08.魔力が無いと言われた幼女と後悔する2人
シルフを急いで医務室に運んだ後、2人は酷く後悔した顔で近くの椅子に座った。
「私が誰でも魔力はあるって言ったから…。安易な発言で期待させちゃったから…。」
「いいえ。サラは悪くないわよ。私が悪いのよ。私がギルドに行こうなんて言わなかったら良かったの…。
他にいい方法があったはずなのに楽な方を選んだ私が悪いのよ…。」
2人は互いを責めずに、自らを戒めた。
本来は誰も悪くないのだが、それでも彼女らは己自身を許せなかった。
ふと寝ている美しい幼女を見ると、苦悶の表情を浮かべ、うなされていた。
「ごめんなさい…」
「…!?。」
「…。」
その一言がさらに2人に拍車をかける。
「あなたは何も悪くないわよ…。」
「ん。シルフは頑張ってる。」
シオンは寝ているシルフの頭を撫でた。
サラはシルフの手を握っている。
どうしてこの子にばかり災いが降りかかるの…。
しばしの沈黙のあと、意を決したようにシオンが口を開いた。
「サラ。一緒にシルフを幸せにしましょ。満面の笑みを見たいの。きっと可愛いと思うわ。」
「ん。勿論。必ず幸せになってもらう。それで私達のことを好きになってもらう。」
2人が決意を固めていたら、シルフが目を覚ました。
「ここは…どこですか?」
「ギルドの医務室よ。貴方が倒れから運んだの。」
「そうでしたか…。ご迷惑おかけして申し訳ございません。」
「ん。大丈夫。気にしないで。体調はもう平気?」
「はい。お陰様で良くなりました。」
2人はほっとして胸を撫で下ろした。
――それが束の間の安息だとすぐに知る。
「私には魔力さえもありませんでした。
足手まといになるだけですので、チームに入るのは無かったことにしてください…。」
シルフの透き通っていたはずの翠眼は黒く濁り、諦念に打ちひしがれていた。
サラとシオンは焦った。このままだと取り返しがつかなくなる…と。
「…ッ!だめ。もう確定してる。シルフは私たちの仲間。一緒にお風呂に入るの。」
「そうよ。シルフはもう仲間なんだから抜けるなんて選択肢ないわよ。これから一緒に住んで、一緒に入浴して、一緒に寝るの。」
サラとシオンは煩悩混じりの本音をぶつけた。
「ありがとうございます。少しでもお役に立てるように、努力します。」
今の状態のシルフには届かなかった。
だが、それでも2人は諦めない。
「明日は3人でお出かけするわよ。服も買わないといけないわ。」
「ん。シルフに似合う可愛い服選んであげる。シオンにも。」
話を聞いたシルフはこくり、と頷いた。
そうと決まればまずは家に帰らなければ。
2人はシルフを連れて家に向かった。