勇者パーティー
ユメの今後について話が落ち着いたところで、俺は気になっていたことを聞く。
「ところで、勇者って女の子だったんですね」
「そうだよー。言ってなかったっけ?」
「聞いてませんね。俺、勇者は男かと思ってました」
勇者と聞いたら男を想像するのは間違っていないはずだ。
「勇者はユメちゃんくらい可愛い女の子だったよ。もちろん、聖女も可愛い女の子だったね」
「なるほど。剣聖カインは美少女3人と一緒に冒険してたのか」
「そうなるね……ってカミトくん、ウチのこと美少女って思ってたんだ。嬉しいこと言ってくれるねぇ〜」
突然ニヤニヤし始めたヨルカさんが俺の脇腹をつつきだす。
美少女3人と括ったことで必然的にヨルカさんも美少女であることを認めた発言となっているが、それは出会った時から思っていたことなので失言でもなんでもない。
「そうですね。初めて会った時からヨルカさんのことは美少女だと思いましたよ」
「ふえっ!?」
珍しくヨルカさんが慌てる。
心なしか顔も赤みを帯びている気がする。
「も、もうっ!そんな冗談は要らないよ!だってウチは今まで彼氏なんかいたことないんだから!」
「……え?マジですか?」
「魔王討伐と研究に没頭しすぎて誰も男が寄ってこなかったからね。おかげで婚期を逃して……うぅ……」
「な、なるほど……」
ヨルカさんが当時を思い出してか泣きそうな表情をしている。
どうやら本気で誰ともお付き合いをしていないようだ。
そんなヨルカさんへ思っていることを正直に伝える。
「俺は冗談抜きでヨルカさんのことを美少女だと思ってます。昔の男は見る目がないとまで思ってるくらいですよ」
「〜〜っ!そ、そういうトキメク言葉を恥ずかしがらずに言うところがカミトくんの良くないところだと思うよ!」
そんな感じで顔を赤くしながらヨルカさんが大声を上げたため、クレアたちが俺たちの話に混ざる。
「おぉー!お兄ちゃんがヨルカさんを口説いてるよ!」
「く、口説いてねぇよ!」
「ヨルカ様もカミト様の婚約者となられるのですか!?」
「ヨルカさんが居てくれたら心強いね!」
「だから俺の話を聞けよ!」
口説いた訳ではないことを皆んなが理解するまで、かなりの時間を要した。
その後、誤解を解いた俺は先ほどヨルカさんと話した事を皆んなに伝える。
「ならユメはヨルカさんと共に行動する方が良いということですね」
「あぁ。少しでも未来とは違う形にしたいからな」
「分かりました!ユメはヨルカさんと共に文字化けしたスキルを完全な形に変えてみせます!そしてカミトさんの力になってみせます!」
胸の前で握り拳を作り、気合いを入れるユメ。
「ヨルカさんもお願いします」
「任せて!っというわけで、さっそく明日からウチと出かけようと思うけど、カミトくんの臨時講師は終わったんだよね?」
「あ、はい!ダンジョンに潜った日が最終日でした!」
エンシェントドラゴンの登場やユメからの告白などで忙しかったが、無事冒険者学校での臨時講師は終えた。
「じゃあ明日から旅に出るよ!必要な物は……」
そう言って2人が明日からの行動について話し合う。
「それにしても勇者がユメちゃんのような可愛い女の子だったなんて」
「だね。私もビックリだよ」
「勇者パーティーが女の子中心のパーティーだったとは俺も驚いたぞ」
500年前の勇者パーティーはユメのような可愛い勇者とロリ巨乳である『賢者』ヨルカさん、そして貧乳美少女である『聖女』ラティファさんの美少女3人に『剣聖』カインというパーティー。
「カインは肩身の狭い思いをしただろうなぁ」
「そうだね。カインは1人だけ男の子だったから色々と困ってたみたいだよ」
俺たちの会話にユメとの会話を終えたヨルカさんが混ざる。
「何で女の子しかいないんだーって常々言ってたくらいだからね」
「そうなんですね。普通、喜ぶ展開だと思いますが」
「普通ならね。でもカインって心に決めた女性がいたから、男の仲間が欲しかったらしいよ」
その女性は俺が【剣聖】スキルを引き継いだ時に見た女性のことだろう。
つまりソフィアさんとメルさんの祖先だ。
「だから一緒に冒険しても変なことなんて起こらなかったよ。ウチらの水浴びを間違って見た時やウチらの着替えをうっかり見た時、それと服が溶けるモンスターに出会って服が溶けた時も紳士だったね」
「………」
(カインよ。お前、ラッキーな展開多くないか?)
そんなことを思った。