13.私達の大切な女の子、封印を解かれるロリエルフ
3人と他の冒険者は気絶から目覚め、ギルドにいた。
シルフとサラは蒼白な顔で固まっている。
「ごめんなさい…。さようなら…。」
シルフの最後の言葉が、頭の中で何度も反芻する。
自分が無力だから守ることさえできず、あまつさえ守られたのだ。その事実で心苦しくなる。
どうして大切な女の子を守る力すら無いのかと、自責の念に強く苛まれていた。
「シルフ…。」
声に出しても返事はない。無表情だけど、感情豊かな可愛らしい幼女はもう居ないのだ。
これは夢であってくれとこの数時間で何度願ったことか。
だが夢ではない。現実とは非情である。
「シルフ。初めて笑ったわよね…。私たちに気持ちを伝えて、初めて…。」
「ん…。笑ってた。でも、あんな笑顔は見たくなかった…。私たちが弱いせいで…。」
シルフの笑顔が作り笑顔であることはすぐにわかった。
きっと全て自分の責任だと思い、少しでも私たちを安心させようとしてくれたのだろう。
――それが逆効果だとも知らずに。
シオンが立ち上がり、剣を持つ。
「早く助けに行かないと…!今こうしてる間も何されてるか分からないわ!」
「ん!行こう!シルフを救う!」
2人はシルフを助けに行こうとした。
しかしガロウに止められた。
「お主らが今行っても無駄骨を折るだけじゃ。」
「そんなの分からないじゃない!次は勝てるわよ!」
「ん。シルフを救うためなら命も懸ける。」
「ダメじゃ。絶対に勝てん。」
2人は無理やり通ろうとしたが、ガロウの馬鹿力で止められる。
そんな2人を見てガロウは問いかける。
「仮にお主らが目の前で殺されでもしたらシルフはどうなる?どう思うんじゃ?」
「っ…!」
「…。」
ガロウの言葉にはっとさせられた2人は静かになる。
「まずは体力を回復させるのじゃ。その後緻密な作戦を練る。焦る気持ちも分かるが、一旦落ち着くんじゃ。救えるもんも救えんくなるぞ。」
「…はい。」
「…ん。」
ガロウの言う通りだと思った2人は、冷静になり素直に返事をした。
(そうよね。焦ったらダメよ私。絶対にシルフを救うために…!)
私達が意気込んでいると、″ハザード″のトゥレイターが話しかけてきた。
「シルフちゃんを救いたいのはあんたらだけじゃないぞ。あんなに良い子はそうそういねぇ。俺たちにも協力させてくれ。」
トゥレイターの発言で周りの冒険者達も声を上げる。
「俺も協力するぞ!」
「私もよ!舐めたい!」
「可愛いから絶対に救うわ!あたしにチューしてもらう!」
不純な動機な人も多いが、それだけ慕われているのだと3人は実感した。舐めるのもチューも許さないが。
(シルフ。貴方を絶対に助けてみせるわ!だから、どうかそれまで無事でいて……。)
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そんなことは露知らず、シルフは部屋で1人ぼーっとしている。
(猫ってどうして可愛いんだろ。あのフォルムといい声といい欠点がないよね。」
俗に言う現実逃避をしていた。
誰も助けにこれない、首にある爆弾のせいで逃げることも出来ない。
もはや生きる意味を失っている。
ひたすらぼーっとしていると、ドアが開いた。
「来てください。始めますよ。」
「分かりました。」
何を始めるか分からないけど、付いていく。
歩き続けてると、ある部屋に止まった。
中を見ると拘束具と診察台みたいなのがあり、僕は後ずさってしまった。
まさか拷問はしないよね多分きっと恐らく。
「さぁ、あの台に寝てください。」
ですよね。知ってましたよ。
僕が恐る恐る寝ると拘束具が自動で僕を縛り、身動きが取れなくなった。
「ではあなたの魔力を貰いますね。」
「え、私に魔力は無いですよ。」
僕に魔力がないことはギルドで証明されているはずだ。
リュウシンは少し首を捻ったあと、何かを理解した顔でこう言った。
「あぁ。そういうことですか。あなたに魔力はあります。それはもうこの大陸で1番と言っても過言ではないほど。ただ、封印されていて、使えないので誰も分からなかったんですねぇ。」
……封印?僕に魔力あったの?誰に封印されたの?なんで封印されたの?
僕は驚愕の事実を知り、混乱していた。
そんなことは気にせずリュウシンは
「まず、封印を解きましょうか。」
封印を解くために詠唱を始めた。
詠唱が終わると僕の体が光る。
「っ…!?。痛い痛い痛い!」
そう。痛いのだ。それもとんでもなく痛い。
全身を刺されるような痛みだ。
「や、めて!いたいおねが、い!」
「封印が解けるまでは頑張ってくださいねぇ。何時間後になるかわかりませんが。」
リュウシンは相手にしてくれなかった。
そして、数時間経ってようやく解ける。
刹那、世界が一瞬シルフの魔力で包まれた。
だがそんなことを本人が気にする余裕はない。
シルフは、涙と唾液で顔がびしょびしょになり、全身が痙攣し、漏らしてしまっていた。
「おやおや。まだこれからですよ。頑張ってくださいねぇ。次は素晴らしい魔力をいただきますよ。」
シルフの事などどうでもいいが如く次の工程に移った。
新たな詠唱を始め、再度シルフの体が光る。
「ぐぅぁぅぅ…!」
先程の痛みとは違い、内側で何かが爆発している感覚がシルフを襲う。
体を暴れさせるが、完璧に拘束されているため無意味に終わる。
(シオンさん…サラさん…。また会いたいよ。)
僕は二度と叶わない願いを抱きながら、痛みに耐え続けていた。