~隊は守る~
時間を少し遡り遡り、左之助と沖田が乗り込んだすぐ後のこと。
「どうしたんですか? 土方君、本当に何も無いんですか?」
「…」
言葉に詰まる土方。
「芹沢を殺すことで君に何か問題でもあるんですか?」
「いや、問題はないよ、大丈夫」
「何があったんですか? しゃべり方も君らしくない。言葉に覇気がない。そんなに弱々しい君は見ていられない」
分かってるよ。そんな事、私が一番分かってるの!! 知った風に言わないでよ! 怖いよ。死ぬかもしれない、こんな場所で死にたくない。安奈に会いたい。
「…ごめん。今は…まだ言えない。でも、ちゃんと話すから」
「そうですか。ですが、たとえ芹沢を殺しても隊の士気は下がります。土方君、君を信じて良いんだね」
その目は、私をまっすぐ見ていた。
大丈夫、必ず話すから、だから今はまだ待ってて。
土方は大きく息を吐いた。
「大丈夫。隊は守る」
その顔はまさに、土方の覚悟を決めた顔だ。
山南はその顔を見て、安堵した。
いつもとどこか違う土方に違和感を感じていたが、勘違いだったのだろう。
「分かりました。土方君、左之助君と沖田君が戦っています。乗り込みますよ」
「行こう」