8話 ホーロンの王
「そういえば、ここの王ってどんな方なのですか?」
アウルが外に出て行った後、淹れてもらった麦茶を飲み、ヨイリは言った。
「とんでもないっ」
エズは、恐怖という感情を出すように、体を震わせた。
「あの方は、ここでは大きな声じゃ言えないけど、街の人の嫌われ者さっ」
「え? でも、すごく街の人の事を考えていると、お聞きしたのですが」
「そんなの嘘さっ。確かにこの街に顔を出す時は良い顔をしているけどねぇ、あいつのせいで何人もの人が殺されているのさ」
「殺される?」
「ああ。ホローンはここらへんでは大きな街さ。だから、そこらじゅうの人がここに移住する。しかも、自分に能力があり、自分の街でハブられた奴が大概集まってくるのさ。あの王が来たのは去年。あいつは能力コレクターなんだ。この世界に人間離れした能力を与えられた人は1000人を越える。アイツは全ての能力を集めようと、この街を襲って、能力のある奴を片っ端から捕まえたのさ」
「それはひどいですね」
「だろう? そんでもって、持っている能力がある場合はかぶった奴を殺すんだ。全く、どうかしているよ!」
エズは憤慨し、ドンドンと足を踏み鳴らした。しばらくして落ち着いたのか、席に着く。
「あたしは、何の能力も持っちゃいないさ。でも、あたしの娘が能力を持っていたんだ。確か、人の能力を読む能力さ。運よく、娘は誰とも能力がかぶっていなかったから、監禁される程度になった。しかし、それでも酷いんだよ!」
「その気持ち、分かります」
「あんたらも、さっきの坊やとそこのお嬢ちゃんは能力者だろう?」
ファイムが驚いたように顔をあげる。エズは悲しそうに笑った。
「あたしは、何の能力も持っちゃいないさ。でもね、娘が持っていたんだから、だいたいオーラでわかるんだ。まあ、どんな能力かは娘しか分からないけどね」
「そうなんですか……。あの、しばらくココで滞在させていただいてよろしいでしょうか?」
「ああ、構わないよ。あたしは今一人だから、丁度寂しかったんだ。坊やたちの気が済むまでここにいていいよ」
「ありがとうございます」
ぺこりとヨイリが頭を下げた。ファイムも慌てて下げる。エズは笑い、「そんな改めなくても良いよ!」と元気に言った。
「あの、もう一つ質問、よろしいですか?」
「ああ、構わないよ」
「エズさんはここの王を嫌っている。他の方はどうなんですか?」
「確かに、最近ここらに来た人はアイツを良い人だと思っているかもしれないが、あたしと同じように思っている人の方が多いよ。アイツの息子の王子もあたし達と同じように思っている。王子は、明日、確か街に遊びに来る予定だったから、話を聞いてみるといいよ」
ヨイリとファイムは目を合わせて頷いた。
「ところで、あの子、遅いねぇ」
「そうですね。私も心配です。少し、見にいった方が……」
「俺が行って来る」
ファイムが立ち上がるより先にヨイリが立ち上がった。ヨイリは先ほどの笑顔が嘘のように、顔が怖くなっていた。
「え、私も行きます」
「……待っててくれ。念のために。あの、エズさんは何か武器とか使えます?」
「? ああ、昔、体術を習っていたよ」
「なら、ファイムをお願いします。多分、大丈夫ですが。ファイム、お前もエズさんを頼む」
「あ、はい!」
ヨイリは緊迫した表情のまま外を出た。いつも笑っているはずのヨイリの別の表情に思わず、ファイムは敬礼をした。




