間話 カミトの誕生日 2
俺の誕生日を祝うため、何故か婚約者とクレアがメイド服を着ていた。
そして今からはリーシャとレオノーラの時間らしく、2人が俺の側に来る。
「朝食のご用意ができておりますわ、ご主人様」
「ご主人様!?」
「はいっ!今日のわたくし達は婚約者ではなくご主人様のメイドです!」
「なのでカミト様のことはご主人様とお呼びしますわ!」
「な、なるほど…」
よく分からないが2人の迫力に押され、渋々納得する。
「では朝食をお持ちします」
そう言ってレオノーラがこの場から立ち去る。
その間、リーシャが俺をテーブルまで案内し、食事の準備を行う。
「お姉様、お持ちしました」
「ありがとう、レオノーラ」
レオノーラが丁寧に盛り付けられた料理を持ってくる。
「お、珍しいな。今日はパンじゃないのか」
いつも朝はパンなので、ご飯に汁物、卵料理、そして焼き魚が運ばれてきたことに驚く。
「とても美味しそうだ。何かあったのか?」
俺の疑問に2人が恥ずかしそうに頬を染める。
「そ、その……わ、わたくしとレオノーラで作りました」
「えっ!2人が作ったの!?」
「は、はい。お姉様と協力して……」
「ご主人様のお口に合えばよろしいのですが……」
手料理を食べてもらうのが恥ずかしいのか、2人とも顔を俯かせ、自信なさそうに言う。
「大丈夫だよ。良い匂いがするし、とても美味しそうだ」
2人に見た目の感想を伝え、「いただきます」と言ってから卵焼きを食べる。
「んー!美味しい!」
「ほ、本当ですか!?」
「あぁ。とても美味しいよ」
「あ、ありがとうございます……」
どうやらリーシャが作ったようで、俺の感想に嬉しそうな顔を見せる。
「じゃあ次は焼き魚をいただくよ」
俺は丁寧に骨が取られた魚を“パクっ”と食べる。
「おぉ!これも美味しいよ!」
「良かったぁ……」
そう言ってレオノーラが嬉しそうに微笑む。
2人の料理は俺好みの味付けになっており、食べる手が止まらない。
(2人とも料理を頑張ってたからな)
王女ということで料理とは無縁の生活を送ってきた2人だが、この屋敷に来てから空き時間に料理の勉強をしていた。
「ご主人様にわたくし達の手料理を食べていただきたかったので、今日はとても良い1日ですわ」
「私もです。大好きな方に手料理を食べていただくことがこんなにも嬉しいとは思いませんでした」
そんなことを話しながら俺が食べる様子を嬉しそうに見ている。
それを見て俺は一度食べるのをやめ、2人の方を見る。
「2人は何時まで俺に奉仕してくれるの?」
「えーっと、あと3時間くらいですわ」
「なら、俺に料理を振る舞うだけで満足してもらうのは困るな。だって可愛いメイドからのご奉仕が食事だけなんて残念だからな。もう少し、俺に付き合ってくれるか?」
俺の提案に2人が“パーっと”笑顔となる。
そして…
「「はいっ!ご一緒させていただきます!ご主人様っ!」」
嬉しそうに俺の両腕に抱きついた。
その後、約3時間ほどリーシャたちとの時間を満喫する。
メイド服を着たリーシャたちだったが、結局散歩や世間話などであっという間に時間が過ぎ、メイドらしいことは何一つしなかった。
そのため、ご主人様と呼ぶメイド服を着たリーシャたちと普段通りに過ごしただけとなった。
(まぁ2人が満足そうだったからいいか。俺も楽しかったし)
そんなことを思いつつ、次の目的地である食堂へ向かう。
どうやら次はメイド服を着たユメとクレアが奉仕してくれるらしい。
俺は“ガチャっ”と食堂の扉を開ける。
すると…
「お、おかえりなさいませ。ご、ご主人様……」
「おかえりー!ご主人様っ!」
少し頬を染め、恥ずかしそうに出迎えるユメと、呼び方が「お兄ちゃん」から「ご主人様」に変わっただけのクレアが出迎えてくれた。
「ねぇねぇ、ご主人様っ!私たちのメイド服は似合ってるー?」
「ど、どうでしょうか。ご主人様?」
その場で可愛く“クルッ”と一回転するクレアと、恥ずかしそうにモジモジとしながら聞いてくるユメ。
「あぁ。2人とも、とても似合ってて可愛いよ」
「やった!」
「あ、ありがとうございます……」
お世辞抜きで2人のメイド服は似合っており、見ているだけで癒される。
そのためジーッと2人のことを見ていると、俺の視線に耐えられなくなったユメが動き出す。
「で、ではユメはお食事をお持ちします!」
そう言ってスタスタと立ち去る。
その姿を見た後、俺はクレアに問いかける。
「それでユメとクレアは何をしてくれるんだ?」
「もちろん、ここは食堂だからね!お兄ちゃん……じゃなかった。ご主人様へ昼食を提供するんだよ!ユメちゃんが!」
「あ、クレアは何もしないんだ」
「私の手料理よりもユメちゃんの手料理の方が食べたいかなーって!ユメちゃんの手料理、とっても美味しいし!」
「そんなことはないぞ。クレアの手料理もユメに負けないくらい美味しいから」
俺たちがリブロに住んでいた頃、貧乏な生活をしていた俺たちはアムネシアさんからのお裾分けとクレアの自炊で生活していた。
アムネシアさんから料理を学んでいたこともあったため、クレアの料理の腕は自慢できるほどだ。
「だから時々でいいから作ってくれると嬉しいな」
そう言ってクレアに笑いかけると、クレア満面の笑みを浮かべる。
「うんっ!お兄ちゃんが大好きだった料理を作るね!」
ご主人様呼びではなくなったが、クレアの可愛い笑顔を見て指摘するのをやめた。




