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フォーレ到着

 晴れてルーリエさんが婚約者になったことで、愛し合う男女が誰もいない森の中で野宿することとなった。


「カミトさん。キス……してくれませんか?」


 色っぽい表情でルーリエさんが誘ってくる。


 こんなところで性欲を爆発させるわけにはいかないが、ルーリエさんのお願いを断れず、俺は彼女の唇をふさぐ。


「んっ……」


 唇に触れる程度の軽いキス。

 時間も数秒ほどだ。


「ふふっ、カミトさんからキスしてもらいました。私の他に婚約者が5人もいるカミトさんは手慣れてますね」

「あはは……お願いされることが多くて……」


 襲うことはしていないが、俺が愛していることを伝えるためにキスなどのスキンシップは積極的に行っている。


「ここには誰もいませんので今すぐにでもカミトさんを襲いたいのですが、それは我慢します。6番目の婚約者である私が抜け駆けするのは皆さんに申し訳ないので。カミトさんから服を脱がされたら、どうなるか分かりませんが」


 そう言って妖艶に笑うルーリエさん。


「っ!」


 襲いたくないからではなく、婚約者という関係性に加え、魔王討伐には欠かせない戦力だから襲ってないだけだ。

 だがここは誰もいない森の中なので、これ以上話し続けると性欲が爆発しそうな気がした俺は、ルーリエさんをテントに誘導するため、背中を押す。


「と、とりあえず寝ましょう!俺はもう少し起きてますから!」

「分かりました。最後にカミトさんからおやすみのキスをいただいたら大人しく寝ます」


 そう言って唇を尖らせて目をつぶる。

 婚約者となった途端、大人っぽいルーリエさんが時折甘えてくる。


(甘えるルーリエさんも可愛いなぁ)


 そんなことを思いながら、俺はルーリエさんにキスをする。

 5秒程度と短いキスだがルーリエさんは満足そうだ。


「ありがとうございます。あ、それと私は今25歳です。責任をとってくれるので教えますね」

「え、25歳?もっと若いのかと思いました」

「あらっ。ふふっ。嬉しいこと言ってくれますね」


 そう言って可愛く笑う。


「では私は先に寝ますね。夜這いはいつでも大歓迎ですので、襲いたくなったら遠慮なく襲ってくださいね!」

「お、襲いませんよ!」


 顔を真っ赤にして否定すると俺の反応が面白かったのかルーリエさんが笑みをこぼす。


「ではおやすみなさい、カミトさん」

「はい。おやすみなさい。ルーリエさん」


 こうして1日目が終了した。




 その後、盗賊に襲われることなく4日間の旅は無事終了し、フォーレに到着する。

 もちろん、ルーリエさんからも襲われなかった。


「道中は楽しかったですね!また帰りもイチャイチャしましょう!」

「そ、そうですね。ほどほどにお願いします」


(俺、必死に性欲を抑え込んでたんだけどなぁ。帰りも抑え込めるかわからんぞ……)


 ここに来るまで、誰もいないことを良いことにルーリエさんからのイチャイチャ攻撃がすごかった。

 特に身体的接触が多く、ルーリエさんの巨乳……いや爆乳に翻弄され続けた。

 今でも腕や背中には、ルーリエさんの爆乳の感触が残っている。


「なので急いで仕事を終わらせます!」


 とのことで、目的地であるフォーレの冒険者協会を目指す。

 フォーレの街並みは王都と似ており、活気もあって賑わっていた。


「へー、食べ物も王都で見たことあるものばかりですね」

「フォーレのお偉いさんが王都の街を何度も見学し、王都を真似たと聞いております。だから街並みや食べ物は王都と変わりませんよ」


 そんな話をしつつ、フォーレの冒険者協会を目指す。

 しばらく歩くと王都の冒険者協会よりも規模の小さい建物が現れた。


「ここになります。入りましょう」


 俺はルーリエさんに続いて協会内に入る。

 すると、周囲にいた冒険者たちが騒がしくなる。


「おい見ろよ。王都一の秀才、ルーリエさんが来てるぞ」

「あの歳で長年勉強している学者並みの頭脳があるらしいからな。王都にはすごい人がいるもんだ」

「しかもおっぱい大きくて美人だよね。神はルーリエさんに与えすぎだよ」


 等々の発言が聞こえてくる。


「え、えーっと……王都一の秀才?」

「は、恥ずかしいので、その異名で呼ばないでください!」


 ルーリエさんが頬を染めながら言う。


「き、気づいたらそう呼ばれてたんです。王都一の秀才と呼ばれるために勉強したわけではありませんよ」


 詳しく聞くと、ルーリエさんは【睡眠強化】というスキルを持っており、寝ることで全てのことを記憶することができるらしい。

 しかも覚えたことを忘れることはない。


「だから私は学生の時、王都の図書館にある文献を全て読んだんです。そしたら、いつの間にか『王都一の秀才』と呼ばれてました」

「な、なるほど。それほどの頭脳があるなら考古学者や王宮で務めることもできそうですが、なぜ受付嬢を?」

「もちろん、王宮で働くこともできました。でも私は文献を読んでて思ったんです。何かに没頭して研究し続けるよりも、誰かのサポートができる仕事がしたいって。だから受付嬢の仕事をしてます」


 そこまで話したルーリエさんの表情が突然曇る。


「でも時々、受付嬢ではなく王宮で働く方が良かったのではないかと思うことがあります。私のスキルは王都のために役立てた方が良かったのではないかって」

「そんなことありませんよ」

「え?」


 ルーリエさんにとって大きな悩みらしいので俺はすぐに否定する。


「ルーリエさんが王宮で働いていたら、俺はルーリエさんと出会えてません。だからルーリエさんが受付嬢として働いてくれて俺は嬉しいです。好きな女の子と会えない未来なんて嫌ですから」

「カミトさん……」


 ルーリエさんが俺の名前を呟く。


「だからありがとうございます。受付嬢をしてくれて」

「そうですね。私もカミトさんと会えない未来なんて嫌ですから。王宮で仕事をしなくて良かったです」


 そう言って笑うルーリエさん。


(ルーリエさんが受付嬢をしてなかったら、俺はリブロで潰れていた。あの時、ルーリエさんが受付嬢を選んでくれたことには本当に感謝しないと)


 そんなことを思いつつ、騒がしい協会内を歩いた。

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