帰省 5
翌日、シャーリーさんとフィーネ先生を除き、俺たち6人は冒険者協会へ足を運ぶ。
シャーリーさんたちは遠くから俺たちを護衛してくれるらしい。
「ここがリブロの冒険者協会だ。ソラは何回か来たことがあるな?」
「うんっ!カミトくんと会った時を含めて5回くらいは来てるよ!」
ソラはソフィアさんの護衛としてリブロを訪れた時、5回ほど冒険者協会に来たようだ。
そんな会話をしつつ冒険者協会の中へ入ると…
「お、おいっ!カミトがいるぞ!」
「やっぱりカミトが帰って来たって噂は本当だったんだ!」
俺を見るなり周囲の冒険者たちがざわつく。
「アイツ、6人しかいないS級冒険者になったからな。報復に来たのかもしれねぇ」
「お、俺はお前に危害を加えてないぞ!だから殺さないでくれ!」
ラジハルと共に俺に危害を加えた冒険者は皆、冒険者資格を剥奪されており、この場にはいない。
いるのは俺がラジハルにイジメられていた所を止めることなく見てた人たちだけだ。
「お兄ちゃん、怖がられてるね」
「放っておいていいだろ。それよりも受付嬢たちに……」
と話している時、「ちょっと待てや!」との声が後ろから聞こえてきた。
そのため後ろを振り向くと、剣を抜いた状態で俺たちに殺意を向ける男が3人いた。
「っ!お兄ちゃんっ!」
戦う手段のないクレアが俺の後ろに隠れる。
その声は震えており、俺の服を掴む手は震えていた。
「なるほど。俺をイジメて冒険者資格を剥奪された人たちか。何の用だ?」
「あぁ?俺はお前をぶっ殺しに来たんだよ!」
「お前のせいで俺たちの人生はめちゃくちゃだ!」
「だから死んで詫びろっ!」
その言葉と同時に3人の男が俺に向けて特攻してくる。
「セリア。クレアのことを頼む」
「ん、任せて」
俺はクレアの頭を軽く撫でて迎え打つ。
「はぁーっ!」
冒険者協会内での抜刀は違反のため、俺は素手で戦う。
もちろん、S級冒険者である俺の攻撃をまともに喰らうと死んでしまうので手加減しながら。
「「「ぐはっ!」」」
一瞬で男3人の懐に入った俺は腹を殴って気絶させる。
「す、すげぇ。カミトの動きが見えなかった」
「カミトにやられた男たちってC級冒険者だぜ?そんな奴らを一瞬で……」
「やっぱりアイツ、マジでS級冒険者になったんだ!」
俺が3人を一瞬で無力化したことに周囲の人たちが驚く。
そんな騒ぎを起こすと当然、受付嬢たちに気づき、俺に気絶させられた男たちが奥の部屋へ連れて行かれる。
「さすがお兄ちゃんっ!」
「怖い思いをさせたな」
「ううん!お兄ちゃんが守ってくれるって信じてたから大丈夫だったよ!」
本当は怖かっただろうが、そんな気配を微塵も見せない。
そんなクレアの頭を撫でて安心させていると、俺たちのもとに受付嬢2人がやって来る。
2人ともリブロに住んでた頃はお世話になった心優しい受付嬢だ。
「カミトさん、聞きましたよ!S級冒険者になったんですね!」
「しかも王女様と婚約されただけでなく他にも婚約者がいるとか!」
「そうなんですよ。あ、紹介します」
そう言って俺は婚約者4人を紹介する。
「第一王女のリーシャ•ヴェールですわ」
リーシャが綺麗なお辞儀をした後、話を続ける。
「受付の方々はカミト様のことを守ってくださったとお聞きしております。カミト様の婚約者を代表してお礼を申し上げますわ」
「ありがとうございます」と言って頭を下げ、リーシャに倣い、レオノーラたちも頭を下げてくれる。
「あ、頭を上げてください!」
「そ、そうですよ!私たちは当然のことをしただけですから!」
王女様からのお礼にテンパる2人。
「やっぱりリーシャちゃんたちって王女様なんだね。お友達感覚で接してるから忘れちゃうよ」
「ん。私も最初は緊張したけど今では全然緊張しない。何なら礼儀正しい妹ができたと思ってる」
「だよね!」
その様子を見てソラとセリアが話し出す。
その後、リーシャたちに緊張したままの受付嬢たちを交え、楽しく談笑した。
俺は久しぶりの冒険者協会だったため、屋内を歩き回る。
ちなみに女性陣は受付嬢たちと何やら楽しそうに話をしている。
「えっ!まだ婚約してないんですか!?」
「ん。リブロから王都に移住したくせに自分の想いをカミトに告げてない」
「しっかりしてくださいよー、ルーリエさん」
「でも大丈夫だよ!多分時間の問題だから!」
「そうですね。この間、ルーリエさんがわたくしたちの下を訪れてとある頼み事をされましたわ。その内容は……ごにょごにょ……」
「きゃぁぁっ!さすがルーリエさんです!」
話の内容は聞こえないが、ガールズトークに花を咲かせているようだ。
その様子を眺めながら俺は久しぶりの冒険者協会を堪能した。
数日間リブロで過ごし、アムネシアさんのアパートと別れを告げた俺たちは、アムネシアさんを連れて王都へ帰る。
帰り道の5日間はさらに賑やかなものとなり、馬車の中は常に笑いが絶えなかった。
そして野営時は毎夜婚約者たちと共に寝て、幸せな時間を過ごした。