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【完結】親によってヤクザに売られた俺は、いつしか若頭になっていた。  作者: 松竹梅竹松
第1章

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第1章 第3話 敵

「あの小澤って人、赤熱組と接触したわよ」



 結愛にそう伝えられたのは、小澤が出所してきた日の夜。俺の自室に龍華を連れて報告してきた。



「赤熱組とは……?」

「比較的最近できた組ね。うちの近くにあって、カタギにも迷惑をかけるかなり昔気質の派手なシノギを持ってるらしいわ。おかげでうちから離れた組員が多く在籍しているようね」



 最近引っ越してきたのでこの辺りのシマの事情を知らない龍華に結愛が説明する。規模的にはうちの半分ほどしかないが、鎧波組に……というより俺に恨みを持つ人間が多い厄介な組だ。



「そこと接触したということは……鎧波組を裏切るつもりということですよね……?」

「だろうな。小澤が組にいた頃のメンバーも多いし、誘われたんじゃないかな」


「何をそんな余裕そうに……近くにそんな組があるならこうなることは予測できましたよね。それなのに小澤さんを煽ったんですよね? お嬢様に危害が及んだらどうするつもりだったんですか?」

「だからって下手に出ろって? 冗談だろ。それにあの程度、俺の敵じゃないしな」



 ヤクザというのはメンツを気にする人種だ。いくら若頭相手とはいえ、年下に舐めた口を利かれたら当然向こうは気に入らない。かといってこっちが下手に出たら相手は増長する。ヤクザという縦世界を生きるには強気に出るしかないのだ。



「大丈夫ですよ! 何があっても舞がお守りしますから!」

「そういうこと。結愛には迷惑をかけないようにするから心配しなくていいよ」



 舞の言葉に乗っかりこの場を終わらせようとしたが、龍華の不服そうな表情は変わらない。



「理解できません……あなたは若頭と言っても数年前まで素人だったただの子どもでしょう? それなのにヤクザ相手になんでそんな……!」



 俺を心配している……というわけではないのだろう。本当に理解できていないんだ。そもそも俺が若頭に選ばれていること自体が。



「ヤクザになる人間って二種類いると思うんだよ。一つは小澤みたいな、幅を利かせて暴れたい奴。だから他の組織にちょっかいをかけて抗争の引き金を引けるし、出世を目的に身代わり出頭なんてする。本当のクズな連中だ」



 俺が鎧波組に入った頃、組にはそういう人間で溢れていた。普通の人生を歩めるのに、あえて道から外れた人間たち。



「もう一つは俺や舞のような、ヤクザにならないと生きていけなかった奴。普通に生きていきたかったのに、事情があって道を外れるしかなかった人間。今組に残ってるのはほとんどがそういう連中だ。俺はそういう人たちを守りたい。なのに小澤みたいな勝手な人間がいると困るんだよ。問題を起こして警察に目を付けられたら生きていけなくなるからな」



 現在鎧波組の構成員は小澤を除いて45人。俺が入った頃はこの三倍はいた。俺のこの考えに理解を示してくれない人間は自分から離れていくか、無理矢理追い出したりしてきた。俺個人というより組長や結愛を慕っている人間も多くいるが、何にせよこの44人は俺の味方ということになる。



「……それがどうしたんですか? 何も答えになってな……」

「結愛はどうやって小澤が赤熱組と接触したって情報を手に入れたと思う?」

「それは……あ!」



 龍華が答えを得たと同時に部屋の扉が開き、40代の男二人とそれに挟まれた小澤が部屋に入ってきた。小澤の顔に傷一つないのはさすがうちの組員って感じだ。穏健派で非常に助かる。



「カシラ、こいつ赤熱組と共謀してカシラを嵌めようとしてましたぜ」

「ありがとうございます。二人は出ていってもらって大丈夫です」



 当時の組員が赤熱組にいるという情報は俺の指示でこの二人から与えたものだ。小澤が組にいた頃から所属していたこの二人から。そして小澤は意気揚々と二人を連れて敵対組織に接触したというわけだ。餌を撒いた甲斐があったというものだ。



「龍華。俺はお前の言う通りただの子どもだよ。ヤクザがよく言う任侠も仁義も正直よくわかってない。だからみんなに助けてもらうんだ。ヤクザは組なんだからさ」



 さてと……連れてこられた小澤に向き合う。ずいぶん反抗的な目だ。やはり俺が気に入らない……それに嵌められたことに激昂しているのだろう。



「助かりましたよ小澤さん。組のために身体を張ってくれた人を追い出すのは忍びないんでね。自分から裏切ってくれて本当に助かりました。思っていた通りに動いてくれて」

「……てめぇ調子こいてんじゃねぇぐぶっ!?」



 俺に掴みかかろうとした小澤の身体が遠く離れていく。視界に僅かに映ったフリルのついたスカートから舞が小澤の腹を蹴り抜いたことがわかった。



「若様、お怪我は?」

「大丈夫、ありがとう。小澤さん、今の鎧波組は穏健派ですけど、一応ヤクザなんで。ヤる時はヤるんで言動には注意してくださいね。特にこいつがいる前では」



 さてと、本当に自分から動いてくれて助かった。これで邪魔な奴らを始末できる大義名分が得られた。



「小澤さん、あなたは一応まだ鎧波組の一員です。それを引き抜こうとしたんだ。落とし前を付けるのは当然ですよね」

「お前……初めからそれが目的で……!」

「お嬢がこれから通う高校が赤熱組のシマなんでね。それより喜んでくださいよ小澤さん。あなたが望んだヤクザらしいこと、これからできますよ」



 龍華に語った通り、小澤なんて初めから敵ではない。俺の敵は結愛の人生の邪魔になる連中だけだ。

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