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原潜を盗む

原潜盗人稼業

 ㇿ国の海洋艦隊は衰えてさほどの脅威ではない。ただ原潜を覗いて。

 大陸の東の端にある軍港は原潜の基地でもある。常に複数の原潜が運用上密かに停泊している。1隻が浮かんでいる。宇宙から見られているが長い習慣に気にせずにいる。

 深夜、ステルス潜航艇がまさに音もなく、というのもスクリュウーでなくヒレで進んでいるからだが、それはイルカと変わりなく、原潜に近づいた。その数3艇。3艇は原潜の胴になにやら着け回っている。全て終えたのか3艇から複数の人が出てハッチ回りに取りついた。一人が合図した。

 原潜が振動し周りに波が立った。音が響いている。原潜内は音響攻撃を受けて乗組員は耳を塞いで転げ回っている。耐えられなくてハッチから我先にと飛び出してくるのに時間は掛からなかった。ほぼ出尽くしたのか間が出来た。

 ハッチ回りの6人が海から上がり原潜に進入していく。原潜内には泡を吹いた乗組員たちが転がっていた。6人はそれぞれ役割を実行する。探索するふたり。外を観察する二人。残る二人が操縦室に入っていく。古臭いボタンの操作卓に座って思案するが、古臭いということはそれぞれのボタンの意味が分かることと同義だった。ハッチを閉めた。

 原子力は起動しなくても電力で動かせる。想定内だ。エンジンを起動しスクリュウーが回った。潜航を開始し進む。原潜が奪われるなんて誰の頭にも浮かばない。潜航する原潜を不思議に思わない。原潜は徐々にスピードをあげ外海洋を目指す。暫く原潜がどうなったのか誰も分からなかった。奪われたようだと結論しても信じられない。

 原潜を奪って逃走するのはそれはㇿ国の軍人だ。乗組員の身上が調べられた。過酷な取り調べにもかかわらず原潜を奪う人は特定できない。泡を吹いて倒れた軍人の家族に同情を禁じ得ないが。ステルス潜航艇は自動操縦で回収されていた。抜かりは無いようだ。

 こうしてc国の原潜も盗まれた。同じことが2度合っても3度目にならないと気付かないものだ。故障に備えた部品としてㇿ国c国から2隻目の原潜が間を置かず消えた。


成果と次の獲物検討

 ザエギ宰相の自宅に次兄ミガン、3男カガン、長女エリンが集まった。長男トラオは外交官でァ国に赴任している。20代でァ国大使に任命しようと思っているが貴族院の承認を受けねばならず留まっている。

「みなご苦労であった。初戦としては満足だ」

 アハイ島の基地壊滅と原潜5隻の成果の褒美は何も無いようだ。世界を見れば緒に就いたに過ぎないから、子供たちも過去は振り返らず前を見ている。

「核搭載の原潜なんて余りに卑怯で気持ち悪い。世界に在ってはならない」

 父の言葉は重い。だが海に居る原潜なんて狙いようがない。

「世界には何隻あるかな。100を超えるだろうか」

「原潜保有国は世界に10か国ですよ。500隻は超えるでしょうか」

 カガンが律儀に応えた。

「では取り合えずその1%を無力化したのが現状か」

 言外に全然足りないではないか、との叱責が含まれる。それはあんまりだ。

「現状は建造中にも追いつかないな」

 世界は待ってくれない。異常すぎる。

「でも原潜ですからね。そうそう簡単にはいかない」

「そうかな。北の金じょんが、プージンに兵士10万を差し出す代わりに原潜をおねだりするかもしれない。金じょんに原潜なんて漫画でもあってはならない。漫画読んでそう思っちゃうかもしれないからな」

 笑うところだが、あのデブ腹を掻っ捌きたいと思っているから笑えない。

「人口世界一のィ国だってc国が持っているからうちも造るなんて言う。物わかりの良さそうな顔をしているが小学校の級長レヴェルだ。ィ国が持てば、c国はパ国に与えるだろう。際限がない」

 ィ国は何隻建造しただろうか。10を超えたかな。

「そんなのは叩けばいいじゃん」

 エリンが口を尖らせる。

「そうだな。問題は今海に居るやつらだ」

 開発は無駄になりそうだ。知らせてやるのが親切だ。

「大海洋には50隻位うじゃうじゃしているでしょう」

 とカガン。

「港に帰って来たのを沈めちゃえばいいじゃん」

「それはエリンに任せよう」

 父は軽く言う。エリンは得意げに兄たちを見た。

「ㇿ国の軍港を破壊したら何処に帰るかな」

 カガンが軽く皮肉った。

「そうか!」

 エリンがひらめいたようだ。

「港を全部壊しちゃえば、プカプカ浮くしか出来ない」

「そうだな、潜航しっぱなしは出来ないだろうな。洋上で補給活動をしてもかなり長時間浮上することになるだろうな」

 次兄ミガンが補足した。

「c国の軍港は何処にあるの? バレバレだよね。近いから取り合えず全部破壊しよう」

 エリンはㇿ国ではなくc国が狙いかな。

「そうだな。c国の海岸線はぜい弱だ。だから南c海がどうしても欲しいんだろう」

 みな深く考え込んだ。南c海は面倒だ。戦闘する気満々の原潜が浮かぶ。奴ら任務に燃えているだろうな。居るのは1隻だと軽く考えていたが、少なくとも2隻居なければ奴らの忠誠心は埋められないだろう。であるなら3隻か。あんな海に3隻の原潜がやる気満々で潜んでいる。しかも紛争を抱えた海だ。まあフィ国はc国が怖いから反旗は出来ない。狙っているのはァ国だ。やつら撃沈したくてウズウズしているだろう。

 ザエギ宰相の家になにかと出入りするサランさんがケーキとお茶セットを持ってきた。コーヒー、お茶、紅茶を選択できる。要望を聞きそれぞれ煎れて、今日はこれで帰ります、言い下がった。ミガンが送らなくてもいい? と聞いた。サランさんは大丈夫とにっこりした。家族だけになり、

「父上、もう少し子供を作っておくべきでしたね」

 ザエギ宰相は目を点にして驚いた。子供たちからのそんな言葉露思いもしない。

「そうだな。お前達が家族を作れば差し当たり倍になるな」

 反撃の方が強かった。ただエリンがニンマリしたのは気付かれなかった。エリンを見れば男か女かは関係ないようだ。


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