告白 3
「お姉ちゃん、どんな性能だったの?」
杖の性能を知り驚いているメルさんへサヤが問いかける。
「えぇ。この杖は……」
そう言ってメルさんが全員に性能を説明する。
「魔法を奪うだけでなく全ステータス3,000上昇ですか……」
「王宮でもこれほどの武器は保管してませんわ」
等々、全員が凄すぎる性能に驚いている。
そんな中、メルさんが強奪の杖を取り出して俺に差し出す。
「これはカミトの頑張りで手に入れた物よ。カミトにあげるわ」
「えっ!俺、魔法使いじゃないので要りませんよ!」
「いいえ、カミトが受け取るべきよ。だって私たちはカミトの戦いを見てるだけだったのよ。なのにレアな武器をもらうわけにはいかないわ」
断ったのに何故か引き下がらない。
「この武器は好きにしていいわよ」
そう言ってメルさんが無理やり渡してくる。
その様子を誰も止めないため、皆んなメルさんの発言に同意しているのだろう。
「そうですか。なら俺の好きにさせてもらいます」
そう言って受け取った強奪の杖を俺はメルさんへ渡す。
「……へ?」
「この杖はメルさんにプレゼントします。今まで色々とサポートしてくれたお礼です」
俺は強引にメルさんに持たせる。
「待って!私は……」
「俺の好きにしていいんですよね?なら俺はメルさんにプレゼントしたいです。メルさんにぴったりな武器なので」
この武器は魔力量の多い人が使って初めて効果を発揮できる武器だ。
そのため俺はメルさんにぴったりの武器だと思った。
「ほんと、調子の良いこと言っちゃって……」
俺を説得するのは無理だと理解したメルさんが諦めて強奪の杖を受け取る。
「ありがとう、カミト。大切に使わせてもらうわ」
「いえいえ。どういたしまして」
俺は受け取ってくれたことへ安堵しつつ笑みを見せる。
その時ふと、とある事を思い出す。
(あ、そうだ。S級ダンジョン『炎焔』で手に入れたスキルスクロールをリーシャとレオノーラにあげよう。今回みたいなイレギュラーが発生した時、強いスキルがあれば生き残る可能性が高くなるからな)
そう思い、俺はリーシャたちのもとへ向かう。
そのため…
「私、カミトに借りばっかり作ってるわ。どうやって返せばいいのよ……」
「そうだね。もう身体で返すしかないんじゃない?」
「か、身体で……ってできるわけないでしょ!」
「えぇー、お姉ちゃんの巨乳ならカミトさんも喜ぶと思うけどなぁー」
「た、確かに胸には自信あるけど……って他の方法を考えなさいっ!」
仲睦まじい姉妹喧嘩を繰り広げていたが、俺の耳には届かなかった。
リーシャとレオノーラに後ほどプレゼントがあることを伝える。
「カミト様からプレゼント!」
「ど、どんな物なのでしょうか!?」
そう言って2人が盛り上がる。
「あんまり期待はしない方がいいぞ」
「いえ!私たちはカミト様のお役に立つため、強くなる必要があります!たとえどんな物であろうとも今より強くなれるのなら喜んで受け取りますわ!」
リーシャの発言にレオノーラが頷く。
(2人にはあまり戦わせたくなかったが……やはり王女様だな)
魔王から国を守るための覚悟はできていたようで、すぐにプレゼントすれば良かったと後悔する。
「なら家に帰ったらプレゼントするよ」
「はいっ!楽しみにしてますわ!」
そう言って2人が満面の笑みを見せる。
そんな2人の頭を撫でた後、俺たちはダンジョンを脱出した。
無事ダンジョンから脱出した俺たちはメルさんと冒険者協会へ足を運ぶ。
「なるほど、10階層のフロアボスがエンシェントドラゴンだったのか」
「えぇ。カミトが倒したから怪我人とかはいないわ」
そう言ってメルさんがエンシェントドラゴンの魔石をソフィアさんに渡す。
「それで、特殊条件とはなんだ?これが分からなければ繰り返すことになるぞ」
「はい。それに関しては分かりました」
俺は賢者さんから聞いた特殊条件をソフィアさんに伝える。
「パーティーを組んでた者のレベル差か」
「はい。あの時パーティーを組んでた中で最もレベルが高かった俺と最も低かったユメさん。このレベル差がどうやら特殊条件を満たしたらしいです」
賢者さんの話によれば、高レベルの人に低レベルの人がくっつき虫の如くいることを防ぐための特殊条件とのこと。
「俺とユメさんのレベル差は4,000を超えてました。そのため、エンシェントドラゴンという強力なモンスターが出現したと思います」
「なるほど。そのことは全冒険者に伝えるようにしよう」
「お願いします」
俺たちは簡潔にソフィアさんへ伝え、冒険者学校へ戻った。
「ふぅ、まさかドラゴンが出てくるとは……」
冒険者学校へ戻った俺は誰もいない屋上でひと休みする。
しばらく休憩していると…
「カ、カミト先生。お、お話があります」
真剣な表情でユメさんが話しかけてきた。
「何かな?」
「え、えーっと……こ、今回、エンシェントドラゴンが現れた原因はユメにあると聞きました」
誰も「ユメさんのせい」とは言っていないが、責任を感じやすいユメさんの性格上、そう捉えてしまってもおかしくない。
「そんなことないよ。俺のせいでもあるんだから」
「いいえ!ユメのせいです!」
俺の言葉を大きな声で否定する。
「ユメは弱い。どれだけ努力してもスキルがないからモンスターを倒せない。だから今回もユメは皆さんに助けてもらってばかりでした」
ゴブリンやボブゴブリンをユメさん1人で倒すことはできるが、ダンジョン内の移動中に現れたモンスターはリーシャたちがほとんど倒していた。
理由としては1対1の状況なら負けることはないが、ユメさんが複数のモンスターを相手にするとなれば身の危険があるからだ。
「ユメは強くなりたい。カミト先生のように強くなりたいです」
「うん。その気持ちがあるならユメさんは強くなれるよ」
本心で思っている言葉をユメさんに告げる。
すると突然、先ほどまでの勢いがなくなり、急にモジモジし始めた。
「そ、その……なので……ユ、ユメのファーストキスをもらってくださいっ!」
「………え?」
突然の告白に固まる俺だった。