14.ロリエルフは救われる
「ぅぅぅぅぅぅ」
僕は今魔力を吸われている。
魔力を全て吸い取ると、変な薬で無理やり回復させられて、また吸われて。
それを変なカプセルに入れている。
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皆と別れてから1週間程経ったのだろうか。もしかしたらもっと経っているのかもしれない。
毎日魔力を吸われて回復を繰り返し、シルフは疲弊していた。
もはや唸り声を上げることしか出来ず、目から生気を失い、虚ろな表情をしている。
(もういやだ…。いたい。つらい。しんどい…)
どんなに泣いても助けはこない。
意識が朦朧とする中、リュウシンの声が聞こえた。
「そろそろ良さそうですね。今日はもう終わりにするので部屋に戻ってください。」
「わか…りました…。」
身体を無理やり動かし、僕は部屋に戻る。
抵抗する気などさらさらない。そんなことをして現状より悪化したら嫌だからだ。
部屋に着いた僕はすぐにベッドに寝そべり、枕に顔をうずめる。
(明日も明後日もずっと続くのかな…。うぅ…。)
そうして、枕を濡らす日々が続いていた。
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ドアが開く音がした。
「今から始めますよ。起きてください。」
リュウシンが起こしに来た。
今日はいつもより早い。なぜだろう。
僕は疑問に思い、聞いてみる。
「今日は早いですが、何かあるのですか?」
「えぇ。ですが、あなたが気にする必要はありません。さぁ行きますよ。」
はぐらかされた。でも当然だよね。僕はモルモットなのだから。
いつもとは違う廊下を通り、頑丈なドアがある部屋へ来た。
「ここです。はいってください。」
僕は命令に従い入る。
そこにはただの椅子があった。
座るだけなのかなと思っていると
「あの椅子に座ってください。座るだけで構いません。」
座るだけでいいのなら今日はまだしんどくないかもしれない。僕は安易にそう考え、座った。
だが、その甘い考えをした事を後悔することになる。
――今までの何十倍もの痛みが襲いかかってきたからだ。
魂が削られるような痛みを感じていたら、リュウシンが説明を始めた。
「その椅子は、魔力や魂を蓄積する椅子です。昨日までの行為であなたの魔力、魂は何倍も強化されました。よく耐え抜きましたよ。本当に素晴らしい。
ですので、今日はその全てを頂きますねぇ。」
僕は痛みに耐えながら考えていた。
魔力と魂を強化?吸うだけじゃないの?意味がわからない。
頂くってことは僕の全てを奪われる?じゃあ僕は
――死ぬ?
その考えに至り、僕は本気で助けを求めた。
「い、やだ!死にたくない!お願いします!何でもします!殺さないでください!」
傍から見れば無様に見えるだろうが、それでも死ぬのは怖い。
だが、リュウシンは当然助けてなどくれない。
(あぁ…本当に死ぬんだ…まだ生きたかったなぁ…。色んなものを食べて沢山の人と遊んで、それに、もっと…もっと………
シオンさんとサラさんと居たかったなぁ…)
もはや全てを諦め、大事な人を思い出していた。
その時だった。
すごい爆音と共に、研究所が揺れたのだ。
その拍子に椅子の吸い取る力が止まった。
リュウシンは何事かと焦っている。
「一体何が起こったというのですか!?。私は爆音の元凶へ向かいますので、貴方はそこから動かないでください!」
僕に命令をした後に急いで音の方へ向かっていった。
(もう動けないから逃げることも出来ないよ…。それに逃げたらチョーカーが爆発して死ぬから無理だよ…)
僕は爆音や剣戟が鳴り響くのを聞いていた。
数十分ほど経つと、こちらに誰かが走ってくる音が聞こえる。
僕はリュウシンが帰ってきたのだと思い、絶望していると、来るはずないと思っていた人の声が聞こえた。
「シルフ!どこにいるの!お願い返事をして!」
「助けに来た!どこ!シルフ!」
…間違いない。
シオンさんとサラさんの声だ。
助けに来てくれたんだ…!
僕は嬉しくなるが、痛みで声が出ない。
なんとか声を絞り出そうとしていると、頑丈なドアが蹴飛ばされ、2人が入ってきて目が合う。
「シルフ!良かった!生きてる!」
「助けが遅くなってごめんなさい!いま解くわ!」
僕の拘束を解き、2人は抱きしめてくれた。
温かい…。
「良かった…!本当に良かった…!辛い思いをさせてごめんなさい…助けが遅くなってごめんなさい…」
「シルフ!シルフ!シルフ!」
「シオンさん…!サラさん…!」
嬉しい。2人が来てくれたのだ。本当に嬉しい。
だけど、まだ僕は逃げることは出来ない。
首に爆弾があるからだ。
それを2人に説明すると、サラさんが何か考えた後に僕のチョーカーに触れる。
「解除」
サラさんのその一言でチョーカーは外れた。
僕とシオンさんが驚いていると、
「どやぁ。私天才。」
すごいドヤ顔をした。声に出ちゃってる。可愛いすぎる。
そんなこんなで、動けない僕を連れて研究所を後にした。
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街へ戻り、3人の家に帰ってきた。
帰れないと思っていた家に帰れたのだ。
僕は泣いた。2人を抱きしめて、抱きしめられながら大声で泣いた。
僕は何度も感謝し、何度も謝る。
その間2人はずっと抱きしめて撫でてくれた。
そして、僕は泣き疲れて眠った。
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今私たちに抱かれて、可愛い幼女が寝ている。
生まれた頃から不幸で、幸せを知らずに過ごしてきた女の子。
もう離さない。絶対に。
「シルフが無事で本当に良かったわ。もう絶対傷付けさせないわよ。」
「ん。その為にがんばる。シルフを幸せにするために。私たちをもっと好きになってもらうために。」
サラとシオンは、寝ている幼女を見ながら固く誓った。
読んでいただきありがとうございます。
次が1章の最終話となります。よろしくおねがいします。
評価等頂けたら嬉しくて今よりも舞い上がります。へへ。