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殿下、幼馴染の令嬢を大事にしたい貴方の恋愛ごっこにはもう愛想が尽きました。  作者: 秋津冴
第二章 聖女の危機

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第17話 旅は道連れ(共存共栄です) 1


「それより、獣人たちの話ではなかったか?」

「ああ、そうでした。ですけど!」

「迷える信徒の話よりも自分のことを優先するようなのが、お前の言う聖女の行いか?」

「それは……卑怯ですわ、お父様」


 席を立って詰め寄ろうとしたらさっさと先手を打たれた。


「杖でなぐりかかろうともくろんでいるのが見え透いている。そんなことだから、王太子にもさっさと見限られる。あいつ、と言えば聞こえが悪いが結局は、お前とあいつとの信頼関係が築けていなかったこともこうなった要因の一つだ。反省しろ」

「ど、どの口が……ッ。政権争いに負けて追放された大神官が落ちぶれた末に、娘に頼らないといけない癖に!」


 ああ、もうむかつく。

 父親と同じように攻撃魔法が使えればやり返してやれるのに。

 今その力を持たない自分自身が、名ばかりの聖女であることがどうにも恨めしい。


「もちろん、それも現実だ。しかし、頼ってくる者たちがいることもまた新たな現実だ。それで、どうする? 救うのか、見捨てるのか。見捨てるなら早いほうがいい。今ならまだ、彼らも元の土地に戻れる。奴隷にように過酷に扱われるさもしい偽りの故郷にな」

「見捨てないとしたら。どうなりますか。それよりも、彼らはどこから沸いて出たのですか。いまの話し方だと、やはり解放奴隷の者たちに声をかけていたかのような印象を受けます」


 事前に用意して人を集めたかのようなジョゼフの発言は、カトリーナの心に黒い疑念を産みだしていた。

 そして大神官はその疑念をあっさりと払拭してしまう。


「これからこの街道を、聖女様が隣の国まで向かわれる。その理由は王太子との婚約を解消し、新たな迷える民を救いに行くのだ。向かう先は……」

「と、先に触れを出して回ったと? パルテスに戻りたいという人心を巧妙に利用して、彼の国でも影響力を保ちたいのが、お父様の本心ですか……」


 そう問いただすと、「いやべつに」としれっと言って退ける。

 ついでに何やら深読みさせるようなことまで言いだして、カトリーナは口では父親をやり込めることができないとため息をついた。


「お前だってあの王宮からは逃げ出したかっただろう? 婚約破棄をされて、愛まで裏切られてその上、出て行けと言われたら誰でもさっさと見限ってやりたくなるもんだ」

「……」

「あの獣人たちだって、そんな扱いを受けてこれまでやってきた。結果として逃げられる場所が向こうからやってくれば、跡に着いていきたくはならないか。それが聖女なんてこの世の存在ではない神の選んだ代理人が率いているとなればなおさらだと、私は思うわけだ」

「虐げられた民の故郷に戻りたい願いをかなえてやる。では対価は何を望むのですか、お父様は……無事にあちらに行き着ける保証だってなにもないのに」


 カトリーナは指折り数えてみた。

 この行列を守っている神殿騎士たちの人数と守るべき信徒の数。

 どう比較してみても、もし王国から軍隊なんて派遣された時にはうまくかわしながら逃げることしか出来ないだろうから、と計算は打算的に新たな戦力を必要とする。


 そんな時、目の前にいる父親ともしかしたら自分の魔法でどうにかしなければならない?

 それはどうにもかなわない気がしていた。



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