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09.3人でデートと主人と凄い勘違い


(んん...眩しい…)


僕は朝日に照らされて起きた。

今日は3人でお出かけの日だ。


「ん。おはよ。」

「ふわぁ。あら、シルフ起きてたのね。おはよう。」

「今ちょうど起きたとこです。おはようございます。」


横で寝ているふたりが目を覚ました。

お気付きだと思うが、3人川の字で寝ているのだ。

真ん中に僕を置いて、抱きしめて。

2人のいい匂いと柔らかい身体が押し付けられて、あまり寝れなかったわけじゃない。本当に。


「今日は楽しみましょ。ところでもう少し抱いてていいかしら?」

「シルフ、ふわもちで気持ちよかった。もう少し抱きしめて寝ていたい。」

「やめてください!?」


2人のマイペースさに困惑した。

僕の心臓はいつまで持つだろうか。





▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼





3人は街まで来ていた。


「さて、まずは何か食べましょうか。シルフは何か食べたいものあるかしら?」

「ん。なんでも言って。いくらでも買ってあげる。」


得体の知れない僕に過保護すぎる気がするけど、気のせいかな。

それよりも僕は何を食べたいか考える。


(食べたいもの…。フランスパン食べたい。あの硬さが丁度いいんだよね。それにスープに浸けて食べるとまた別の良さがある。でも、フランスパンって無さそうだし、なんて言おうかな…。硬いパンでいっか。)


「硬いパンとスープが食べたいです。」


途端2人は苦々しい表情をした。

もしかして、パンって高級食材なのかなって考えてると、そうじゃなかったらしい。


「もっと贅沢していいのよ?私たちお金持ちって言ったでしょ?ほら、あそこのお店なんかどうかしら。

お洒落で料理も美味しいって評判よ。」

「私もあそこがいいと思う。行ったことないから行ってみたい。」


指されているほうを見ると、明らかに高そうなお店があった。


(むりむりむり。絶対高いよあそこ。住まわせて貰ってる上にご馳走をいただくなんて…)


「私なんかが贅沢をするのは良くないです。パンとスープさえあれば大…!?」


僕の言葉はサラさんに抱きしめられたことによって遮られた。


「自分を卑下したらだめ。シルフは幸せを求めてもいいの。お願い…。」


僕はサラさんの暖かい言葉と優しさに絆されて、そのお店へ行くことになった。


食事を終えた僕達が次に向かったのは服屋だ。

着いてからはもはや何をしたか覚えていない。

僕は自分が可愛いことを自覚したのと、

ずっと着せ替え人形にされてた気がする。

時折、


「なんでも似合うわね!あぁこれもそれもあれも全部買っちゃいましょ!」

「ん!可愛すぎる!次はこの服着せる!その次は…。」


なんて声が聞こえてただけだった。



僕はくたくたで、2人はやりきった表情をして店を出た。着替えさせられただけで疲れた。


「もうこんな時間なのね。どこか座って食べれるものを探しましょ。」

「なら、クレープ食べたい。甘いものは神。シルフもクレープが食べたいと言ってる。」


僕の気持ちを勝手に代弁しているがその通りだ。クレープ食べたい。

ちょうど近くにあったクレープ屋さんで購入し、近くのベンチに3人並んで座った。当然僕が真ん中になった。


そういえばここの町とこの世界ってなんて言うんだろ。2人に聞いてみた。


「この世界は″テーラ″。と言うわ。

3つの国で成り立ってるの。

1つ目は聖国。神を崇拝している国。

2つ目は人心王国。この国のことね。

3つ目は魔界帝国。これは一番危険よ。絶対行っちゃダメ。

そしてこの町は″シッタ″よ。」

「魔界帝国は魔族や魔人がいる。私達でも勝てるかわからない。」


僕はサラさんとシオンさんでも勝てない敵がいるんだと知り、少し怖くなった。

そんな僕の心情を察し、サラさんが撫でてくれた。気持ちいい。

目を細めて気持ちよくなってると、シオンさんが真剣な表情で僕を見た。


「辛いかもしれないけど、私の質問にも答えて欲しいの。いいかしら?。」


なんのことか分からないけど、僕にできることはするつもりだから頷いた。


「あなたの主人の名前を覚えていたら教えて欲しいの。辛いと思うけどお願い。」


主人…?なんの事だろ。保護者みたいなものかな。おじいちゃんの名前を言えばいいのかな。それ以外いないからね。


「たしか…龍信って名前だった気がします。」

「...!リュウシン!?」

「まさか…そんな……うそ…。」


僕が龍信って言うと、2人が青ざめて震えだした。

そんなに珍しいなまえだったのかな。

2人が何かコソコソ話した後に僕を抱きしめてきた。


「大丈夫。大丈夫よ。私達が守るから。だから安心して。」

「ん。絶対に守ってみせる。指一本たりとも触れさせない。」


何故こんなに抱きしめられているのか分からないけど、暖かくて安心するからよしとした。


その後僕は眠気に勝てず、おんぶして貰って帰った。




▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼



シルフをベッドに寝かせた後、私とサラはリビングで真剣な顔で向き合っていた。


「これは予想以上に不味いわね。まさかあの子の主人がリュウシンだなんて想像だにしなかったわ。」

「ん。私も考えてなかった。」


リュウシンとは

裏社会を牛耳っている組織――終焉邪教(ディマイズヘレシー)――の幹部なのだ。


「これは私達だけでどうにかなる問題を超えてるわね。ギルマスに話に行きましょ。」

「ん。了解。その前に…。」


2人はシルフの寝顔を見てからギルドへ向かった。


ガロウにシルフのことを伝えたら、すごい顰めっ面になった。


「シルフにそんな過去があったんじゃな…。なんて不幸で可哀想な子なんじゃ。」


ガロウはシルフのいた境遇を想像すると胸が痛くなった。

だが、それ以上に気になったことがあった。


「今、リュウシン...と言わんかったか?」

「ん。言った。シルフの主人はリュウシン。危険な奴。」


ガロウはリュウシンをよく知っている。だからこそ聞き間違いであってくれと願ったのだ。

しかし、聞き間違いではなかった。


「リュウシンが相手となると厳しいのう。彼奴は強すぎるのじゃ。」

「もちろんわかっているわ。だからこそギルマスに協力を仰ぎに来たのよ。」


シオンはギルマスには基本敬語だが、焦っている時はタメ語になる。それほどまでにリュウシンとは危険な敵なのだ。


「…分かった。協力するのじゃ。お主らの頼みでもあるしのぅ。」

「ありがとう。ギルマス優しい。髭も立派。」


なんとか協力を得られた。


「じゃあ私たちはシルフを家で1人にさせてるからすぐに帰るわ。また来るわね。」

「また後日。じゃあね。」


そう言って2人は帰っていった。


「せっかちなやつらじゃ。それに、シルフという幼女はなんて不憫なんじゃ。名前もなく奴隷じゃったなんて...。幸せになってほしいのう。」


ガロウは窓の外を眺めた。


(……。嫌な予感がするのう…。)



近いうちにガロウの予感は的中することとなる。

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[一言] リュウシン「えっ?」 龍信「えっ?」
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