プロローグ:呪われた幼き双子
「ねーねー。アウルってばっ」
「うわっ。ひっぱらないでよぉ」
「ほらほら。あれみて! すっごぉいおおきいね。ホロイブっていうんだよね? あのとう」
「そうだよ。このせかいのちゅーわのそんざいらしいって。いみがよくわからないけど」
空にそびえ立つ大きな塔を見上げて歓声をあげるのは幼き双子。一人はアメジストとワインレッドのオッドアイ。また一人はアメジストとサファイアのオッドアイ。ワインレッドは少年で、サファイアは少女。少年は銀髪で少女は黒髪。二人は似ているが、異なる双子であった。
「カイル。ぼくらはいつかはなればなれになるんだよね」
「……そうだね。すっごくいやだよ。ずっといっしょがいいよ」
カイル。そう呼ばれた少女は嗚咽をもらし、泣き始める。しかし、これは運命であった。二人は膨大な魔力の双子。アウルは死を司り、カイルは生を司る。この双子が永遠に共にいれば世界が崩れる。だから、双子は引き離さなければならない。手の届かないほど遠いところへ。
「なかないで、カイル。ぼくらがまたあえるように、やくそくのばしょをきめよう」
「やくそくのばしょ?」
「15さいになったら、ぼくらは16さいのはるまでに、ここであおう。そうしてもっととおくのところへいこう。ね?」
少年がなぐさめるように言うと、少女はぱあっと顔を明るくした。
「うん! そうする! あそこであおう!」
少女が指したのはホロイブ。少年は塔を見上げ、大きく頷いた。
「そうしよう! ぜったいにここであおう。16さいなんてあっというまだ」
「うん! うん!」
少女がにっこりと笑う。少年も少女が笑ったのが嬉しくて、にっこりと笑った。
まだ、何も知らない幼き双子。5歳の春の出来事であった。
それから、十年が経つ。二人は引き離され、それぞれの国で、監禁された。死を司る兄、アウルは監禁されている国、ベイズの城で王のソイドの命で人を殺して過ごしていた。
十五歳。約束の時。アウルは決意を胸に、大剣を握った。