魔道具お披露目会 1
「と、とにかく今はマツリさんの情報収集です!はやく行きますよ!」
そう言って街中を歩き出す。
その後、しばらく情報収集件、散策を楽しんだ俺たちは今日から泊まる宿屋で話し合いを行った。
「情報をまとめるとマツリさんはまだ生きてて、この国の宮廷魔導士の長を勤めてるようですね」
「だね。立派になったよ」
ヨルカさんがお婆ちゃん目線のコメントをしている。
前国王陛下の娘だがマツリさんには兄がいたため、王様にならず、宮廷魔導士長をしているようだ。
「3日後、魔道具のお披露目会という形で広場に顔を見せます。そのタイミングを狙って俺たちは接触を図ろうと思います」
「おっけー!ならそれまで皆んなでゆっくりしよー!」
とのことで3日間は遊び尽くすことにする。
「エルザリア王国は広いからね!3日で全てを回れるよう作戦立てて計画的に行くよ!」
目覚めてから王都の街並みしか知らないヨルカさんはエルザリア王国の散策が楽しみらしく、俺たち以上に張り切ってる。
そんなヨルカさんに俺たち3人は笑みを浮かべ、作戦会議を行った。
3日間、エルザリア王国を満喫した俺たちは魔道具のお披露目会が開かれる広場にやってきた。
「おぉ、すごい人だね」
「年に2回開かれる大きなイベントのようですね。屋台までありますよ」
周囲には屋台がズラーッと並んでおり、お披露目会を行うため大きなステージまで用意されていた。
そのため人混みがすごくみんなと逸れそうなので、俺はソラとユメの手を“パシっ!”と取る。
「逸れたら困るからな」
「っ!うんっ!」
「はいっ!」
そう言って満面の笑みを浮かべた2人が俺の腕に抱きついてくる。
「あのぉ。これだと歩きにくいんだけど……」
「だーめ!逸れないようにするためだから我慢してね!」
「そうです!ユメたちはカミトさんと逸れないために抱きついてるだけですから!」
嬉しそうな顔で俺に体を寄せてくる2人。
「カミトくん、ウチとは逸れてもいいのー?ウチ、両手が空いたままなんだけどー?」
「このタイミングで変なこと言わないでください!」
俺の困った表情に満足したのか「あははっ!冗談冗談」と言って笑う。
そんな会話をしていると“パンっ!パンっ!”と大きな音が響き渡った。
「さぁ、始まりました!魔道具お披露目会!」
「始まりましたよ!」
テンションの高いユメがステージに向けて指を指す。
「今日は宮廷魔導士の方々が日々の研究成果を発表する会!良い物を見かけたら是非買って下さいね!」
司会を務める女性エルフが今から行われる会を紹介しつつ、さっそく進行していく。
「トップバッターは宮廷魔導士長の娘!メアリーさんです!」
「宮廷魔導士長の娘!?ってことはマツリさんの娘さん!?」
俺は目を見開いてステージに注目する。
「こんにちはー!」
そう言いながら現れた女性に俺は目を奪われる。
腰まで伸びた綺麗な銀髪にスラっとした体型とアンバランスな巨乳。
この国に来てたくさんの女性エルフを見てきたが、ぶっち切りで美しい女性だ。
「おぉ!マツリちゃんそっくり!そっかー、娘がいるのかー」
ヨルカさんがマツリさんの娘であるメアリーさんを見て笑みを浮かべる。
「すっごく綺麗な女性です!」
「エルフ族は美談美女が多いって聞いてたけどメアリーさんは桁違いだね」
どうやら俺と同じことをユメたちも思っているようだ。
「メアリーさんは今回、どのような魔道具を紹介されるのですか?」
「はいっ!私が紹介したい魔道具はコチラです!」
そう言ってメアリーさんが小さなイヤリングを見せる。
「コチラは遠距離でも魔力を使用すればイヤリングを付けている方へ念話を送る事ができます!」
「「「おぉ!」」」
周囲の観客の声が大きくなる。
「そ、そんな魔道具作れるの!?」
「すごいね。ウチ、念話スキルを持ってないから作れないけど、作ろうとした知り合いは途中で断念したはず。かなり難しい魔道具だよ」
「ってなるとメアリーさんは凄い魔道具を作製したことになりますね」
「うん。きっと並々ならぬ努力をしたんだと思うよ」
賢者であるヨルカさんが言うんだ。
完成までかなりの努力をしてきたのだろう。
「では実際に使ってみます!どなたか私の声が届いたか確認してほしいのですが……あっ!そこのモテ男くん!」
メアリーさんが俺の方を向いて手を指す。
「………俺ですか?」
「はいっ!可愛い女の子2人とデートしている人間族の君です!」
両側からソラとユメに抱きつかれている状況に加え、人間族となれば俺しかいない。
「見たところ観光で来られたみたいですので、私が事前に仕込んでないと周りの方たちには理解されやすいと思いました。ご迷惑でなければ協力していただきたいのですが……」
「それくらいなら協力しますよ。俺もメアリーさんの魔道具に興味ありますから」
「ありがとうございます!」
とのことで俺はメアリーさんの実験に付き合うこととなった。




