表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【WEB版】ループから抜け出せない悪役令嬢は、諦めて好き勝手生きることに決めました【コミカライズ連載中】  作者: 日之影ソラ
本章第一幕

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/74

47.信じる

 災害級の魔獣は都市をも壊滅する。

 故に災害そのもの。

 相対するは、私たち三人の守護者だけ。

 端から見れば、人間の大国にアリが三匹で挑むようなものだ。

 普通のアリなら勝機はない。

 

 そう……私たちは普通じゃない。

 

「魔獣よ。ここから先へはいかせないぞ」


 ゴルドフは剣を地面に突き立てる。

 その直後、魔獣の巨体が地面を抉るように沈みこみ動きを止めた。

 高重力。

 彼が操る大地の異能、その一つだ。


「奴の動きは俺が封じる。攻撃は任せたぞ」

「ええ」

「はーい。僕も援護するよー」

「援護ではなくお前が主で戦うんだ! 手を抜くことは許さないぞ」

「うっ、わかってるよ」


 ゴルドフの鋭い目つきと言葉にロレンスがビビっている。

 どうやらあの二人の間には明確な力関係があるようだ。


「まぁ仕方ないよね! 早く終わらせて旅の続きをしよう!」


 そう言ってロレンスは空高くへ飛び上がる。

 彼の異能は大気を操る。

 全ての風は彼のもの、全ての空は――彼の支配下。


「久しぶりに全力で行くよ!」


 彼は両手を天に掲げ、振り下ろす。

 その動きに合わせるように、激しい下降気流が魔獣を襲う。

 ダウンバースト。

 積乱雲から爆発的に吹き降ろす気流は、地面を大きくえぐり地形すら変えてしまう。

 

「あっはっははー! やっぱり硬いな~ さすが災害」

「馬鹿者が! 少しは周りへの被害も考えろ!」

「えぇ~ そんなこと言われても無理だよ。第一、今僕の周りにいる人たちなら気にしなくていいでしょ! ね?」

「――はしゃぎ過ぎよ」


 私とディルは攻撃が当たる直前に影に潜ってやり過ごした。

 あんな攻撃もできたのは驚きだった。

 私から逃げ回っていた時も、その気になれば撃退することだってできたのね。

 王都内だから使わなかっただけなのでしょう。


「肝が冷えるわね」


 私は影を広げる。

 怪物相手に手加減は必要ない。

 影の形を鋭利な刃物に変化させ、魔獣の足元を斬り裂く。


「下から削り取ってあげるわ」

「うわ~ えぐいことするねぇ」

「よそ見しないほうがいいわよ」

「ん? え? うおっと!」


 魔獣もやられっぱなしじゃない。

 身体のあちこちから触手のようなものを出し、空にいるロレンスを攻撃する。

 ゴルドフの異能で動きで移動は封じられても、反撃までは減らせない。

 各々で対処する必要がある。

 ロレンスは空を飛びながら攻撃できるけど、私は防御に影を回していたら攻撃の手が緩む。

 それでは勝てない。

 だから私は攻撃に専念する。

 

「任せたわよ」


 防御は彼に任せる。

 迫る触手を一瞬にして叩き落したのはディルだった。

 使っているのは普通の剣、彼自身の異能は使用していない。

 それでも人間離れした動きは異常だけど、今なら別の言い訳ができる。


「なんて動きだ。セレネ・ヴィクセント、彼は一体」

「私の護衛よ。私の異能で肉体を一時的に強化しているわ」


 ディルの身体には私の影が巻き付いている。

 

「強化? そんなこともできたのか」

「ええ。ただ負担が大きいから彼以外にはできないわよ」

「なるほど。いや、十分な戦力だ」


 ゴルドフも納得してくれたみたいね。

 実際は強化なんてしていない。

 ただ彼の身体に影を巻き付かせているだけ。

 それでも予想通り上手くいったわ。


「ほら、上手い手だったでしょう?」

「確かにそうだな。ただこれ動きづらいぞ」

「文句を言える立場かしら?」

「わかってるよ。俺がお前を守る。だから早く終わらせてくれ」

「そのつもりよ」


 地上と空中。

 二方向からの攻撃と、重力による足止め。

 作戦は悪くない。

 順調に削っている感覚はある。

 ただ……。


「ねぇちょっと、全然倒れる気配ないんだけどー」

「予想以上にタフだ」

「大きさだけじゃないみたいね」

「おい、このままだとこっちが先に」


 ディルの言いたいことはわかる。

 おそらく戦っている全員が直感していた。

 今は順調でも、いずれ必ず体力の限界がきて私たちが押される。

 全員の総力を合わせてやっと食い止めている状況。

 一人でも落ちれば一気に戦況は悪くなる。

 何か手を打たないといけない。


「仕方ないわね! ボーテン卿! 作戦を変えるわよ」

「どうするつもりだ?」

「五分時間を稼いで。私の影で、あの巨体を呑み込むわ」

「できるのか!? この大きさだぞ?」

「時間さえあれば可能よ。でも、影を一気に広げるには準備がいるわ。その間、私は戦闘に参加できない」


 つまりは五分間、私を除く面々で魔獣を食い止める必要がある。

 

「わかった。時間を稼ごう。ロレンス!」

「はいはいわかってるよ! 人使いが荒い人たちばっかりだなー」


 ゴルドフは重力を維持したままでは他の異能が使えない。

 必然的に攻撃はロレンス一人が担うことになる。


「私は離れるわ。貴方はボーテン卿を援護して」

「了解だ。やばかったら呼べよ」

「ええ。でも心配いらないわ」


 ここは三人に任せる。

 私は一旦影に潜り、魔獣の攻撃が届かない地点まで離れる。

 

 集中するのよ。

 この一帯を、私の影で掌握する。


「ボーテン卿! 貴方は重力操作に集中してくれ!」

「ああ、そのつもりだ」

「僕はとにかく攻撃すればいいんだよね」


 魔獣は三人が食い止めてくれている。

 今は彼らを信じて、自分のやるべきことに集中しよう。


「……ふっ」


 笑ってしまうわね。

 信じるなんて。

 他人を信じることはやめたはずなのに……。

 まったく、誰かさんと行動するようになってからだわ。


「信じてるわよ」


 ディル。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作投稿しました! URLをクリックすると見られます!

『没落した元名門貴族の令嬢は、馬鹿にしれきた人たちを見返すため王子の騎士を目指します!』

https://ncode.syosetu.com/n8177jc/

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

第一巻1/10発売!!
https://d2l33iqw5tfm1m.cloudfront.net/book_image/97845752462850000000/ISBN978-4-575-24628-5-main02.jpg?w=1000

【㊗】大物YouTuber二名とコラボした新作ラブコメ12/1発売!

詳細は画像をクリック!
https://d2l33iqw5tfm1m.cloudfront.net/book_image/97845752462850000000/ISBN978-4-575-24628-5-main02.jpg?w=1000
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ