会長の昔話 1
その後、クレアと晩御飯を食べながら今日一日の出来事を話す。
スキルが覚醒したことやラジハルと決闘したこと、冒険者協会の会長によって助けられたことを話す。
「えっ!昔お兄ちゃんを励ましてくれた女性が冒険者協会の会長だったの!?」
「あぁ、ビックリしたよ」
「そんなことってあるんだね。それで明日、会長さんから話をするんだ」
「あぁ。会長には色々と聞きたいことがあるからな。ちょっと行ってくるよ。クレアは明日も学校が休みなんだろ?」
「うん!だから家で勉強する予定!」
クレアは【大商人】というレアスキルを持っていることに加え、勉強熱心だ。
(もしかしたら将来は俺より稼ぐかもしれないな)
そんなことを思いつつクレアと過ごした。
翌日、俺はリブロ支部を訪れる。
「あ、カミトさん!」
俺がリブロ支部へ入ると仕事中のルーリエさんが出迎えてくれた。
「昨日はお疲れ様でした!昨日のカミトさん、とてもカッコ良かったですよ!」
「っ!あ、ありがとうございます」
リブロ支部で一番綺麗な女性であるルーリエさんから褒められ、照れながら返答する。
「会長は到着されておりますので部屋まで案内しますね」
とのことでルーリエさんについていく。
その道中…
「あ、カミトくん!昨日はカッコよかったよ!」
「B級冒険者のラジハルを圧倒するなんて強いね!」
「ラジハルをボコボコしたところ、見ててスッキリしたよ!」
と、たくさんの受付嬢から声をかけてもらう。
「皆さんがいつも助けてくれたから冒険者を辞めず強くなれました。本当にありがとうございます」
いい機会なので俺は頭を下げて受付の女の子たちへ日頃の感謝を伝える。
すると俺の言葉を聞いて受付嬢たちがポカーンと固まる。
そして突然集まってボソボソと話し始めた。
「カミトくんってラジハルよりも強い実力者で性格は妹想いの優しいお兄ちゃん。そして顔もカッコいいから……もしかしてかなりの優良物件?」
「た、確かにっ!」
「だ、ダメです!カミトさんは私が担当してます!皆んなには渡しませんよ!」
「ルーリエさんだけズルいです!」
「そうだそうだー!」
「だ、ダメなものはダメです!」
突然大声を出したルーリエさんが集まっていた輪から抜け出し俺のもとへ来て背中を押す。
「ル、ルーリエさん!?」
「ほら行きますよ、カミトさん!会長が待ってます!」
「わ、分かりました」
ルーリエさんに背中を押された俺は振り返って受付嬢たちへ手を振り歩き出す。
「カ、カミトさんは私がずっと担当してきたから他の人に譲りたくないだけです。だから先程の発言はカミトさんを独占したいとかではないですからね」
「……?そうですね。これからもルーリエさんに担当してほしいと俺は思ってますよ」
そう言って笑顔を向ける。
「っ!そ、それならいいです」
“ぷいっ!”と顔を逸らしたルーリエさんが顔を赤くしながら歩いていく。
しばらく歩くと一つの部屋に辿り着き、ルーリエさんに続いて部屋に入る。
「お、来たな。おはよう、カミトくん」
「おはようございます」
挨拶をした後、会長に勧められてソファーに腰掛ける。
近くにはルーリエさんが待機している。
「まずは自己紹介からだな。アタシはソフィア•ルージュ。冒険者協会の会長を務めている。私生活では娘が2人いるぞ」
「えっ!娘さんがいるんですか!?」
「な、何を驚いてるんだ?」
「い、いえ。冒険者協会の会長にもなれば忙しくて結婚なんてしてないかと勝手に思ってまして」
「こう見えて私は40歳超えてる叔母さんだからな。結婚くらいしてるぞ」
(マ、マジかよ。この見た目で40歳越え?俺、30代前半かと思ってたわ)
自己紹介の段階で衝撃を受ける。
「聞きたいことは山ほどあるだろうが、まず私の話を聞いてほしい。実はカミトくんはカインという男に選ばれたんだ」
その前置きからソフィアさんは話し始める。
「昔、魔王を倒したメンバーの1人にカインという男がいた」
「あ、カインなら知ってますよ」
「ホントか?」
「はい。実はスキルが覚醒した時にカインの記憶……というか生き様が流れてきたんです」
俺はその時流れてきた記憶を簡単に説明する。
カインが魔王を倒したメンバーの1人だということ。
剣の達人で『剣聖』と呼ばれていたこと。
そして若くして病によって亡くなったこと。
「カインが亡くなった時、近くに1人の女性がいました。そしてカインは亡くなる直前、その人に『お前の子孫は俺のスキルを引き継いだ者を探せ』とお願いしてました」
そこで俺は一拍置く。
「俺はカインがお願いした女性の子孫がソフィアさんだと思ってます。そして、どんな方法か分かりませんが、カインの能力を引き継いだ俺を見つけ、6年前、俺に話しかけたと思ってます。どうですか?」
俺は自分の考えをソフィアさんに伝える。
「そうだ。アタシの祖先はカインからのお願いを叶えるため、この時をずっと待っていた」
どうやら俺の考えは当たっていたようだ。
「どんな方法で見つけたんですか?」
「あぁ。それを話す前にアタシも少し昔話をしよう」
そのような前置きの後、ソフィアさんが話し始めた。