11.敵襲来
――私は邪神様を崇拝している。他の神も人もあの方の前では塵同然。この力であのエルフを捕まえ、貴方様を必ずや…!
歩く災害はある街へと足を進めた。
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何も知らないシルフ一行は、依頼を受けるためにギルドへ来ていた。
「シルフを連れて行っても安心安全な依頼はないかしら」
「それでしたらこちらの依頼とかはどうでしょう。」
シオンさん達が話しているのを余所目に、僕はぼーっとしていた。
(幸せだなぁ。こんなに幸せでいいのかな。2人に恩返しして、迷惑かけずに生きていくぞー!おー!)
シルフが1人で盛り上がってる時、異変が起こる。
――街全体が揺れたのだ。
「これはまさか…!」
「シルフ!ギルドの奥にいて!絶対出ちゃダメ!」
「Bランク以上の人は私に着いてきて!」
揺れたのと同時に、付近に膨大な力を感じた2人は、シルフをギルドの奥に避難させ、瞬時に周りに指示を出した。
元々慕われていた上にSランクに昇級した2人の指示に異議を唱える者はいなく、迅速な連携が取れた。
2人は他の冒険者を連れて地震の元凶へ向かう。
そこには忌み嫌われている男が居た。
「やっぱり貴方だったのね。終焉邪教幹部、リュウシン。この街はあなたをお呼びじゃないわよ。」
「一体何の用。早く帰って。」
2人は眉間に皺を寄せながら、不満を吐く。
対するリュウシンは、頭に?を浮かべていた。
「お会いしたことはありませんが、私も有名になったものですねぇ。なに、この街をどうするつもりはありません。ただ、あるエルフをもらいに来ただけですよ。」
…エルフ。この街でリュウシンが求めるエルフは1人しかいない。シオンとサラは確信していた。
「絶対に渡さないわ!帰らないと言うなら無理やり帰らすまでよ!サラ!」
「ん!強化魔法<大>!」
先手必勝。即座にサラはシオンにバフをかけ、シオンは音速に近い速度で斬りかかる。
だが、
「ん〜今の私にその速度は遅すぎますねぇ。」
リュウシンは、シオンの一撃を軽く躱した。
「次は私の番ですね。」
直後、私とサラは膝をつき、他の冒険者は倒れた。
え、今何を…何をされたの……。
シオンとサラは混乱していた。こんな魔法は聞いたことがない。しかも詠唱なしだ。
すぐには立てずにいると、
「リュウシン貴様ぁぁ!」
ギルマスのガロウがシオンより更に早い速度で飛びかかった。まともに受けたリュウシンは10m程吹き飛ばされた。
「大丈夫かお主ら!!彼奴は精神魔法を扱えるのじゃ!」
精神魔法…。聞いた事はある。禁忌の魔法だとして封印されていたはずだ。
「なんでそんなものが使えるのよ!?」
「対策はないの?」
「あるにはあるが、いまこの場では出来ん。」
3人が話していると、リュウシンが起き上がった。
(元Sランクの攻撃をまともに受けて無傷って、どんだけ頑丈なのよ!どうしたらいいの。精神魔法なんて対策分からないわよ。)
思い巡らせていると、リュウシンが話しかけてきた。
「なぜ戦うのですか。エルフを1人私に渡すだけで済むのですよ?。無駄な争いなぞせずに、穏便にいきませんか?」
「うるさいわね!どう言われてもその子は絶対に渡さないわよ!」
「シルフは私達の!渡さない!」
2人は立ち上がりガロウと共にリュウシンへ殺意を向けた。
「野蛮ですねぇ。仕方ありません。貴方方を殺して連れ去るとしましょうか。」
リュウシンは禍々しい黒い剣を創りあげる。
その間にガロウが作戦を立て、伝えてきた。
「わしとシオンが突っ込み、彼奴を抑える。隙ができたら、ワシらは後ろへ飛ぶ。その時サラが魔法をぶち込むのじゃ。」
「わかったわ。」
「ん。了解。」
もはや作戦とはいえないが、それしか方法はなかった。幸い相手は剣で来るつもりだから可能性はある。
「そろそろいいですか?時間が惜しいのですよ。」
「えぇ。もう十分よ。サラ、お願い。」
「ん。強化魔法<極大>。」
「っ…!ありがとね。」
強化魔法は万能だが、何度もかけると体に負担がかかる。早々に決着をつけなけらばならない。
3人とリュウシンが向き合う。
先に飛び出したのはシオンだ。
「うぉらぁぁぁ!」
音速で斬りつけたが、予想通り防がれた。
リュウシンの後ろからガロウが右手で斬りかかる。
「あまいですよっ!。」
リュウシンはシオンを蹴飛ばし、ガロウの剣を弾き飛ばした。
だが、それが罠だと気付いていなかった。
ガロウは隠していた左手の剣で斬りつける。
対応が遅れ、リュウシンは体勢を崩す。
刹那、シオンとガロウは後ろへ飛んだ。
「サラ!いまよ!」
詠唱し終わったサラへ合図をだす。
「ん!《インフェルノ》!!」
世界で数人しか使えない極炎魔法を放った。
どんな相手でもこれで終わりのはずだが、
「なかなかに効きますねぇ。」
男は無傷であった。
「う...そ...。そんなのありなの…。」
3人の顔は絶望に染まった。
「次はこちらの番ですね。精神汚染魔法。」
リュウシンが魔法を放つと3人は膝を着いた。
しかし、意識だけは持ってかれないようにしている。
「強情ですねぇ。今後の為に一応殺しておきますか。」
黒い剣を創り、シオンに近づいていく。
(シルフ…。ごめんなさい…。貴方だけでも生き延びて…。)
死を覚悟し、リュウシンの剣が私の首をはねるのを待っていたら、ここにいないはずの愛らしい声が聞こえてきた。
「だめ!!殺さないで!お願い!」
(え……。な、んで…。なんでここにいるの…シルフ!)
前を見るとそこには守るべき幼女の姿があった。