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【WEB版】ループから抜け出せない悪役令嬢は、諦めて好き勝手生きることに決めました【コミカライズ連載中】  作者: 日之影ソラ
序章

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17.死を恐れず

「さぁ、殺す気できてくれ」

「言われなくてもそうするわ」


 さっきの攻撃には殺す気があった。

 逃げてばかりだった初動とは違って、明確な敵意もある。

 この男は強い。

 私も、本気を出さないと殺される。


「影よ――舞いなさい」


 自身を中心にした全方位攻撃。

 足元の影を高波のように変化させ、四方に拡散させる。

 拡散の速度は一定。

 影に隙間はなく、何かに衝突するまで拡散し続ける。


 これで左右への回避は不可能になった。

 逃げるとすれば――


「上よね」


 男は常人を遥かに超える跳躍を発揮し、月に向って跳び上がる。

 恐るべき脚力だけど、今さら驚きはしない。

 上に逃げれば隠れる場所はない。

 加えて足場もないから、跳び上がった後は方向を変えることすらできない。

 つまり、今までのように高速で動いて回避はできないということ。


「縫い付けてあげるわ」


 私は影の鞭を生成。

 先端を針のように尖らせ、空中の男を貫くように放つ。

 完全に捉えた。

 攻撃は当たると確信する。


「甘いな」


 男が取った行動は回避ではなく迎撃だった。

 自身の手首から出血。

 流れた血を操り、両手に血を固めた剣を生成する。

 その剣を振り一瞬にして私の影を叩き落してしまう。


「この程度じゃ俺は殺せない」

「みたいね」


 男は空中で体勢を変化させ、血の剣をさらに変形させる。

 左手に弓、右手に矢を作り――


 放つ。


 一射ではなく四連射。

 高速の矢が私に向って放たれるけど、それを難なく影で防御する。

 速くても飛ぶ方向がわかっていれば防御は容易い。

 

「それじゃ私には届かないわね」

「負けず嫌いだな。ま、そうでなくちゃ困る」


 着地と同時に影を足元に這わせ捕らえるつもりでいた。

 しかし読まれ、着地の一瞬で高速移動を始める。

 目で追えない速度での移動。

 驚くべきことに、さっきまでよりも数段速くなっている。

 

「手加減はお互い様だったみたいね……」


 超人的な身体能力に、血液を操る力。

 加えて全身を串刺しにしても瞬時に治癒する回復力……。

 人の形をした怪物とはよく言ったものね。

 捕まえたくても速すぎて触れられない。

 今もどこからか飛んでくる攻撃に備えて防御に専念するのでやっとの状況。

 でも、一番厄介な能力はやっぱり――


「その再生能力は無限なの?」

「どうだろうな。試せばいいじゃないか」

「それもそうね」


 制限がないならこの男は殺せない。

 その時点で詰み……じゃない。

 一つだけ方法がある。

 ただ、それをするためにはリスクを冒す必要があった。


「手詰まりかな? だったらもう終わらせよう」


 男の気配が急接近するのを感じる。

 私は咄嗟に影の波を生成して拡散させる。

 これでまた上に逃げれば追撃はできない。


「二度も同じ手はくわない。影の強度はさっき把握した」


 男は血を変化させて大鎌を作り出し、大振りの一撃で影の波を切断する。


「威力もお粗末だ」

「くっ……」


 やはりリスクを冒すしかなさそうね。

 彼を捕えるためには私自身を囮にして、防御を捨てて挑むしかない。

 失敗すれば死ぬ。


 ううん、そうじゃないわね。

 リスクなんかじゃないわ。

 私にとって……死はもっとも身近にある。


 今さらだった。

 死に覚悟なんていらない。

 私は知っている。

 死の痛みも、苦しみも、その先があることを――


 だから私は躊躇なく、自分の命を差し出せる。


「っ――!?」


 影を解除して男の接近を受け入れた瞬間、それは起こった。

 男の動きがあきらかに鈍くなった。

 動揺したのだろう。

 その一瞬の隙を私は見逃さない。

 斬り裂かれた影の波の一部を変化させ、針の筵のように左右から串刺し動きをとめる。


「ぐっ……」

「これで終わりよ」

「ははっ、俺がこれで死なないことは見せたはずだが?」

「ええ、知っているわ。だから――」


 男の足元に影を広げる。

 攻撃するためではなく、影の中に引きずり込むために。


「永遠に閉じ込めてあげる」

「が、おっ!」


 抵抗する間も与えない。

 私は影で彼の全身を覆い、そのまま黒い影の中へ引きずり込む。

 影の中に空気はない。

 底もなく、ただ沈む感覚だけがある。

 仮に不死身の異能だったとしても、あの中では死に続けるだろう。


「しばらく影の移動には注意しないと――」


 戦いの終わりを確信した。

 そんな私の足を、何者かが鷲掴む。


「なっ――」


 なんですって!?

 私は影を開いていないのに、どうして彼の手が影から出てくるの?

 その手は私の足首をしっかりつかんで離さない。

 

 引きずり込まれる!


 閉じ込めることすら出来ないと悟った私は、慌てて影の中身を放出する。

 噴水から水が噴き出すように、影の中から血を纏った男が現れる。


「ぷはっ!」


 飛び出した男は地面に転がる。

 げほげほと噎せながら、影の中にはなかった空気を堪能するように大きく息を吸う。


「まさか……影から自力で抜け出したっていうの?」


 ありえないわ。

 私の許可なく影の中から出てくるなんて……。

 だけど、今のも通じないとなったらいよいよ打つ手がない。

 逃げようにも速度で劣っている。

 

 男はゆっくり立ち上がる。


 どうやら、今回のループはここまでみたいね。

 仕方ないわ。

 次のループに期待しましょう。

 ただその前に……。


「顔くらいは見せてもらうわよ」


 立ち上がった男に影を飛ばす。

 狙いは頭。

 もちろん殺すつもりで攻撃した。

 男は軽く首を傾け回避し、影はフードだけを捉えた。

 そうして初めて、彼の顔を見る。


「あーあ、やっぱりお前でも俺は殺せなかったか」


 そう言って彼は悲しそうな笑みを浮かべる。

 私はその笑顔を知っている……気がした。

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