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06.名付けと加入

柔らかな陽光が差し込む窓際から、僕はぼーっと窓の外を眺めていた。


(シオンさんとサラさんはいつくるんだろう。楽しみだなぁ)


なんてことを呑気に考えながら最近のことを思い出していた。


(女の子になって、化物に追いかけられて、美女2人が助けてくれて、なんとか生きてる。人生で一番濃い数日だった気がする。まだ始まったばかりだけども。これからどうしようかな。名前も無い、無一文、自分が何者なのかも不明。あれ、詰んでるような気がしてきた。)


考えれば考えるほど自分がどうすればいいのか分からなくて、泣きそうになってきている。

というか既に半分泣いている。この身体はすぐ泣くから気を付けないとね。


(でも...ぐすっ...どうすればいいかわからない・・・

。入院代や治療費も返さないといけないし、その為に職も探さないといけないし・・・。ふぇぇ・・・むりぃ・・・。)


アルバイトすら怖くて出来ないのに、職につくなんてむりにきまっている。

それに、この身体は多分10歳以下だからどこも雇ってくれないだろう。保護者すらいないのだから最早詰みだ。人生終了のお知らせです。


(でも死にたくないし、お金は返さないとだから・・・。

ぅぅ・・・体を売るしかないのかな・・・それしか方法ないよね・・・でもこんな身体が欲しい人なんて居るのかな・・・)


そんなことを真剣に考えていたらノックの音が聞こえて、ドアが開いた。

シオンさんとサラさんが来たのだ。

まだ緊張して震えるけど昨日よりはましな気がする。

寝たままだと失礼だと思い、上体を起こそうとしたら、


「寝たままで大丈夫よ!無理に動かすとまだ危ないわ。」

「ん。寝たままでいるべき。」


2人に止められたので、そのまま寝てることにした。

正直まだ動きたくなかったのでほっとしている。


今回は、僕から話を切り出した。


「あの日、シオンさんとサラさんに助けていただかなければ、私は死んでいました。本当にお世話になりました。心より感謝いたします」


僕なりに頑張って感謝を伝えてみた。頭は良くないからこれで合ってるのかわからないけど、きっと伝わったよね。

僕の言葉に対しシオンさんとサラさんは、


「気にしなくていいわよ。無事ならそれが何よりだわ。ね?サラ」

「シオンの言う通り。気にしなくていい。私たちがしたくてしたことだから。」


はい女神降臨しました。みなさん聞きましたか?2人は女神ですよ。もう一度言います。2人は女神です。


(2人が優しすぎる。でも、ちゃんとお金は返さないとね。)


「温かいお心遣いありがとうございます。

それと、入院費等は身体を売ってでも返しますので、どうかご了承ください。」


なんとか僕なりに丁寧に伝えたつもりだけど、大丈夫かな。

不安に思い、顔を上げてみると、

2人の顔が悲しげに曇っていた。


(なんで二人共、顔が悲しげに曇っているのかな...。

また僕が迷惑かけてしまったのかな...。)


そんなことを考えていると、


「身体を売るなんて、そんなの私が許さないわ。

お金のことも気にしないで。サラがいったように、したくてしたことだから。」

「でも、それでは私は...」


僕の言葉はサラさんの言葉によって遮られた。


「大丈夫。本当に気にしないで。私たちお金持ち。いっぱいある。」


ここまで言われてもまだ僕が諦めていない様子を見てサラさんが提案をしてきた。


「じゃあ2つお願い聞いてくれるかしら?それで、貸し借りなしってことでどう?」

「分かりました。私に出来ることならなんでもします。」


僕は当然受け入れた。


僕の返事を聞いた2人は、満面の笑みを浮かべた。

それを見て何されるのかちょっと怖くなってきた。


2人でこそこそ話した後に、僕のほうへと向いた。

すごい笑顔で。


(美人さんの笑顔ってたまにこわいよね。)


なんて失礼事を考えていたら、シオンさんが話し出した。


「私たちのチームに入って。一緒に活動しましょ?」


僕は自分の耳を疑った。

え、僕なんかをチームに?なんの意味が?


「私なんかがチームに入るとご迷惑しかかけないので、他の方を誘った方がいいと思いますよ。」


自分の無能さを痛いほど理解してるからやめたほうがいいと伝えた。

そしたらサラさんが、


「貴方がいい。他の人はダメ。お願いは絶対でしょ?。」


と、言った。

僕なんかが何か役に立てる気はしないけど、お願いは聞かなきゃね。そういう約束だし。


「分かりました。私なんかが役に立てるとは思いませんが、精一杯頑張らせていただきます。」


チームに加入することを伝えると、2人は更に笑顔になった。

僕も一人の時間が減って嬉しい気持ちだ。無表情だけど。


「もうひとつのお願いなんだけど、言ってもいいかしら?。」

「はい。」


なんだろうと考えていたらシオンさんが普段より大きい声で話し出した。


「あなたの名前を決めたのよ!実はサラと考えてたのよね。とびっきり可愛いのを!」

「ん。絶対似合う。私たちのセンスは完璧。信じて。」


(僕の名前?あ、そうだ無かったんだ。こんな初対面の僕の為に名前を考えてきてくれたの?嬉しすぎる)


「私の名前・・・ですか?どんな名前にしたのかお聞きしてもいいですか?」


僕は内心ワクワクしている。無表情だけど。

2人が考えてくれたのなら絶対いい名前だよね。

ワクワクしながら待っていると、シオンさんが

こほんっと咳払いをして発表する。


「あなたの名前は、″シルフ″ 。

風を司る精霊って意味よ。貴方は精霊のように美しく、綺麗だもの。」

「私も貴方に似合っていると思う。どう?シルフ」


シルフ・・・

何故だか懐かしい感じがして凄く気に入った。

あぁ嬉しい。嬉しすぎて涙が出そうだ。


「...!? シルフって名前嫌だったのかしら!?もし嫌だったのなら違う名前考えるわよ!?」

「ん。嫌だったら言って。何回だって考えてみせる。」


なんで2人が慌てふためいてるのかな。と思ったら

僕は涙を流していたみたいだ。これは嬉し涙かな。

急いで2人に説明する。


「これは多分嬉し涙だと思います。初めて優しくして頂けて。チームに入れて頂けて。名前まで付けて頂けて。」



無表情で涙を流しながら淡々と声を出しているという、不思議な感じに見えるだろう。

嬉しいという気持ちが溢れすぎて涙が止まらない。

今日は最高の日だ。いや、前世と今世で1番かもしれない。


ありがとう。サラさんシオンさん。

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