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1話 恋人に婚約者が出来ていた1

「これは俺の大切な人との繋がりなんだ」


 そう私に優しく教えてくれた彼は、自分の左手の薬指に唇を落とした。


 サラサラの金髪にエメラルドのような輝きの瞳。


 これだけ聞くとなんてロマンチックなワンシーンだと思うでしょう?

 だけど私の心情はキュンキュンともしない。むしろ、市場に並べられている魚といい勝負が出来るであろうほどの、目の死にようだと思う。


 突然だが、私と彼は恋人関係である。


 妄想とか、危ない思考とかそういうのじゃない。

 私は軍事国家サンテールの国家防衛機関の情報部隊の一人。

 晴れて入隊出来たとき、彼は私の従兄弟から紹介された人だった。ずっと難しい表情をしていて、ニコリとも笑わない彼。


 最初の印象。

 めっちゃ真面目そう。絶対に私と話が合わない。


 とりあえず最初は同じ職に就くから知り合いになれるのは嬉しいことだ、と思っていた。だがなぜか久しぶりに再会した時には上司と部下の関係だった。

 驚くべき昇進の早さ。何をどうすればそうなれる。


 そう、彼とは上司と部下。そういう関係から始まった。

 いつの間にか、お互い上司に要らぬお世話をされない為に付き合い始めたんだが、まあ普通にいい関係だったと思う。

 時折ご飯食べたり、敵に見つかった時の逃亡訓練とか、ご飯を食べたり。あれ? 付き合ってる??


 まあ、プラトニックなお付き合いだった。



 それは早六年前の事だけれど。


 いやいや、飛ばし過ぎじゃね?

 どこかで修行してきたの? そんな突然の飛ばし方ある?


 そう、私は今、十歳くらいの幼女なんです。


 修行して幼女になったの!!

 いえーい! 褒めてー!

 ピース! ピーース!


 そしてこの幼女の私、彼氏の名前と所属。


 国家防衛機関長のまたは軍事国家サンテール中将。

 レオ・ブラッドリーという男である。


 一つ待ってほしい。

 ブラッドリーという男がまさかロリコン……? とか、いつからサンテールは子供に軍の真似事をやらせる? どこの世紀末? とかではない。

 私はれっきとした二十歳越えの女性であったんだ。

 さっきのテンションは、ちょっと幼女で居ることが辛過ぎて現実逃避した。


 話すと長くなるから端的に言うと、情報集めて、ターゲット追ってたら真っ黒コーデした人間にどーん! いけない遅刻遅刻ー!


 ――なんて可愛らしいものじゃなくて、唐突に液体飲まされて、はい幼女。


 なるほど分からん。

 いや、私も分からない。

 こんな事ってある? 御伽話である、魚に足生えて王子様と結婚出来るくらいに摩訶不思議だよ。

 気付いたら、私は大人の時に着ていた真っ黒の服が布団になるくらい小さいし、周りには誰も居なかった。私に意味不明な液体を飲ませた奴は何だったのか。

 みんなが憧れる、お姫様に変身出来る魔法だったのか。そうか、私は十二時になれば姿が戻るか。


 そんな現実逃避は何度もした。

 でも世の中そんな簡単じゃない。幼女に巻き戻るのは案外簡単だったけど。


 何とか戻らないと、と思った。だから一人で色々調べたりしていた。

 どうやら敵国のザントピアが作り出した薬らしい。まだ試作段階だとか。どんな確率で私とぶつかってぶちまける? どう考えたって待ってただろ。

 だから仕方なく私はザントピアに潜入して色々と情報を集めていたら、あら不思議。



 敵国ザントピアのギド中将に飼われていた。



 おいおいおい。ちょっと雑過ぎやしないか、と思うだろうけど本当に分からんちん。

 確かにギリギリなところを調べていた。ある日捕まってしまって、あーこれは死ぬなーうわー、と思っていたら「お前が例の子供か。面白ぇ」だよ? そんな理由ある? って導入だよ。

 でもギドのお気に入りになるならば、薬の事も分かるかもしれない。

 そう思って、ギドに飼われたのは幼女になって一年くらいした時。たぶんあの時は五歳くらい。


 その後かな、ブラッドリーさん達が敵国に潜入したのは。

 まさかブラッドリーさんが直々に潜入するなんて……! 作戦はもう間近だというのか! ゴクリ!

 なんて焦った時期もあった。


 ブラッドリーさんが潜入した機関、五年。


 いや、なっっっが。

 それまで防衛機関、どうなってたの? 情報部隊の隊長だったじゃん。ずっとお留守?? 部下に任せてたの?? 副隊長、可哀想……。


 色々と聞きたいところ、突っ込みたいところが多かったが、壊滅した後にブラッドリーさんは驚くべき昇進の早さで今や中将。ブラッドリーさんの年齢で大佐になっている人は少なかったけど、中将では最年少だとか。

 ブラッドリー無双すごい。


 敵国は壊滅して、サンテールと隣国のルトブルクが領地を分け合って、はいはいめでたし。


 その間も私はすくすくと成長している。十歳くらいを迎えていた。

 そこからどういう話し合いでこうなったのか皆目検討もつかないが、何故か私は牢屋ライフを送るどころ保護管理という名目で、同居しているのだ。


 恋人であろう、レオ・ブラッドリーと。


 そのレオ・ブラッドリーは、装飾品なんて存在を知らなさそうで勲章なんて宝探しレベルに無頓着で、軍服くらいのしか着たことないだろ、ってほどの飾り気のない人だ。私のデートでも軍服だった時は流石に私、天を仰いだね。

 マジかよ。こっちはスカート履いてきたのによ。私だけ脳内お花畑かよ、ってね。


 そのブラッドリーさんがどうしてか今日は指輪をしていた。


 ご丁寧にわざわざ家に帰ってきてから。

 その衝撃的なワンシーンは数時間前に遡る。

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