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【WEB版】ループから抜け出せない悪役令嬢は、諦めて好き勝手生きることに決めました【コミカライズ連載中】  作者: 日之影ソラ
序章

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11.王家の子

 冷たい言葉を吐き捨て、私は彼の元を離れる。

 彼は何も言わない。

 違う。

 何も言えない。

 私と彼の間にはもう、なんのつながりもないのだから。

 

「……もう、眩しいだけにしてほしいわ」


 ここは思った以上に居心地が悪い。

 彼だけじゃない。

 多くの人たちが、私のことを見ている。

 理由は考えなくてもハッキリしていた。


「あれがヴィクセント家の新しい当主……」

「確か長女の……意外ですね」

「ええ、前当主様も妹のソレイユ様を後継にすると公言なされていたのに。気が変わったのかしら?」

「噂ではもめごとがあったそうよ。彼女が前当主を力で服従させたとか」

「あら怖いわ。影の守護者……この国に災いを呼ばないことを祈るしかないわね」


 まったく、言いたい放題言ってくれる。

 予想はしていたし、自分のことを悪く言われるのには慣れている。

 散々お父様から罵倒されてきたおかげ、というべきでしょう。

 もちろん感謝なんてしない。


 早く目的のものだけ見て帰りたいわ。


「そういえば……」


 ふと周りを見渡す。

 探しているのは私以外の守護者たち。

 エトワール以外に四人いる。

 

 実はちゃんと会ったことないのよね。

 お父様を訪ねて屋敷へ来た時にチラッと顔だけ見た人はいる。

 一人に関しては顔も一切知らないし……。


 知っている顔だけでも探してみた。

 会場は意外と広くて、参加者も数えられないほどいる。

 パッと見た限りでは見つけられなかった。

 もしかしたら参加していないのかもしれない。

 パーティーへの参加は強制ではないから、欠席している可能性も十分にある。


「だとしたら無駄足ね……」


 ううん、そういうわけでもないわ。

 そろそろ始まる。

 会場の照明が一時的に暗くなり、正面の段上だけが明るく照らされる。

 パーティー開催の挨拶が始まる。

 この国を治める王族が、壇上に上がった。


 黄金に輝く髪に、エメラルドグリーンの瞳。

 肌は女性のように白く美しい。

 まるで人形に服を着せて、王様らしく見せているような。

 そして……若い。

 いや、若すぎる。

 現国王は、まだ十二歳の子供だ。


「会場にお集まりの皆様、本日はお忙しい中パーティーへ参加して下さりありがとうございます」


 話し始めたのは国王の隣に立つ女性。

 彼女も王族で、国王の姉に当たる。

 年齢だけでいえば、彼女のほうが国王に相応しいだろう。

 だけど、彼女には国王になる資格がない。

 国王になれるのは男性だけだ。

 その理由は、男性にだけ受け継がれる王族の異能が関係している。

 私たち六家と違う……極めて異質な異能。

 王族が受け継いでいる異能は、私たちの異能を無効化する力。

 異能を持つ私たちの先祖が彼の先祖を王としたのは、彼に王としての器があったからだけではなく、彼にだけは異能が通じなかったから。

 本来、絶対的な力を持つ者が上に立つ。

 その力を六家は持っていながら、誰も王にはならなかったのはそういう理由もあったのだろう。

 あくまで私の予想でしかないけど……。


「あれが現国王……」


 こうして直接見るのは初めてだ。

 彼が国王になったのは数か月前、前国王が亡くなられた日のはず。

 私は前のループではほとんど外に出られなくて、見る機会に恵まれなかった。

 噂程度に知ってはいたけど、改めて見ると本当に若い。

 あれで国王なのだから、この国の異能主義はほとほと極端だ。


 このパーティに参加した理由は、他の守護者たちを見るためだった。

 ただもう一つ、国王の顔も見ておきたかった。

 私がループしている原因はわかっていない。

 もっとも考えられる原因は、やっぱり異能の力だろう。

 むしろそれ以外には考えられない。

 中でも国王が持つ異能については謎が多く、王家にだけ伝わっている秘密もある。

 他の守護者より、国王が関係している可能性のほうがありそうだけど……。


「さすがに若すぎるわね」


 と、口から出てしまうくらいありえなさそうだ。

 十二歳の子供が、どうして私をループさせる?

 どう考えても理由が見当たらない。

 やっぱり他の守護者たちのほうが怪しそうだと、彼から興味が離れかけた時だった。


「え?」


 目が合った。

 気がした。

 壇上に立っているだけの少年国王と。

 壇上から私までの距離はそれなりに離れていて、彼から見たら大勢の中の一人に過ぎない。

 全体を見ているだけだとも思った。

 だけど、今もなお視線が合っている。


 そして、彼はニコリと微笑んだ。


 彼の瞳に吸い込まれそうになる。

 いいや、吸い込まれていく。

 感覚が、意識が、彼に向って吸い寄せられて――

 気づけば私は、真っ白で何もない空間に立っていた。


「ここは……」


 さっきまでパーティー会場にいた。

 急に眠ってしまったわけでもない。

 感覚はハッキリしているし、直前のことも覚えている。

 私は彼と視線を合わせた。

 そう――


「初めまして、セレネ・ヴィクセントさん」

「貴方は……」


 この国の幼き王。

 ユークリス・ヴェルト陛下が、私の前で微笑んでいた。

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