12.ロリエルフは敵に捕まる
「だめ!!殺さないで!お願い!」
今僕はリュウシンと呼ばれる人の前で手を広げて、後ろのシオンさんを守っている。
……
いや、実際は守れてすらいないけどね...。
そんなことよりも、リュウシンに皆を殺すのを辞めてもらわないと!
「お願いします!シオンさん達を殺さないでください!お願いします…!」
僕はシオンさんの前で震えながら必死に懇願する。
リュウシンは少し驚いた顔をして、汚い笑みを浮かべた。
「そうですねぇ。偶然貴方を探していたので、私の命令に従うのであれば、この街の人に危害は加えません。ですが、もし断れば…お分かりですね?」
なんで僕を探してたんだろ。
でも、僕がいるからみんなに迷惑をかけたって事だよね…。
…正直、怖いから従いたくない。でももし断れば自分のせいで皆が犠牲になるのだ。何としてでもその事態は避けたい。
それに、自分で蒔いた種は自分で刈るべきだよね。
(短い期間だったけどすごく幸せな日々だった…。でももうここで終わりかな…。)
「…分かりました。従いますので、絶対に皆には危害を加えないでください。」
「えぇ。もちろんですよ。私は約束を反故にした事はありませんからねぇ。」
僕がリュウシンに歩み寄ろうとすると、
「だ、めよ…!シルフは、わたし達といるの…!だから、行かないで…」
今にも気を失いそうなシオンさんが僕を止めようと手を掴んだ。見ているだけで辛くなる。
僕はこれで最後になると思い、気持ちを伝えた。
「あの日、シオンさんとサラさんに助けていただけて嬉しかったです。私の空虚な人生に、2人は幸福を齎してくれました。人生で一番幸せなひとときでした。今まで本当にお世話になりました。」
気持ちを伝え終わると、僕は初めて笑えた。
……ちゃんと笑えてるかな?不安だ。
僕を掴んでた手を優しく解き、踵を返してリュウシンの元へ向かう。
「いか…ないで……。」
シオンさんはそれでも僕を止めようとする。
だが、もう止まることは出来ない。
「ごめんなさい…。さようなら…。」
僕が最後にそう言い残すと、リュウシンの黒い何かに包まれて、皆の前から姿を消した。
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視界が明るくなると何かが見える。
外壁は苔に覆われ、周りの森林と同化している建物だ。
「私の研究所です。ついてきてください。」
そこはリュウシンの研究所であった。
(え、入れるのあれ。どこが入口かわからないんだけど。)
僕が失礼な考えをしていると、目の前の扉っぽいのが開かれる。
リュウシンが中に入っていくので、僕も付いて行く。
中は真っ白い空間が続いており、掃除もされているのか綺麗だった。
ある部屋に着くとそこには病衣とチョーカーが置いてあった。
「その服とチョーカーを着けてください。」
僕は言われるがままに着替え、チョーカーをつけた。
それを見届けたリュウシンが口を開く。
「今日はもう遅いので身体を癒してください。後、逃げようとしたらそのチョーカーが爆発するので、気を付けてくださいね。」
「分かりました。逃げようだなんて思いません。」
チョーカーが爆弾だということは薄々気付いてた。
僕の返事に満足し、リュウシンは部屋を出ていった。
緊張を解き、周りを見渡してみる。
(病院の部屋みたいだなぁ。もう逃げることも出来ないし、シオンさんとサラさんに会うことも出来ないんだよね……。うぅ…辛いよ…。あいたいよぉ…。)
大事な人とは二度と会えず、敵の拠点でいつでも自分を殺せる。理解したくない現実だった。
僕は咽び泣きした。皆の前だから我慢していたけど、もはや耐えられなかった。
一体どのくらいの時間泣いただろうか。
僕は泣き疲れてそのまま眠った。