10.動き出す悪と幸せなひととき
2/25 日間ファンタジー異世界転生/転移ランキング
63位、2/26 週間170位 でした。ありがとうございます。凄く嬉しいです。これからも頑張ります。
「くふふ。ついに見つけましたよ。必ず私のものにしてあげますよくふふ。」
不敵な笑みを浮かべ、水晶を眺めている男がいた。
ダボダボの白衣、ボサボサの白髪、不健康な顔。
誰が見ても不潔だと思う風貌をしている男の名は、
リュウシン。終焉邪教の幹部の1人である。
「まさかこんな所に最高の実験体がいるとは思いませんでしたよ。あぁ邪神様は私を祝福している!崇高なる邪神様!私はあなたのために全てを捧げます!」
普段の倍は愉快なリュウシンは舞い踊り、研究室を後にする。
――残された水晶に映し出されていたのは、エルフの幼女だった。
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街のどこかのカフェにて。
「はい。あーん。」
「あ、あーん。」
「ん。美味しい?」
「美味しいです…。」
僕は今、2人に餌付けされている。
…………
2人がさらに過保護になってるような気がする。
ギルドで気絶した日から数日経ったけど、日に日に溺愛っぷりが悪化してるような…。
いや、嬉しいんだけどね凄く。実際今の僕の見た目だけは可愛いから愛でるのも分かる。
でも、自分なんかでいいのかっていう気持ちもあるんだ。
そんなこんなで頭を悩ませていると、
「シルフ。口の横にクリームついてる。拭いてあげる。」
「ありがとうござ…ッ!?」
僕は驚きと恥ずかしさで固まった。無表情だけど。
なぜなら、サラさんに口の横を舐められたからだ。
え、拭いてくれるんじゃなかったのって考えてたら
「ナニで拭くとは言ってない。シルフ甘くて美味しい。」
ぺろりと唇に舌を這わせた。
その隠微な仕草に僕はたえられなくなり目を逸らした。
逸らした先には、むすっとしたシオンさんがいた。
「サラばかりずるいわ。私もしたいの。シルフ、勿論いいわよね?」
「え、いやあのちょっとまっ…!」
シオンさんは有無を言わさぬ空気で僕に近ずいた。
そこから先は語るのも恥ずかしいから割愛する。
うぅ…。
その後僕達はギルドに向かった。
到着し、受付へ向かうと受付嬢″ミサ″さんがいた。
「今日はどうなさいましたか。」
「一応皆にシルフを紹介しようと思ってね。一緒に来たわ。」
シオンさんの発言が聞こえていたらしい近くのチームが声をかけてきた。
「おーその子がシルフちゃんか。俺たちは″ハザード″というチームで活動している。名はトゥレイターだ。よろしくな!」
「私はアンよ。よろしくね。シルフ可愛いから舐めてもいい?」
「僕はジュン。よろしくお願いします。」
ハザードを皮切りに、次々と色んなチームがシルフに挨拶していった。シルフが可愛いあまり煩悩を出す人も多々いて、その都度2人が睨んだ。
それに対し、シルフはどうしていたかというと、
(こんなに沢山の人覚えられないよ…。えっとトゥレイターさんにアンさんにジュンさんにえっと…。あぁむりぃぃ。)
無表情のまま内心狼狽えていた。
前世から人と関わることが皆無だったので、こうなるのは必然であった。
シルフにとって嵐のような時間が過ぎ、やっと家に帰れた。
「疲れました…。こんなに多くの人と関わるのは初めてで凄く、すごく疲れました…。」
「ふふっ。よく頑張ったわね。偉いわシルフ。」
「ん。今日はシルフ頑張った記念で手料理を振舞ってあげる。」
2人は僕を撫でたりしながらそう言った。
…………
手料理!?
「シオンさんとサラさんの手料理食べたいです!」
目を輝かせる僕を、2人は任せときと言わんばかりのドヤ顔で答えた。
2人の料理が出来上がるのを座って待つ。
(手料理楽しみだなぁ。この世界で初めての手料理!自分にとって大事な人と食卓を囲んで、ご飯食べれるのって幸せだ。しかも手料理。へへへ。)
シオンさんとサラさんが僕にとって大事な人だと自覚し、何を作るのかなって考えてると料理が運ばれてきた。
「じゃーん。私とシオンも大好きなハンバーグ。」
「上手く出来たと思うわ。どうかしら?」
「凄く美味しそうです!」
本当に美味しそうだ。焼きたてでジュージュー音を鳴らし、食欲を刺激する香りが辺りに漂う。
3人が席に座ると、手を合わせた。
「「「いただきます。」」」
ハンバーグの左端をフォークで押さえ、ナイフで切込みを入れると肉汁が溢れてきた。
切り離した部位にソースを絡めながら口に入れた。
(んんん美味しい!もうなんかジューシーでジューシー!美味しすぎる!)
僕が余韻に浸っていると、シオンさんとサラさんが、愛を感じる眼差しで見つめてきてるのに気付いた。
「美味しいかしら?かなりの自信作なのよ。」
「食べ方綺麗。味には自信ある。」
僕は感極まって、
「美味しいっでず…!ぐずっ…。誰かの手料理を食べだのは初めてで...!すびっ...。暖かくて優しくて…!本当に…ありがとうございます...!」
泣いてしまった。
2人は近くに来てよしよしと慰めながら撫でてくれた。
僕は2人を大切にしようと誓い、この幸せな日々が続くようにと天に祈った。
しかしその祈りは神に届かずに、不幸が訪れることになる。