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【WEB版】ループから抜け出せない悪役令嬢は、諦めて好き勝手生きることに決めました【コミカライズ連載中】  作者: 日之影ソラ
序章

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13.守護者たち

「それでは皆様、どうぞお楽しみください」


 会場内から拍手が沸き上がる。

 いつの間にか段上での挨拶は終わっていたらしい。

 

「時間は経過するのね」


 壇上から二人が降りる。

 その途中で、小さな国王と目が合った。

 彼は私に向って嬉しそうに微笑む。

 さっきまでの光景は夢じゃない。

 感覚も、声もハッキリと頭の中に残っている。


「見た目は子供の癖に……ね」


 忘れてほしいと言われたけど、やっぱり忘れられそうにない。

 私じゃなくたってそうだろう。

 もし機会があれば、彼の真意を知りたいものだ。

 会場の明かりが通常通りに戻る。

 また眩しさで目が疲れそうな華やかさを感じる。

 どうせなら暗いままのほうが良かったのに、なんてことを感じていたところに……。


「ヴィクセント様」


 女性に声をかけられた。

 綺麗に着飾った女性で、ニコリと私に向って笑みを見せている。

 私を呼んだのは間違いない。

 だけど、こんな人は知らない。


「ええ」

「当主への就任おめでとうございます! 私の家は古くからヴィクセント家と懇意にして頂いておりまして、今後ともよろしくお願いします」

「……そうね」


 そういうこと。

 彼女の他にも次から次へと見知らぬ男女が私の周りに集まってきた。

 一人として顔も名前も知らない。

 彼らの目的は、私に顔と名前を覚えてもらうことだろう。

 六家の一つヴィクセント家の新当主である私と懇意にすることで、自分たちの地位を守ろうとしているんだ。

 このパーティーは、家同士の親交を深めるために催されている。

 六家以外の参加している貴族たちは、私たちと仲良くしたいから参加しているわけで……。

 

 魂胆が見え見えね。

 けど、おかげで見つけやすいわ。


 私以外にも集団の中心になっている者たちがいる。

 この場で注目され人を集めているのは、間違いなく六家の人間のはずだ。

 人の集まっている箇所は、私を除いて四つ。

 一つはエトワールね。


「ウエルデン卿がいてくだされば、この国の安泰ですね」

「ええ、なんといっても星読み、未来を見るお力をお持ちですから」

「ありがとうございます」


 あっちのほうがあからさまかしら?

 彼の星読み……その力の恩恵に与りたいという欲が漏れ出ている。

 誰も彼自身を求めているわけじゃない。

 ほしいのは、彼の目の加護でしかないという……。


 不憫ね。


 今に始まったことじゃないけれど。

 彼のことは十分に知っているし、今さら知りたいと思わない。

 注目すべきは他の三つ。

 彼のすぐ近くにもう一つ、人だかりができていた。

 中心にいるのは短髪の男性。

 

「緊張なされているのですか? ボーテン様」

「申し訳ない。このような場は苦手なのだ。俺が普段相手にしているのは、人間ではないのでな」


 日に焼けた褐色の肌に、筋肉質な身体。

 集団の中で肩から抜けるほどの高身長と、どこか場慣れしていない雰囲気。

 彼が六家の一つ。

 大地の守護者ゴルドフ・ボーテンね。


「先日も魔獣の群れを撃退されたとか。ボーテン様が魔獣を退治してくださっているおかげで、我々も安心して眠られるというのもの」

「褒められるようなことではない。騎士として当然のことをしているまでだ」

「ご謙遜なされないでください。ボーテン様こそ、この国の真の守り人なのですから」

「……その期待に応えられるよう尽力しよう」

 

 彼の家系は確か、貴族であると同時に騎士でもあった。

 現当主であるゴルドフ・ボーテンも騎士であり、現在の王国騎士団の団長を務めている。

 異能を抜きにしても相当な強さと聞いているけど……確かに雰囲気はある。


 日々王国のために魔獣と戦っているという話も嘘じゃなさそうね。


 ただ立っているだけなのに隙がない。

 まるで大きな岩を目の前にしているような……。

 

「ヴィクセント様? どなたかをお探しですか?」


 近くから男性に声をかけられて気付く。

 自分も話しかけられていたことを忘れてしまっていた。

 鬱陶しいから離れてほしいけど、変に突っぱねると後で面倒だからやめておきましょう。

 せっかくだし、むしろ利用するほうがいいか。


「そういうわけではありません。ただ、私は当主になったばかりですので、他の家の方々のことが気になっているのです」

「ああ、そうでしたか。同じ六家の人間といえど、普段は交流も少ないとお聞きしますが」

「ええ。お会いするのも初めての方ばかりですわ。本当なら挨拶に伺いたいところなのですが……」

「今は難しいでしょう。よろしければ、私の知っていることをお話いたしましょうか?」

「我々も他家の方と少なからず交流がございます! もちろんヴィクセント様との関係をもっとも大事にしております」

「ありがとう。そう言って頂けて嬉しいわ」


 思った通り簡単に誘導出来たわね。

 頼んでもいないのに、自分が話すと名乗り出てくる。

 そんなにも私と仲良くしたいのね。

 小鳥が親鳥から餌を貰おうと必死に口を開けているみたいで……滑稽ね。


「ヴィクセント様、右手側をご覧ください」


 示された先にも人の集まっている箇所があった。

 ボーテンとは違って誰が中心にいるのかは見えない。

 ほんの少し、人と人との隙間から一瞬だけ見えたのは薄緑色の髪をした女性だった。


「あそこにおられるお方が、ミストリア・フルシュ様でございます」


 フルシュ……森の守護者。

 私と同じ女性の当主だったのね。

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