いている。
僕はこの剣をよく知っている。
いや、知ってはいない。だが子供の頃から見てきていた。
この剣はあの聖剣だ。
でもなんで急に目の前に?
「え、何これどう言う事」
アイツも流石に目の前で急に起こった事象を飲み込めていないようだ。
剣を警戒して動きを止めている。
何で急に剣が目の前に来ただとか
剣が抜けている事だとか
全部今はどうでもいい。
村のみんなをまゆをめちゃくちゃにしたコイツを倒す事ができる方法はもうこれしかない…!
僕は目の前の聖剣を手に取った。
その瞬間、意識が遠のいていった
「…何を望む」
声が聞こえた。
女性の声?
「私を使って何を望む。」
何を望むって…。そんなものは一つだけに決まってる。
「まゆを助けたい!助けて欲しい!」
「…無理です。失った命はどうにもできません」
失った命…?
と言うことはもう…まゆは…
ダメだまた弱気になってしまった。全部どうでも良くなってしまいそうになった。
…でもまゆは僕に言った。
生きて…と。
胸が張り裂けそうだ。
こんな気持ちを…こんな痛みを誰にも味わって欲しくない。
思えばこの気持ちを味わうのは2度目だ。
1度目は両親だった。
その時も突然僕の前から理不尽に奪われた…。
こんな気持ちを知っているのは僕だけでいい。
誰にも理不尽に奪われて欲しくない。
それなら…。
「人の大切を守れる力が欲しい。
理不尽から人を守れる力が!」
「え?」
「え?」
思わず僕も聞き返してしまった。
そんなに予想外な答えだっただろうか。
「他人のために私を行使したい。…と言うことですか?」
「はい。」
「なるほど…。ヒーローという奴でしょうか。」
「ヒーロー?」
どう言う意味だ?ヒーロー?初めて聞く言葉だ。
「ヒーロー。つまりこの世界でいう勇者みたいな人を指す異世界の単語です」
異世界…?それもよくわからないけど…勇者か…。
そうだな。
「人を理不尽から救える存在…ヒーローに僕はなりたい」
「それは茨の道ですよ」
「かまわない。」
「なぜそこまでして他人を助けようと言うのですか」
なぜ…か。
僕はその言葉を聞き子供時代…まだ親が健在だった時の記憶を思い出す。
父と母に遊んでもらっていた時。
父から将来、どんな大人になりたいか。質問された時。
僕は迷わず答えていた。
どうして忘れていたんだろう。
でも今、はっきり思い出した…。
「生きて」
まゆの最後の言葉を思い返す。
まゆ…僕だって君に…君に生きてて欲しかった。
僕じゃなくていい。誰とだっていい。
幸せでいて欲しかった
「だって…。」
「大切な人には生きてて欲しいじゃないか」
僕がそう言ったら聖剣…彼女が少し笑った気がした。
「わかりました。貴方を私の所有者として認めましょう」
「貴方…いえ我が主人が望む。理不尽から人々をきっと守る事ができるでしょう」
目の前が光に包まれた-
「その剣…聖剣だっけ?なんでこんなとこに?」
意識が戻ったようだ。
「へぇー抜けたんだ。いいね殺ろうよ。」
この世の中は理不尽に満ちている
1つ2つ乗り越えたとしても常に人の隣で理不尽は笑っている
なら僕が…俺がその理不尽を払い除ける
寝て起きれば当たり前に明日が来て欲しいから
大切な人に笑っていて欲しいから
俺は理不尽に対して刃を突きつける
「共に行こう」
俺は理不尽に剣を向けて言った
「聖剣-アザラス-ザバラス」
聖剣-アザラス-ザバラス
取得条件
大切なものを全て失うこと。