賢者さんとの雑談
翌日。
ユメのスキルを完全なものにするため、朝早くからユメとヨルカさんが屋敷を出て行った。
「ヨルカさんは心当たりがあるとは言ってたけど……こればかりはヨルカさんを信じよう」
そう思い、ユメの件はヨルカさんを信じることにする。
「さて、今日は何をしようか。リーシャとレオノーラはダンジョンに行き、ソラは教会に行ったからなぁ」
先日、俺はリーシャとレオノーラにS級ダンジョン『炎焔』で獲得したスキルスクロールをプレゼントした。
リーシャは火属性魔法を持っていたため【炎帝】のスキルを、レオノーラは支援魔法を持っていたため【支援者】のスキルスクロールを渡し、無事獲得することができた。
今日はスキルの性能を確認するため、シャーリーさんたち『シャドウ』の面々を引き連れてダンジョンへ行っている。
そしてソラは…
「【聖女】スキルを獲得したら国民の人たちの回復を辞めるなんてできないよ!だってそれだと国民の人たちを利用した形になるもん!」
そう言って教会へ向かった。
「聖女の鑑だなぁ。あ、そういえば俺の脳内に賢者がいたわ。賢者さんからも賢者の鑑と思わせること言ってほしいなぁ……チラッ……」
『はぁ。唐突な無茶振りですか』
「暇なもので」
だったらダンジョンに行けよとツッコまれそうだが、もちろん賢者さんとの会話を終えたらダンジョンへ向かう予定だ。
『分かりました。それなら、これから必ず起こるであろう未来を予言します。そして、それに対してのアドバイスも行います』
「おぉ!賢者さんっぽい!どんな未来が待ってるんだ!?」
俺はワクワクといった様子で言葉を待つ。
『解、マスターは将来、エッチのやり過ぎで死にかけます。そのため今のうちに精力剤を大量に確保しておくことをオススメします」
「うん。それ、リアルで起こりそうな未来だから。できれば楽しそうな未来を予言してほしかった」
そう言って頭を悩ませる。
なぜなら先日、リーシャとレオノーラの3人で女王陛下とお会いした時、このようなやり取りをしたから。
♢
「貴方、婚約者が4人に増えたらしいわね」
「うっ」
女王陛下の発言に言葉が詰まる。
「あ、怒ってるわけじゃないのよ。リーシャとレオノーラから大事にされてることは聞いてるから。なんでも屋敷では毎日イチャイチャしてるらしいじゃない」
「「お母様っ!」」
リーシャとレオノーラが声を上げる。
「ふふっ、貴方からキスされたとか抱きしめられたとか嬉しそうに話しているわ」
(あ、あの2人、女王陛下に全て話してるのかよ……)
イチャイチャといっても婚約者という身なので、婚約者4人を襲うことはせず、キス程度のスキンシップをしているだけだ。
「娘2人を大切にしていることは伝わってくるから婚約者が4人に増えたことに怒ってるわけじゃないの。ただ、大変だと思うから心配してるだけよ」
「大変……ですか?」
「えぇ。子供を作る時がね」
「「「っ!」」」
俺たちの顔が一瞬で赤くなる。
「知っての通り、ヴェール家はリーシャとレオノーラしかいないわ。だから、カミトには頑張ってもらわないといけないのよ」
「え、えーっと……」
「少なくとも5人ずつくらいは産んでほしいのだけど、婚約者は皆平等に愛するのならリーシャたちと同じくらい他の婚約者とも子作りする必要があるわね。頑張ってね」
「あはは……が、頑張ります」
(おい、未来の俺よ。婚約者を7人も増やしてる場合じゃないと思うんだが……)
そんなことを思った。
♢
『オススメの精力剤をお伝えしましょうか?』
「……頼む」
俺は訪れるであろう未来に恐怖を抱きつつ、賢者さんからオススメを聞いた。
賢者さんとの雑談を終え、俺はダンジョンへ向かう準備を行う。
するとメイド長であるユミルさんが話しかけてきた。
「カミト様、セリア様が来られました」
「セリアさんが?」
「はい。なんでも、カミト様に用事があるとのことです」
「ありがとうございます。すぐに向かいます」
とのことで玄関にいるセリアさんのもとへ向かう。
「おはよ、カミト」
「おはようございます、セリアさん」
セリアさんとはメルさんとS級ダンジョン『奈落』に潜って以来会っていないため、久々の再会となる。
「今日はどうしたんですか?」
「ん、今日はカミトとダンジョンに潜ろうと思った。ソラたちからカミトが一日フリーだと聞いて。私とダンジョンに潜ってくれる?」
「そうですね……」
その言葉に俺は返答を考える。
(どうする?セリアさんと潜ること自体は嫌じゃないが2人きりで潜ることになる。婚約者がいる身で婚約者でない女性と2人きりというのは……)
そう思い考え込んでいると「行って来なよ、お兄ちゃん」との言葉が聞こえてきた。
「お兄ちゃんが何を考えてるかは分かるよ。リーシャちゃんたち4人のことを考えてるんだよね。でもそれに関しては大丈夫だよ」
「ん。事前にソラたち4人からカミトを借りることに了承を得ている」
「そうだったんですね」
その言葉を聞き、俺の答えが決まる。
「では行きましょう!セリアさん!」
「ん、そうこなくっちゃ」
ということで俺とセリアさんでダンジョンに潜ることとなった。