研究室へ 2
メアリーさんの呟きに心の中で返答していると、マツリさんから話しかけられる。
「それでカミトさんはヨルカ様を紹介するために私と話をしたかったの?」
「それもありますが要件は他にあります」
そう前置きした後、俺はマツリさんのもとを訪れた理由を話す。
ヨルカさんの伝手を使い、マツリさん経由でダンジョンから帰還できる魔道具を買いに来たこと。
魔王が近々復活するため、マツリさんを通してエルフ族にも協力を仰ぎたいと思っていること。
その2点を話す。
「魔王が復活するなんて……」
「大ニュースですよ!お母様!」
ヨルカさんからの話もあり、俺たちの言葉を疑わず真剣な表情となる2人。
「未来では奇襲によってエルザリア王国は滅んだのですね」
「うん。時期はもっと先だったと思うけど、何にも対策をしてなかったからエルザリア王国は対抗できず滅んでしまった」
ヨルカさんが見た未来では、この近くにあるS級ダンジョン『飛竜』から数多のドラゴンが溢れ出し、なす術なく滅んだようだ。
「昔、ダンジョン崩壊が起こってから定期的にドラゴンの討伐は行っております。ですが再度話し合った方が良さそうですね」
「うん。それでウチらは魔王討伐のために動いてるんだ。できればエルフ族とも足並みを揃えたいのだけど、どうかな?」
「そうですね。それに関しては私の方から動いてみます。ですが足並みを揃えるのは難しいと思います」
そう言ってマツリさんが理由を話す。
「私は500年前、ヨルカ様とお会いしているためヨルカ様のお話を信じることができます。ですが今は国のトップは私の姪。兄の娘になるため、ヨルカ様とは直接お会いしたことがありません」
ヨルカさんがドラゴンを撃退した時はマツリさんのお父さんが国を納めており、亡くなった後は兄が納めていた。
そして兄が亡くなったため、現在は兄の娘であるヒナが女王陛下として国を納めている。
ちなみに現在生きているエルフ族の中で勇者パーティーを見たことがあるのはマツリさん含め、数少ないらしい。
「ヒナ様はヨルカ様とお会いしたことがありません。私の話を無碍にすることはありませんが、説得は難しいと思います。ヒナ様の側近たちもヨルカ様のことを知りませんので」
「なるほど……」
その発言に納得してしまう。
「とりあえずはマツリちゃん次第ってことだね」
「頑張ってみますので報告をお待ちください」
とのことで魔王の件はマツリさんにお願いする。
「じゃあ次にダンジョンから帰還できる魔道具なんだけど、ありそう?」
「はい。それならコチラにたくさんあります。メアリー」
「少々お待ちください」
マツリさんがメアリーに指示を出し、メアリーさんが一つの箱を持ってくる。
「コチラがダンジョンから帰還できる魔道具です。この石を叩き割ると脱出することができます」
「ありがとうございます!」
見たところ大量にあるため、これで目的の一つは達成された。
「いくらになりますか?」
「無料でいいわ。魔王討伐のために動いてくれるのだから」
「いいの!?ありがとー!」
「ありがとうございます!」
ヨルカさんと俺は感謝を告げ、頭を下げる。
「しばらく滞在するのよね?」
「はい。マツリさんが女王陛下に話をされるまではエルザリア王国に残る予定です」
「分かったわ。ならそれまで私たちの家に泊まっていいわ」
「えっ!いいんですか?」
「4人くらい問題ないわ。それにヨルカ様とは色々と話したいこともあるから」
「ありがとうございます!」
とのことで、俺たちはマツリさんの家にお邪魔させてもらうことになった。