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【WEB版】ループから抜け出せない悪役令嬢は、諦めて好き勝手生きることに決めました【コミカライズ連載中】  作者: 日之影ソラ
序章

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14.またの機会に

 ミストリア・フルシュ。

 森の守護者フルシュ家の女当主。

 見た目からしておそらく年齢も私と近い。

 確か女当主は私以外にいなかったはずだけど……。

 いつの間にか代替わりしていたようね。


「フルシュ様は今日もお美しいです」

「ふふっ、ありがとう」

「よければこの後、ダンスの相手をさせて頂けませんか?」

「ええ、もちろん」


 集まっている九割が男性。

 しかも若い男が多い。

 

「すごく人気みたいね」

「ええ。フルシュ様は包容力のあるお方ですので。加えてあの美貌、特に男性からの支持は厚く……とっ、もちろんヴィクセント様の御美しさにも気づいております故」

「そう。ありがとう」


 面倒くさいわね。

 そんなこと一々気にしなくていいから説明を続けてくれないかしら?

 けど、確かにとても綺麗な人だわ。

 女の私から見てもそう思う。

 何より、見ていると落ち着くというか……こんなに騒がしい場所で森の木陰で休んでいるような安らぎを感じる。

 そういう雰囲気を持っている人なのか。

 それとも……。


「――ん?」


 今、彼女と目が合った。

 こちらの視線に気づいたようだ。


「ちょっとごめんなさい。少し離れますね」


 周りの男たちにそう言って、集まりの中を抜けてくる。

 私のほうに向けて。

 察した私の周りの人たちも、自然と道を空ける。

 彼女は一直線に私の前まで歩み寄ってきた。


「こんばんは。初めまして、ですよね?」

「……ええ」


 まさか彼女のほうから話しかけてくるなんて。

 近くで見ると尚わかる。

 男たちが必死に群がっていた理由が。

 声も透き通るようで優しく、私より華奢な身体は守ってあげたくなるような気分にさせられる。


「もしかして、貴女が新しいヴィクセントの当主様?」

「ええ。セレネ・ヴィクセントよ」

「私はミストリア・フルシュよ。同じ女性当主として仲良くしてもらえると嬉しいわ」


 そう言って彼女は右手を前に出す。

 握手を求めているようだ。

 

「こちらこそ」


 別に断る理由もないから、彼女の手を握った。

 強く握り返されるとか、つねられるとか。

 そういう嫌がらせも少し覚悟したけど、一切何もなく優しい握手を済ませる。


「ところで、私を見ていたようでしたけど、何かありましたか?」

「いいえ、特に用事はないわ。ただ当主になったばかりだから、周りの方々に他の当主の話を伺っていたの」

「そうだったのですか。私のことであれば遠慮せず聞いてください。プライベートなこと以外は答えられます」

「……プライベートは秘密が多いのですか?」


 探りを入れる意味で尋ねる。

 彼女はニコリと微笑み、周りに視線を向ける。


「こういう場でなければお答えできるかもしれません」

「……そう。ならぜひ、そういう場を作りたいわね」

「ええ。私もそう思っています。女同士、お話が弾みそうですね」


 彼女の笑みは無邪気で、深い意味はないように見えた。

 どことなく少年陛下にも似ている。

 話すだけで気が抜けて、警戒心が薄れていくような……。


「では私はこれで。皆さんに待っていただいているので」

「そうね。また別の機会で話しましょう」

「はい。ぜひ」


 彼女は男たちの集まりの中へ戻っていった。

 お淑やかで明るい女性。

 そういう印象とは裏腹に、プライベートの秘密というものが何のなのかは気になる。

 女性らしい秘密な気もするけど、もしかしたら私のループの鍵になるような秘密かもしれない。

 ああいう女性ほど、他人には言えない秘密を隠していたりするから。


「さてと……」


 これで二人の当主を見た。

 あと一人も、周りの誰かに教えてもらおうかしら。

 そう思って尋ねようとする。

 だけど、なぜか誰も私の近くに戻ろうとしない。

 離れていくわけでもない。

 近づくタイミングを見失ったような……近づけない理由があるような……。


「どうし――」


 背後に感じたのは冷たい水の感覚。

 冷ややかな刺激が走り、咄嗟に振り返る。


「おっと、声をかける前に気付かれてしまったようだね」

「貴方は……」


 いつから私の後ろに?

 違う。

 警戒すべきはそこじゃなくて、この独特な気配と雰囲気……。


「失礼、驚かせるつもりはなかったんだ。ただ挨拶がしたくてね」

「挨拶?」

「ああ。同じ当主として」


 やっぱりこの人がそうなのね。

 初めてだわ。

 顔も知らないのに、雰囲気だけで誰かわかるなんて。


「俺はアレクセイ・ワーテル。よろしくね? セレネ・ヴィクセントさん」


 水の守護者ワーテル家の当主。

 水色の髪に濃いブルーの瞳。

 ボーテン家の当主とは対極の細い身体に白い肌は、貴族らしい格好がよく似合う。

 彼はミストリアと同様に握手を求めて来た。

 私はその手を握る。


「ええ」


 悪意は感じなかった。

 ただ、手を握って放そうとしたら握り返してきた。


「うん、いいね」

「なんです?」

「中々に美しい。フルシュ家の姫と並んでいた時から感じていたが……いや、俺は君のほうが美しいと思うね」

「……何を言って」

「決めた!」


 彼は握った手を強引に引っ張り、私を自分の胸の中に抱き寄せる。

 お互いの顔が近くなる。

 彼は見下ろし、私は見上げる。


「セレネ・ヴィクセント。俺のフィアンセにならないか?」

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