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勇者リリィの記憶 4

「さて、邪神の説明はこれくらいにするわ。本題はここからよ」


 そう言って神様が語り出す。


「このままだと魔王は約500年後に復活するわ。邪神の手を借りてね」

「500年後……やっぱり封印は解かれるのですね」

「えぇ。先程、邪神がダンジョンを利用して魔王へ絶え間なく魔力を与えるシステムを作ったわ」


 そのシステムとはダンジョン内で誰かが死ぬと、その者の魔力を魔王へ送り込むこと。


「このシステムによって魔王復活が早まり、強化された状態で復活することになるわ。だから私も魔王討伐に力を貸すことにしたの」


 本来なら神様は人間全員にスキルを与え、勇者に聖剣エクスカリバーを与えることしか手助けはしないが、今回は邪神が介入したので神様も手伝ってくれるようだ。


「貴女のスキルを500年後の誰かに与えようと思うの」

「勇者を生み出すのですね」

「えぇ。しかも今回は勇者リリィが生きた経験をそのまま引き継いでもらう。つまり、スキルを手に入れた瞬間から勇者リリィの強さを手に入れてる状態になるわ。そこから研鑽を積んでもらい、勇者リリィ以上の強さを手に入れて魔王に勝ってもらうわ」

「なるほど……」


 私がここまで強くなるのに約8年かかった。

 それを省略できるとなれば私以上に強くなれるのは確定案件。

 そうなれば魔王にも勝てるかもしれない。


「分かりました。是非、お願いします」

「えぇ、任せて」


 私は神様からのお願いを引き受けてスキルを500年後の誰かに引き継いでもらう。

 その時、ふとお願いしたいことが1つ浮かぶ。


「あのぉ、神様。1つだけお願いがあるのですがよろしいでしょうか?」

「何かしら?」

「私、スキルを引き継いだ人には幸せになってほしいと思ってます。魔王討伐だけでなく恋をしてゆくゆくは好きな人と結婚してほしいです。なので私が大好きだった剣聖カインのような、カッコよくて優しい方と出会えるよう調整することはできますか?」

「そうね……」


 私のお願いに神様が考え込む。


「いいわ。可能な限り叶えてあげる」

「っ!ありがとうございます!」


 私は勢いよく頭を下げる。


「魔王のことは私に任せてゆっくり休んでいいわよ。今までお疲れ様」


 こうして神様との会話は終了した。




〜カミト視点〜


「これが聖剣エクスカリバーに触れた時、頭に流れてきました」


 ユメが勇者リリィの記憶を丁寧に語る。


「なるほど。ヨルカさんがユメにリリィさんのスキルを引き継がせてないのなら誰が引き継がせたのだろうと思ってたが、神様が引き継がせたのか」

「はい。ですが、邪神のせいで継承に失敗したようです。それが【???の呪い〈封〉】です。魔法をかけたタイミングはリリィさんが鎖で縛られた時だと思います」


 ユメは【???の呪い〈封〉】によって産まれながらにスキルが使えなかった。


「じゃあ【???の呪い〈封〉】を発動したのは邪神なのか」

「はい。それによりスキルを手に入れたときにリリィさんの記憶を引き継ぐことができず、私はスキルが使えないだけの人間となってしまいました」


 ユメは【???の呪い〈封〉】がキスによって解除された時、【#&¥%$?】という文字化けスキルに変化した。

 そして聖剣エクスカリバーに触れたことでリリィの記憶が蘇り、無事【#&¥%$?】スキルが【勇者】スキルへと変化した。


「本来ならスキル獲得時、もしくは産まれながらに勇者リリィの記憶が蘇り、【勇者】スキルを獲得するはずだったが邪神の封印のせいで記憶を思い出すことができず、封印を解いたあと、文字化けスキルとなったのか」

「おそらくは」


 今までの話をまとめ、ユメの身に何が起こったのかを把握する。


「邪神のことはリリィちゃんが死ぬ間際に言ってたんだ。でも未来視で未来を確認した時、一度も邪神は現れなかったから皆んなには伝えなかった。実際、邪神のことは何も分からなかったからね。不確かな情報で混乱させるのは悪いと思ったから」


 ヨルカさんが邪神について話さなかったことを申し訳なさそうに話す。


「ヨルカさんの考えは正しいので伝えなかったことは気にしなくていいですよ」

「うんうん!」

「となると邪神とも戦いになる可能性もありますわ」

「あぁ。俺たちは今以上に強くならないと」


 俺の言葉に皆んなが頷く。


「頼もしいね。ちなみに邪神によって強化された魔王はレベル10万だったから、まだまだ強くならないといけないけどね」

「10万……」


 俺のレベルは6,000弱なので全然敵わない。


「魔王と戦う時のウチらは皆んなレベル5万を超えてた。リリィちゃんなんて8万もあったからね。それでも封印するのがやっとだった」

「手強いですね」

「うん。今回の復活も邪神が魔王を強化するみたいだから前回同様レベル10万、もしくはそれ以上の可能性もある」

「もっとレベル上げに勤しんだ方が良さそうですね」


 俺の言葉に皆んなが頷く。

 魔王の強さを知った俺たちには少し暗い空気が漂う。

 そんな中、セリアが“パンっ!”と手を叩く。


「暗くなる必要なんてない。魔王は強いけど私たちも負けてない。だって昔の勇者パーティーが揃ったから」

「あ、ほんとだ!すごい偶然だよ!」


 セリアの発言に気付かされる。

 俺とソラ、ユメの3人が元勇者パーティーのスキルを引き継ぎ、勇者パーティーのメンバーだったヨルカさんがいる。


「このメンバーにルーリエさんとセリアさん、リーシャにレオノーラが加わる。それに復活までまだ二年弱もあるんだ。そう思うと魔王と戦える気がしますね」

「あとはカミト様が7人目の女の子と婚約されたら完璧ですわ!」

「ん、楽しみにしてる」

「7人目の女の子もめっちゃ強かったからね!是非ともカミトくんには婚約してもらわないと!」

「あはは……が、頑張ります……」


 こうして俺たちは魔王討伐に向けて動き出した。

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