偶然の一致
異常すぎて何度も確認するが、俺のステータスは変わらない。
(ステータスの上昇値ヤバ。しかも手に入れた称号ヤバすぎ)
レベル5,000のブラックドラゴンと戦う前はレベル40だったので上昇値がヤバいのは理解できるが、上昇しすぎだと思う。
そのためソフィアさんが言った化け物という言葉を否定できない。
「どうやらソラの言ってることは正しいようだな」
俺が自分のステータスを確認している間にソラさんのステータスも鑑定したようで、俺の上昇値と比べソラさんはレベルが上昇してないことから俺が1人で討伐したと判断したのだろう。
「ま、マジかよ。ってことはアイツ、ランクSのモンスターを1人で討伐できる力を持ってんのかよ……」
「リブロの街からS級冒険者が誕生する日が来るかもしれねぇ!」
会長が納得する言葉を発したことで、俺が1人でブラックドラゴンを討伐したことを周囲が認知する。
「ルーリエ。ブラックドラゴンの魔石を換金してくれ。それと、カミトくんとソラは隠し通路のことをルーリエに説明し、誰も隠し通路に行かないようにしろ」
「わかりました!」
ルーリエさんは返事をして作業に取り掛かる。
「あ、そうだ。カミトくんってE級冒険者だったよな?」
「はい。スライムしか倒してなかったのでE級冒険者ですね」
俺は3年間冒険者をしているが、最低ランクであるE級冒険者からランクが上がったことはなかった。
「そうか。なら今度、アタシの独断と偏見でカミトくんをS級冒険者にするから」
「……はい?」
「色々と問題はあると思うが、カミトくんのステータスはS級冒険者並みだ。よって、今度、王都で6人目のS級冒険者が現れたことを発表する。おめでとう、カミトくん」
「えぇーっ!」
今度は俺の声が支部内に響き渡る。
「あと、リブロでやることが無くなったから明日王都へ帰る予定だ。カミトくんも明日リブロを発つことになるが移住の準備はできてるか?」
「準備はできてますが……マジで俺、S級冒険者になるんですか?」
「当たり前だ。そのステータスはS級冒険者レベルなんだ。胸を張ってS級冒険者になってくれ」
どうやらソフィアさんの意思は固いようだ。
(まぁ、ランクSのモンスターであるドラゴンを倒すことはできたし、ステータスは化け物と言われてもおかしくないステータスなんだ)
そう思い、S級冒険者になることを拒まず受け入れる。
「ソラは『希望の花』を手に入れることができたか?」
「はい!カミトくんが1つ譲ってくれました!」
そう言ってソラさんは『希望の花』をソフィアさんに見せる。
「ホントか!?これでセリアを救うことができるぞ!ありがとう、カミトくん!」
「いえいえ!これでソラさんのリーダーを救ってください!」
『希望の花』を見つけたことにソフィアさんからも感謝される。
「ならリブロにいる理由はないな。ソラも明日帰るぞ」
「はい!帰りの護衛も任せてください!」
「えっ!ソラさんの護衛相手ってソフィアさんだったの!?」
「うん!そうだよー!」
ソラさんはある人の護衛でリブロに来たと言っていた。
(まさか護衛相手がソフィアさんだったとは……)
「本当はセリアも一緒に護衛してくれるはずだったんだが、王都出発の数日前にランクAのモンスターであるドクサソリの攻撃でアタシの護衛なんかできる状態じゃなくなってな。護衛がソラだけになったんだ」
「あ、そうなん……あれ?なんかこの話、アムネシアさんから聞いた話に似てるぞ。孫がドクサソリの攻撃で動ける状態じゃないって部分が……」
俺はふと思ったことを口にする。
「アムネシアさん!?それって多分、リブロにいるセリアさんの祖母だよ!」
すると、俺の話を聞いたソラさんが声を上げる。
詳しく聞くと、今回、ソフィアさんがリブロに行くこととなり、強い冒険者の中から護衛してくれる人を募った。
その時、A級冒険者であるセリアさんがリブロにいる祖母に会うことができるからと言って護衛を引き受け、セリアさんとパーティーを組んでいるソラさんも同行する予定だった。
しかし、セリアさんがドクサソリの攻撃によって寝たきりとなり、セリアさん抜きでリブロに来たとのこと。
「私、セリアさんからアムネシアさんのことを聞いてたんだ!だから、カミトくんが言うアムネシアさんはセリアさんのお婆ちゃんだと思う!」
「えーっと……ってことは、アムネシアさんのお孫さんはソラさんのリーダーで、アムネシアさんとソラさんが助けたい人はセリアさんだったと」
「そうなるね!」
「………」
(そんな偶然、普通なくね?)
そんなことを思う。
「なら、ソラさんに渡した『希望の花』だけで物事が解決しそうだな」
「まだセリアさんの祖母が、カミトくんの話に出てくるアムネシアさんかはわからないけどね」
「あ、そっか。確認しないとダメか」
「うん。だから私もアムネシアさんの下へカミトくんと一緒に行っていいかな?」
「いいけど……俺だけでもいいんだぞ?」
「ううん。私のせいでセリアさんは今も寝込んでるから、セリアさんのお婆ちゃんなら一言謝りに行かないと」
ソラさんは真剣な表情で言う。
(ものすごく責任を感じてるんだな)
「そうか。ならさっそく会いに行こうか。明日、俺も王都へ出発することになりそうだから」
「うん!」
俺はソラさんに確認を取り、2人でアムネシアさんのもとへ向かうこととなる。
「2人とも、明日の午前中にはリブロを出発する予定だから、そのつもりで準備しててくれ」
「「分かりました!」」
俺とソラさんはソフィアさんへ返事をしてリブロ支部を出た。