南c海の原潜と空母
取り合えずc国を揶揄う
南c海洋上に商船、貨客船、貨物船が整然と進行している。偶然を装い隊列を組んでいる。カガンの潜航艇とエリンの潜航艇が追尾している。技術トップのミガンの秘密兵器を使う時が来た。原潜は動かずにじっと潜んでいるだろう。探すのは不可能だ。
原潜の複雑な構造は宇宙線を随分乱すだろう。ピラミッド探査だ。あらぬ方向に飛んだ宇宙線、吸収された宇宙線。原潜はぽっかり空洞に晒されるだろう。
「ワッスゲエ」
原潜の姿を捕えた映像に歓声が上がる。
「すごいー、やったあー」
「阿保くせえ、隠れているんだってよ」
バッカアと笑い声が起きる。皆が手を取り合って笑っている。尻隠さずどころか全部隠さずだよー。
「なんか石でも投げて教えてあげたいね」
女性の声の方が多い。華やかだ。
「こんなに簡単に見つかると、10隻くらいは潜んでいるかもな」
「じゃ全部探そう」
各船10人くらいの女子男子入り混じって興奮し、声も大きくなる。
「五月蠅いわね、あなた達」
ボスらしき声がしっ責した。
水面下、エリンとカガンの船は近寄って、有線で会話を始めた。
「困ったね」
エリンが当惑している。
「泥だけで石がないよ」
呟く。石を爆破し欠片をぶつける作戦だった。
「さっきあったの引きずってこようか」
「氷山の先っぽかも知れないぞ」
「じゃ第2作戦発動」
小型タンカーが真上に止まった。原潜の乗組員はうるせえ奴だな、と思っているかな。ケーブルが降りてきた。何の調査だこんなところで。原潜の乗組員は沈めるぞ、と怒っているだろう。ミエンとカガンは協力しケーブルをスクリュウーに巻き付けた。ばっちり息が合っている。
退避してその時を待った。一瞬光った。スクリュウーは破断した。ポロッと落ちただろう。確認に戻った。c国はどうやって引き上げるかな。原潜だから時間はある。スルスルとケーブルが巻き上げられていく。
洋上では、
「集中しろ、2隻目を見つけるぞ」
北上するこの航路にはきっとまだ居る。
浮上したカガンたちに2隻目発見の報が入った。
2隻目もスクリュウー切断作戦が取られた。c国は震え上がるだろう。
原潜は案外簡単に浮上した。だけど情けなく曳航されていく原潜は哀れで死んだクジラのようだ。2隻は別々のドッグに戻った。日を置かずドッグと軍港に盛大な火柱が上がった。
c国海軍は本当に脆弱だな。南c海を守れなければ裸に等しい。ならばT湾を欲しがるのも十分にわかる。何処かの総理が言った不沈空母にしたいのだろう。c国の老人たちがそう思うのならいずれ侵攻されるだろう。原潜より空母より安心は億万倍だ。
ㇿ国の海軍基地にはエリンが一人で向かった。簡単に葬って張り合いがないようだ。そのためにc国の空母を残してある。単機で充分とエリンは言い張るが、カガンも付き合った。
真っ黒な機体が未明の軍港に忍び寄る。目を覚ますため最も後ろに居た敵機を炎上させた。驚いた敵機が慌てふためいて発進してくる。それを交互に撃ち落していく。少し残す。残された敵機が猛スピードで急上昇してくる。
パイロットが見えた。必死の形相だ。残る機は少ない。前に回って敵機の追尾を受ける。機銃を撃ってくる。機銃搭載の敵機にちょっと嬉しくなったエリン。器用に逃れ続ける。ここまでおいで、と2万mまで上昇した。敵機はB―29を忌々しく見つめるゼロ戦のようで可愛い。反転し敵機と一直線に重なる。機銃なんて蚊ほどもない。ミサイルもなんなく交わす。パイロットの必死さが伝わる。燃える瞳はいつ恐怖に変わるかな。実際は僅かな時間にエリンは色々考えていた。ミエンのシミュレーションを検証した。ほんとに若く死んでしまうなんて。目に涙が浮かぶ。視界が滲んだ。エリンの心は哀しみに沈んでいるのに指は無意識に動く。機銃がポンポンと間延びして発射された。敵機は火を噴いて掠め飛んで行った。振り向くとパイロットが放り出されていた。
残りはカガンが片付けていた。発進する機が無くなったようだ。空母、護衛艦から猛烈な弾幕が張られる。断末魔の悲鳴の様で流石に2機ともに退避した。
「凄い花火だよね、どうする?」
エリンがびっくりしている。
「弾が尽きることは有るのかな」
カガンも不安になる。ミサイルも積んでいない。だけどである。ミサイルは迎撃される。二人の35㎜機関砲が迎撃されることは無い。従って空母も護衛艦も風前の灯だ。エリンは飛行看板をハチの巣にした。艦橋を吹き飛ばした。とどめとばかり35㎜機関砲で輪切りにしていく。二つに割けた空母は船首船尾をシンクロさせて泡を吹いて消えた。気付けば軍港に艦船はいない。静かな港には油が浮き朝日に輝いた。油は処理してね、エリンが言葉を投げて作戦終了。
と言っている場合ではない。まだ2隻残っている。空母を守るため近くの基地に戦闘機を配備したようだ。艦載機と合わせれば100機を超える戦闘機と戦う羽目になる。カガンとエリンにしてみれば武者震いに腕が鳴るばかりである。でも数百発のミサイルは侮れない。地対空ミサイルを肩に担いだ砲兵が配置されるなら何人になるか分からない。飽和攻撃の国である。数千発・数万発のミサイルになるのだろうか。敵に準備させ過ぎたと反省した。しかしc国大陸の海岸に張り付いている軍事基地は全て破壊する。それは既定路線で、始まりに過ぎない。
「取り合えず空母だけは片付けようよ」
エリンが提案した。
「じゃ任せるよ」
カガンが答える。どうするのかな? 海からか空からか。
「トラオ兄ならどうするかな」
「必要無いよ」
エリンがちょっとムッとした。まあ、夜間の隠密行動になるのは目に見えている。危険はない。やはり機を選ぶだろうな。ワハイ島に比べれば一撃で済む。2隻目空母を一撃で仕留めたら3隻目空母にはどんな防衛体制をとるだろうか。エリンにはその先が楽しみだ。結果は語るほどの事も無い。