冒険者学校へ 5
俺はユメさんを鑑定する。
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名前:ユメ•アルジョンテ
年齢:16
レベル:25
筋力:54
器用:58
耐久:50
俊敏:63
魔力:75
知力:61
スキル:【身体強化 Lv.MAX】※使用不可
【剣術 Lv.MAX】※使用不可
【閃光】※使用不可
【???の呪い〈封〉】
称号:〈呪いを所持する者 Lv.MAX〉
装備:訓練用の長剣
訓練用の服
訓練用の靴
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【閃光】※使用不可
呪いにより、現在は使用できない。
雷を全身に纏うことができ、纏った際は異次元のスピードと異次元の攻撃力を得ることができる。また全ステータスが3,000上昇する。
スキル所持者の魔力量により、威力が変わる。
【???の呪い〈封〉】
???が使用した呪いの1つで【#&¥%$?】というスキルが封印され上書きされている。
このスキル所持者はスキル、称号が封印され使えなくなる。
術師の死亡や術師自身が解除する、もしくは心から愛する人へのキスで解呪される。ただし、キスされた者もスキル所持者のことを心から愛していなければならない。
〈呪いを所持する者 Lv.MAX〉
非常に強力な呪いを受けてから15年以上経過した者が獲得できる称号。
呪いを克服したら、ものすごく良いことが起こる。
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(なるほど。案の定、呪いだったか)
想像通りの鑑定結果となる。
「ど、どうでしたか?」
鑑定の終わった俺にユメさんが恐る恐る聞いてくる。
そんなユメさんに俺は鑑定結果を素直に話す。
「呪い……ですか」
「あぁ。おそらくユメさんが産まれて間もないころ、もしくは産まれた時にはすでに呪いを持っていたんだろう」
〈呪いを所持する者〉に15年以上経過した者と記されていた。
ユメさんは現在16歳なので、0歳〜1歳の頃に受けたことになる。
「そ、そして解呪方法は……あ、愛する人へのキス……ですか」
そう言ってユメさんが頬を染める。
「キス……キスですか……キスしないと……」
そして「キス」という単語をひたすら復唱する。
(ユメさん?術師をどうにかするという方法もあるんだよ?)
ユメさんがキスしたくてウズウズしてる人みたいになっている。
そんなユメさんを放置して、気になったことを賢者さんに聞く。
(賢者さん、呪いをかけた人が「???」になってるんだけど、賢者さんの鑑定でも分からなかったってこと?)
『解、鑑定不能でした』
(マジか。ということは術師の居場所も分からない?)
『解、探知不可です』
(賢者さんの鑑定でも分からないのか。初めてのケースだな)
賢者さんでも鑑定不能だったことに驚く。
『先程、「俺の鑑定スキルはかなり優秀だから」と褒めていただきましたが期待に応えることができず申し訳ありません』
心なしか賢者さんの声に元気がない気がする。
(気にしなくていいよ。いつも賢者さんには助けてもらってるんだから。それに術師をどうにかする方法以外にも解呪方法はあるんだ。いつもは賢者さん頼り過ぎてたから今回は俺が何とかするよ)
『トクンっ……』
(なんだよ、今の「トクンっ」て)
『いえ、並の女性なら恋に堕ちてしまいそうなので『恋に堕ちました』という擬音語でも付けてみようかと』
(実はあまりショックを受けてないだろ)
そんな賢者さんに呆れつつ俺は再び解呪方法を模索する。
(術師をどうにかする方法はない。ってことは心から愛する人にキスしないと解呪できないのか)
という結論に至る。
そのため、俺はユメさんに呪いを解く方法がキスしかないということを伝える。
「と、とととということは……」
そこまで言って俺の顔を凝視するユメさん。
「ん?どうしたんだ?」
「い、いえ!な、なんでもありません!」
そう言ってユメさんが目を逸らす。
俺は不思議に思いながらも、気になっていたことを聞く。
「スキルが使えない原因が呪いってことには気づいてなかったのか?」
「は、はい。ユメにはスキルが4つあり、戦闘系スキルが3つあることは知ってました。でも、最後の1つは上手く鑑定できませんでした」
どうやら今までは【???の呪い〈封〉】を鑑定で知ることができなかったらしい。
その点、賢者さんの鑑定では知ることができたため、改めて賢者さんの優秀さに感謝する。
(さすが賢者さん。頼りになるよ)
『ありがとうございます』
今度は賢者さんが嬉しそうな声色で返事をしてくれる。
「キスでしか解呪できないとなると今すぐ解呪することは難しい。俺にできることなどないとは思うが、困ったことがあったら遠慮なく言ってくれ。俺でよければいつでも手伝うよ」
「で、でしたら……その……あぅ……」
すると突然モジモジし始める。
「ど、どうした?」
「………な、なんでもありません……はぁ……」
「……?なら訓練を始めるぞ」
俺はユメさんの謎の行動を理解できなかったが、深くは考えずに個別訓練をしているサヤとシャルを呼びに行く。
そのため…
「さすがに婚約者のいるカミト先生にはお願いできませんよね……」
との呟きが俺の耳に届くことはなかった。